#創作大賞2024 #ホラー部門 #神社 鬱蒼と茂る森が風でどよめく。 日は落ち、暗い闇に森は溶けていく。 「それ」はまるで最初からそこにあったかのように、平然と鳥居の両脇に座っていた。 苔むした体は長身である父さんよりもはるかに大きい。でっぷりとした大きなまんじゅうのような形は可愛さよりも気味悪さをかんじるほどだ。 カエル特有の鼻と、でこぼこが浮き出た頭。そしてなぜか瞑っている目ーーーー ひきがえるーーーーー 苔むしたひきがえるの石像が、鳥居の両脇に ずんぐ
#創作大賞2024 #ホラー小説部門 これは、僕たち家族が体験した ある夏の夜の物語ーーー。 **** カナカナカナカナ……… ひぐらしと共に夕焼けが空に溶けてゆく。 森の木々は暗く沈み、もうすぐ夜がやってくる。 「けいとー、夏やすみの宿題終わったのかー?」 隣を歩く父さんが煙草を吸いながら聞いてきた。 その吐いた煙でいつも少しむせる。 「全然まだまだよねぇ、今日も必死にプリントしてたじゃない」 母さんがそう髪をかきあげる。 ちょっと嫌味っぽい言い方だ。 「まあまあ、