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東京パラリンピックから車いすバスケが除外されそうな件について

車いすバスケットボールが東京パラリンピックから除外!?

2020年1月31日、「車いすバスケが東京パラリンピックから除外も IPCが「クラス分け基準」改善要求」というニュースを目にしました。


パラリンピックの花形競技でチケットも販売開始されている車いすバスケットボールがパラリンピックから除外されるかも、というニュースはSNSなどでも話題になり、私も「なんで今頃!?」と驚きました。

除外される理由としてニュースでは「国際パラリンピック委員会(IPC)と国際車いすバスケットボール連盟(IWBF)の障害者のクラス分けが違うから」とは書いてありましたが、どのように違うのか、何が問題なのかがよく分からなかったので調べてみました。

その結果、この分野は詳しくないので間違っているかもしれませんが、ざっと調べた範囲では想像以上に深刻かもしれない、ということがわかりました。

「パラリンピックの参加資格」の問題

超ざっくりいうと、この問題は「車いすバスケット選手の中にはIPCのクラス分けだとパラリンピックの参加資格を満たさない程度の選手がいる」ということのようです。そして、車いすバスケのエースや花形選手の多くもこのカテゴリに入ってしまう可能性があります。

パラリンピック(ICP)基準のクラス分けでは障害の程度をすべての競技で統一化していますが、車いすバスケットでは独自の基準でパラリンピック出場選手を選んでいるようです。

まず、車いすバスケは障害の重さに応じて1.0~4.5まで0.5刻みでクラスがあり、出場できる選手は合計14.0点までと決まっていますが、問題になってるのは4.0と4.5のクラスの選手で、IWBFのクラス分けマニュアル和訳完成版(PDF)によると、「体幹の動きにあまり問題がない程度」ということが前提になります。

クラス4.0選手:
・垂直面で完全な体幹の動きがあります。
・前方面で完全な体幹の動きがあります。
・一側への完全な体幹の動きがありますが、通常、片方の下肢機能の制限により、反対側の体幹のコントロールが困難です。
クラス4.5選手:
・垂直面で完全な体幹の動きがあります。
・前方面で完全な体幹の動きがあります。
・両側方に完全な体幹の動きがあります。

クラス分け(PDF)では「なんかしらの欠損や可動域の制限」がないと一番障害の軽いクラスにも該当しないようで、クラス4.0・4.5の選手はパラリンピックの出場する資格がないと解釈することができます。

ICPはIWBFに対して他の競技との同じ基準でルールを定め、5月29日までに車いすバスケ選手の障害の程度を調べ直して参加資格があるかどうか判断しろと命じているんですね。

これまでは放置されていた?

この問題が今頃表面化した理由は「IPCはIWBFに長年に渡り基準を統一するよう勧告してきたが、一向に解決せず交渉が決裂したため」だそうです。実際、日本車いすバスケットボール連盟はこの報道を受けて「IWBFにIPCの基準に従うように訴えていた」というプレスリリースを出していますが、クラス分けが不適切であることは周知の事実だったようです。

これは推測ですが、パラリンピックの中でも花形競技である車いすバスケットボールにおいてはIPC側も口を挟みにくく独自の基準を黙認していたのが、パラリンピックの地位向上につれて放置できなくなった、という事情もあるのではないでしょうか。

さっさと改正すればいいのでは?

この問題は、IWBFが早期にルールを改正すればいいのではないかと感じますが、簡単には改正できないでしょう。

障害が軽い選手が出場できなくなる可能性が高いため、現在の車いすバスケのエース選手の多くがパラリンピックに出られない問題が生じるかもしれませんし、車いすバスケットルール自体も戦略も大きく変わってしまうため、もし東京パラリンピックに残るとしても大きな混乱が生じることは避けられません。

また、「パラリンピックに出られない程度に障害が軽く運動能力があるけども、健常者の競技に出られない車椅子ユーザー」という層はこれまで車いすバスケットボールでパラリンピックに出場する道がありましたが、事の次第ではルートが完全に閉ざされます。

単なる障害のクラス分けの問題を超えて「障害者とは誰か」という難題にすら突入するので容易に解決できないことでしょう。

なんとか解決してほしい

以上より、車いすバスケ選手のクラス分けを見直さないと東京パラリンピックから車いすバスケ自体を除外するという話は想像以上に問題が根深く、そして現実のものになる可能性が高いことがわかりました。

すでに車いすバスケットボールのチケットの申込者は殺到しており、もし中止になればチケットの払い戻しの問題にもなります。しかし、それ以上にパラリンピックに向けて練習を重ねていた選手たちのことも心配です。なんとか穏便に解決する道を模索してほしいものです。

このくらいで

では、本日はこのくらいで。皆様、パラリンピックを楽しみにしつつ踏ん張っていきましょう。では。

※この記事は本ブログ「世界は言葉でできている」からの転載です

妻のあおががてんかん再発とか体調の悪化とかで仕事をやめることになりました。障害者の自分で妻一人養うことはかなり厳しいのでコンテンツがオモシロかったらサポートしていただけると全裸で土下座マシンになります。