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弱い私を救うのは学問だった

今日、2年間通った短大を卒業した。
上手くまとまらずに感情の羅列になってしまったけれど、気持ちはnoteに残そーう!!!!(卒論モードが抜けずに長々と書いちゃった)

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国際平和について学びたくてこの短大を選んだ。
将来は音楽に携わる仕事がしたいし、4月からは美大に通う。将来のためにはもっと近道があったと思う。

でも、当時どうしても平和学を学びたかった。2年学んだ先に編入も就職も下積みのバイトも選べる短大が理想的に映った。

ただ学びたいことを学びたかった。「進路」や「夢」よりも前に、豊かな人になりたかった。音楽業界を目指すための進路ではなくて、いずれ夢が変わってもやりたいことに1秒で飛び込めちゃうくらいスキルや教養のある人になろうと思った。四年制大学以外を邪道とする高校の先生方がおっしゃっていた「正しい道」の方が正しいのは分かっていたけど、そうじゃない道で試してみようと思った。今思えば進路なんて小さな選択のひとつでしかないけど、当時のわたしにはとても怖い一歩だった。

差別

肌の色なんかで、差別があったり、人が争っているのが悲しかった。

でも、肌の色『なんか』で済ましていいほど簡単な問題じゃなかった。

差別は絶対にあってはいけないものだと思う。でも、人種差別をする人の全てを、前みたいに軽蔑することは出来なくなった。奴隷制度の名残がある作品を何本も見て、私はこの物語の世界に入ったらどんな人間なんだろうと考えた。

差別が、差別と認識すらされずに行われていたその世界で、パーソナリティだけを見つめて勇敢な主人公に手を差し伸べる人間になれただろうか。仮にそれが出来る人間だとして、これまで私が男性だけを好きになったことと、これは全く別の次元の話なのだろうか。何を持って区別しているんだろう。もし、愛を注いでくれている親が「差別心」を持っていたら、私はそれを疑うことが出来たのだろうか。

「差別」と「区別」の違いは思ったより難しいと思った。

「差別だめ!!!!!!」と大きな声で言うことも確かに大事だけれど、肌の色に限らず、知らず知らずのうちに私自身が誰かを差別してしまっているかもしれないと不安になった。人は良い人と悪い人に分けられないのだと知った。認識の違いを良い/悪いで片付けてしまうのは危険だった。

私の中にも、潜在的な差別心が存在することは認めざるをえなくて、振りかざした私の正義が誰かを傷つけていたかもしれない。「差別がなくなるために私に出来ることを!」なんて傲慢な考えで、差別をしないように生きるだけで難しいことだった。

戦争と平和

戦争や平和について学ぶたびに自分の無力を知らしめられるような、やるせない気持ちになったりした。
でも、何も出来なくてもせめて何か出来ないか模索し続ける人でありたいとも思った。一個人に求められていることは解決ではなく、その過程なのかもしれない。

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卒論では、『音楽を通した日韓の平和構築』について書いた。右翼も左翼もわかってないところから研究を始めて、調べれば調べるほどに分からなくなった。「誰にとっての平和?何をとっての平和?そもそも文化と歴史は同じ次元で語って良いのかな?」グルグル考えた。卒論は完成したけど、なんだか落ち込んでしまった。

音楽なんかで世界は平和にならなくて、歴史は歴史として、文化は文化として見て見ぬ振りをしながら進んでいく。

実際に国同士に問題はあるし、認識の違いはあるにしても歴史は消えない。客観的な事実だけじゃなくて思想とも繋がっていたりして、余計1つの立場を正しいと主張するのが怖くなってしまう。私は意気込んで入学した当初よりも平和が分からなくなってしまった。

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ずっと学びたかった「国際平和」は、鉄のような顔をしていて、触れてみたら冷たかった。ラブ&ピースを掲げるロックンローラーは教えてくれない現実があった。正義は、時に人を殺す武器だった。

それでも理想を掲げ、平和を唱え続けた偉人が「偉人」とされる訳がわかった。現実を知らない人が夢を語るのと、彼らが夢を語ることには大きな差があった。

私は、そんな強い人になれるのだろうか。

どうしようもない現実を見ても、やっぱり私は音楽に携わった仕事がしたいと思った。

ヘンリー・デイヴィッド・ソロー

平和学では、戦争についてだけではなくて 『ヘンリー・デイヴィッド・ソロー』という“山奥で暮らす学者”についても触れた。何にも執着せずにシンプルに生きることに努める彼はかっこよかった。

「結婚する/しない」も「恋愛対象の男性/女性」も「人生の勝者/敗者」もそんなの全部どうでもよかった。無意識のうちに生きる型が決められているのが苦しかった。
『マイノリティも認めて生きる世の中』ではなくて、『ただ人々が個々として生きていける世の中』が欲しかった。マイノリティを嘲笑う人や、無意識のうちに上から目線でマイノリティを擁護する人は、自己の不確かさを自覚していなくて可哀想にも思えた。それでもどこかで「普通」に安心している自分が哀れでうんざりした。

