うみの

叶わないお話

うみの

叶わないお話

最近の記事

  • 固定された記事

先輩とわたし。

 何を考えているのかわからない先輩に、勝手に憧れて、勝手に期待して。 「先輩は、大人だから」 「先輩みたいになりたいです」  そんないいもんじゃないよ、先輩も。なんて、たしなめられても、わたしを見下ろす影が愛おしくて。いつまでも、一歩前をいく先輩の背中をながめていたくて。 「先輩」 「……先輩」 「先輩!」  何度も先輩と呼んだ。何度も追いかけた。 「きみって物好きだよね」 先輩が、わたしの先輩である限り。なにがあっても追いかけられると思っていた。前に

    • 観覧車を燃やしたい。

       「観覧車のてっぺんでキスをした二人は、幸せになれるんだって」  そう言って観覧車を指差した私を、鼻で笑った彼。せっかくの遊園地デートにも関わらずアトラクションには目もくれず、ベンチに腰を下ろしたまま動こうとしない。    大人は疲れやすいんだよ、なんて見えすいた言い訳をして、彼は何食わぬ顔でポケットから煙草を取り出した。煙草の先端に火をつければ、彼の綺麗な鼻筋がぼんやりと橙色に浮かび上がる。今日も腹立たしいほどに美しく、夕日色をした小さな炎を映した瞳がどうしようもなく

    • 固定された記事

    先輩とわたし。