ぼくらが店を出す理由
KUONは2016年の春夏にスタートしました。
この秋冬(FW20)でちょうど10シーズン、5年が経ちます。
コンセプトは、「新しいものは古くなるけれど、美しいものはいつまでも美しい」。ぼくとデザイナーの石橋が「世界に出るために」設立したブランドです。
色々な幸運に恵まれて国内で30、海外で10ほどのお店で取扱をいただけるようになり、メンバーも増えてちょっとはブランドらしくなってきました。
そして今、皆さんと同じくコロナ禍の影響の真っ只中で「はじめての直営店舗」をオープンします。
誰も答えを持っていない、先の読めない時代になり、ぼくたちが考えたのは
「信念をもって、真摯に、自分たちのやりたいことをやろう」
「真夏に嬉々としてコートを試着してもらえるブランドになるには」
この2つでした。
それがなぜ、お店を出すことにつながるのか。
ちょっと長くなりますのでお時間のある時にお読みいただけたら嬉しいです。
まずはお店のオープン情報からどうぞ!
オープン日時
9月26日(土)12:00〜
KUON Flagship Store
住所:〒150-0001東京都渋谷区神宮前2-15-10
電話:03-6804-2483(9月26日より開通)
お問い合わせ:store@kuon.tokyo
営業時間:
平日13:00-19:00/ 土日祝 12:00-19:00
お客様のご来店状況によっては入場制限などをさせていただくことがございますので予めご了承ください。
今後の店舗の情報などはSTORE用のインスタグラムで更新しますのでフォローをお願いします。
@KUON_STORE
https://www.instagram.com/kuon_store/
また、オープンに先立ちまして、9月19日、20日にテストオペレーションを兼ねてサンプルセールを行います。
こちらについてもインスタグラムでご確認ください。
1. はじめまして
皆さま、はじめまして。KUON代表の藤原新と申します。フジワラ アラタと読みます。
KUONの創業者で運営会社の株式会社MOONSHOTの代表取締役でもあります。このKUON公式noteではブランドのさまざまな情報を発信する予定です。よろしければフォローしていただけると嬉しいです。
2. KUONについて
今回のnoteはKUONを既にご存知の方に向けて書いていますので、ブランドをご存知ない方はお時間ある時にこちらもご覧いただければと思います。
3. お店の役割について
・KUONのフルコレクションが見れる場所
KUONがスタートをしたSS16シーズンは10品番もなかった商品が、現在では小物も含めると約100品番に増えました。
ここ数年は国内外のお客様からどこに行けば商品を見ることができるのか?などのお問い合わせも多く、とは言えお取引先でこれらを全部見せるのは難しく、また、ECストアだけではKUONの特徴と強みである「生地」や「パターン」を十分にご覧いただくことはできず、それらを解決する役割として「お店」という場所をつくりました。
・オーダーメイドやリペアなどを受け付ける場所
KUONは100年以上前の古布「BORO」をはじめ、刺し子や裂き織り、藍染、泥染といった日本古来の伝統技術などを「いま」のファッションにアップデートしたデザインを得意としています。これらの生地を使用した商品は一点物も多く、かつ、希少性もあり、お客様に長く着ていただけるように店舗2階にアトリエを併設し、オーダーメイドやリペアなどをお受けすることができるようになります。
こちらでKUONの生地ストックからお選びいただいてオーダーメイドやカスタムなどを受け付けます。
※実際に稼働するまでには少々お時間をいただきます。
・学び、発信の場所
KUONというブランドはテーラーやkolorでパタンナーとして実績を積んだ石橋をはじめ、他にもアトリエには2名のパタンナーが在籍することからも、「飛躍的なクリエイティブ」というより、「理論にもとづくモノづくり」が得意なブランドです。
まずはこちらのムービーをご覧ください。
いかがでしたか?