だから、彼の揺るぎない生き方に救われた。
自然と流れのままに生きる姿に憧れた。

平和について学んでいく中で、人間や命の脆さを感じたと共に、ずっとそこにあり続ける自然の強さを感じた。季節と一緒に移ろう木々を見たら私も強くなれる気がした。風が私を生かしてくれる気がした。

哲学と芸術

私は、西洋哲学に神様が出てくることすら知らなかった。大学はキリスト教の学校だったけど、無宗教の私は「救済」とか「受肉」といった言葉は、最初は受け入れ難かった。

でも、神を信じる哲学者の考え方を知ることは楽しかった。
プラトンのイデア論を聞いた時の気持ちは今でも覚えている。哲学者になるつもりはないから、私はそれが間違っているかなんて本当はどうでもよくて(丹木先生に怒られる)、星を見たら胸がときめくことも、海を見てキラキラして叫び出したくなっちゃうことも、季節が変わるたびに懐かしい気持ちになることも、ひとつのメロディで涙が出ちゃうことも、全部ぜんぶイデアな気がした。"嬉しい”や"悲しい”と同じようにこの気持ちに言葉がつけられているようで嬉しかった。

哲学の世界では、芸術は大肯定されていた。芸術は、言葉にできない感覚的な何か(イデア)を表現する行為だからこそ、音楽やその他の芸術は心を救ってくれるのだと思った。良い芸術に触れた時の、世界と自分の境界線がなくなる感覚をもっと知りたくなった。これに向き合ってもいいのかもと思えた。

哲学を学んで、「神」への怪しい気持ちはなくなった。特定の宗教を信仰する気持ちとはちょっと違うけど、きっと私のアイデンティティの中にも概念としての神様がいるんだと思う。願う気持ちが神様を作るし、その気持ちこそが私の魂なのだと解釈した。私とは違う私だけの「わたし」という魂がいつも私を見ているようなそんな感じ。

この考えが正解だなんて思わないけど、こう考えたら気持ちが沈んでも、その孤独がいつも側にいてくれる気がした。答えがないものに、自分の中の正解を見つけて信じることは、私を強くした。

最後に

「学ぶことは、選択肢を広げること。」というよく聞く言葉を、

「とりあえず勉強して頭がよくなれば、医者でも、ケーキ屋さんでも、社長でもなんでも好きな仕事を選べるよ^^」という意味だと解釈していた。

でも私がここで広げた選択肢は職業としてではなく、生きる選択肢だった。

『どんな景色を見るか』という選択肢ではなく、『同じ景色をどんな目で見るか』という選択肢を与えてくれた。前よりも世界が鮮やかに、鮮明に見えるようになった。自分がちっぽけに感じても、「ライプニッツのモナド論」を思い出して、ペットボトルの小さい水滴さえも愛おしく思えた。

学ぶことは、強制的に色んな価値観を知らしめてきた。それは時に苦しくもあるけど、そのおかげで人に優しくなれた。人に優しくなると、私のことも許してあげれるようになった。多分思ってるよりもっと色んな生き方して良いんだよ。私もみんなも、そうあるべきだと思う。

弱い私を救うのは、学問だった。

学びは、私を謙虚にしてくれた。

今まで生きてきて培った考え方が正しいと思い込んで、傲慢に生きていた方が眠れぬ夜も少ないと思う。「差別なんてない!」と見えない誰かを傷つける方が、生きていくのもきっと楽だし、正義に支配された無知のまま「差別なんて最低だ!」と叫んでいた方が気持ち良いかもしれない。

でもやっぱり私はみんなと生きていきたいと思った。目の色も、肌の色も、性別も、階級も、私がまだ気づけていない何かも、全部「違い」があることは理解した上で、もっと尊重して生きていたい。

そうしたらきっとこれから先、どんな私になっても、私が私を好きでいられるから。結局、結論が自分に返ってきてちょっと情けないけど。

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学びたいことを学んだことや、やりたいことに挑戦できたこの2年間は楽しかった。一生友達でいたいと思える友達に出会えて嬉しかった。

広がった世界の中で、私はどんな生き方を選ぶのだろう。人に優しく生きるために、そして私を救うために学び続けよう。

追記 2023/12/29
自分の正しさを傲慢に主張するのは良くないけど、意見を押し通そうとするくらいの強さを持っていないと社会では生きていけない気がした(傲慢と意思の強さは全く違うけど)。多分優しさは悪意には勝てなくて、それでも優しくいたいと思っちゃうのは自分のエゴだと認識する必要がある。そして結局大切なのはいつもバランスで、学問だけじゃなくて暮らしや仕事、人との関わりで学んでいくしかないんだろうな。大変大変!めげない!がんばろ〜

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