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ことばとこころの言語学

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わたしたちのことばについて、ゆるく、でも言語学的に考えてみます。
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2019年2月の記事一覧

[ことばとこころの言語学24]嫌われないためにも心がけなければならない理論。ポライトネス理論をもとに考えてみる。

前回、遅刻してきた学生に、「遅い、遅刻だ」と直接的に言うのではなく、「なにかあったの?」とか「もうちょっと早くきてくれるとよかったのに」と「遅い」という言葉を言わずに、別の表現に置き換えてみることで、相手の中に直接入り込まずに済ませることが可能となることについて確認しました。 ポライトネス理論の大切な概念として、フェイスという考えがあります。このフェイスとは、すべての人たちが持っている自分たち自身に関わる価値やイメージです。これらが、他者との相互作用を通して、影響を受けるの

[ことばとこころの言語学24]嫌われる言葉遣いについて。ポライトネス理論をもとに考えてみる。

みなさんは初対面の人にたいして「あ、この人って感じの良い人だなぁ」と思ったり、逆に「なんだか嫌な感じだなぁ」と思ったりしませんか?なぜ、私たちはそのような感覚を抱いてしまうのでしょうか?「見た目」と答えた方、そうではありません。答えは「ことばのつかいかた」にあるのです。 そこで、今回はどうやったら感じの良い人を演出できるのかについて考えてみましょう。そのために、「感じの悪い人のことばのつかいかた」を見ていくことで、気をつけなければならない点を明らかにしてみたいと思います。

[ことばとこころの言語学23]ピンク色の信号機がないのはなぜ?記号論のお話。

A: ちょっと、雨が降ってきそうだね。 B: ほんとだ。洗濯物をとりこまなきゃ。 この二人の会話を考えてみましょう。どうしてAさんは雨が降ってきそうだと思ったのでしょうか?そして、Bさんはなぜ、「ほんとだ」と言ったのでしょうか? わたしたちは、何かを見たり、感じたり、考えたりしたことを言葉として発することがあります。外に出たときに「うわ、寒い」と言ったりするのは、冷たい外気を感じたからでしょう。「うわ、氷点下3℃だ」と言ったときは、単に外気を感じたのではなく、目の前にある