本人たちにとっては毎日の作業なのですが、ぼくから見るとちょっとしたエンターテインメントなんじゃないかと思いこのムービーをつくりました。
「刺し子」や「藍染」の作業なども同様で、モノづくりの現場は実はすごくエンターテインメントで、それを発信することは、新しいモノづくりの可能性につながるのではないかと思っています。オンラインでのパターン教室や藍染教室などもやってみたいと考えており、それらを発信するための「お店」でもあります。
KUONはこれまで卸売ビジネスを展開してきました。ブランドが大きくなったら直営店を出店する、というのはよく聞く話かと思います。ぼくたちも初期に比べれば成長したかもしれませんが、コロナ禍になるまでは直営店はもう少し先の話だと考えていました。なので、セオリー通りの直営店出店というよりは、改めてKUONのやりたいことを考えた上での直営店の意味合いが強いです。
4. KUONの戦略について
・海外を主戦場としたクリエイティビティを高める戦略
ぼくたちの優先順位の1番は、商品がかっこいいこと。素敵であること。そして、ファッションやデザインは常に創造的・先進的であるべきで、そこにさまざまなマーケティングが付随してブランドを広げていくと考えます。
ぼくたちは「世界に出るために」KUONをはじめたので、常に海外を意識してきました。TOKYO FASHION AWARD 2018という賞を受賞し、パリなどの海外の展示会やファッションウィークに参加をするようになり、2019年からはAlexander WangやPhillip Limを見出したニューヨークのThe NEWSというショールームと契約しています。パリではTOKYO FASHION AWARDの1年先輩のdoubletがLVMHのグランプリを受賞したタイミングで同じショールームに参加させていただきとても刺激を受けました。
2020年秋冬シーズンからはNEW YORK FASHION WEEKにコレクション発表の場を移し、同じくデジタルですが9月15日にも2021年春夏コレクションを発表します。
古い考えかもしれませんが、パリコレクションを頂点としたこのシステムでは、偉大なデザイナーから若手デザイナーまでが毎シーズン限られた時間の中でブランドを表現します。常に「新しさ」を求めるこのシステムは既にそれ自体が機能不全を起こしていて、大量生産、大量消費という社会問題につながっている一面もあります。しかしながら、ブランドやデザイナーのクリエイティビティを高める手段や場所としては今でも1番有効だと感じています。スポーツ選手が海外のメジャーリーグでプレーすることで格段に飛躍するのと同じかと思います。
KUONは世界に出たばかりですが、クリエイティブなデザインやアイデアは言葉の壁も超えていくのを見てきました。
これがぼくたちのクリエイティビティを高める戦略です。
・お客様に信頼していただき長く続けていくための戦略
一方で、D2Cと言われるブランドが課題解決やお客様とコミュニティと築きながらつくりあげるブランドの世界もとても現代的で素敵だとも感じています。KUONはブランド理念として「デザインによる社会的課題の解決に取り組むこと」を掲げて、スタート時から東日本大震災で被災した地域の女性たちやハンディキャップをもつ方々とのプロジェクトを進めています。
最初は刺し子の素人だったお母さんたちがいまでは日本屈指の刺し子職人集団となり、KUONを支える屋台骨になっています。ぼくたちのプロジェクトはボランティアではありません。お互いが対等で尊敬できる仕事のパートナーです。彼らの技術が向上することはKUONのクオリティ向上に直結し、売上にもつながります。実際にここ5年間でこのプロジェクトへの仕事の発注額は当初の10倍以上になりました。すなわちKUONの売上げが伸びたことにもなります。
近年「サスティナビリティ」や「SDGs」がファッション業界でもパワーワード になっていますが、これらはすぐに結果の出ることではなく、時間と労力がかかります。
例えば裂き織り。江戸時代中後期から東北地方を中心に伝わる伝統技術です。よこ糸に古くなった布や着れなくなった着物などを手で細くひも状に裂いて、布を織り込む織物を裂き織りと言います。ほとんどの工程が手作業なので1時間に数センチしか織ることができません。KUONの裂き織りはハンディキャップを抱える方々が織ってくれています。手仕事ならではの生地の凹凸感やぬくもりは機械で表現することは難しく、今ではKUONの商品になくてはならない存在です。
在庫や生地が余っているから、新聞やコンサルティングで耳にする言葉だから。という理由ではじめるには少々ハードルが高く、取り組み自体がブランドや事業に直結しないと上手くいかないことがほとんどだと思います。
そして、これらはブランド運営と同じで、お客様にブランドを信頼していただくプロセスと似ています。時間と労力はかかりますがブランドを長く続けていくにはお客様との信頼関係が不可欠だと考えます。
課題解決型のブランドとしての側面。これがお客様に信頼していただけるブランドになるための戦略です。
"コレクションブランドとD2Cブランドのハイブリッド"
世界基準のクリエイティビティでパリコレを目指しながらも課題解決にも取り組むハイブリッドブランドがKUONの目指す姿です。
5. ぼくの話
長々と書いてきましたが、ここで、ちょっとぼくの話で大変恐縮なのですが。
お店はもちろんKUONに関わるメンバーの想いをカタチにする場所ではありますが、ぼくの想いが詰まった場所でもあります。
ぼくは30を過ぎてファッションの世界に入りました。いまでも週の半分は違う仕事をしています。法律に関する仕事なのでファッションとは異なる分野です。
2002年の2月に代官山にオープンした「時しらず」という店がありました。ぼくはそこに毎週のように通いました。24、25歳の頃です。当時はネットが広がり始めた頃で、インスタなどのSNSはなく、まだまだ足で情報を稼ぐ時代でした。
アントワープ・シックス、ラフ・シモンズや裏原全盛期を通ったぼくにとって「ハイ・ストリート」をコンセプトにコレクションブランドとストリートブランドのミックスを提案するスタイルは、今でこそ当たり前ですが当時はとても新鮮で刺激的でした。
毎週のように通っているとお店のスタッフはもちろん、お客さん同士でもなんとなく顔馴染みの人が増えてきて、当時流行っていたブログの影響もあり、時しらずを中心に友達が増えていきました。
SNSがない時代、社会人になってから職場以外で趣味の友達ができるというのはとても貴重で、当時の友達は結婚したり、子供ができたり、体型が変わったり、頭髪が薄くなったりしても、いまでも友達です。
週末なんとなく店に集まり、近くのカフェでご飯を食べたり呑んだりして、好きな洋服をネタにあーだこーだいって過ごす。それで「ああ、いい週末だったな」って思う。
ちなみに、当時ぼくが通っていたカフェで働いていたのが、今やミシュランで星を獲り、メディアでも引っ張りだこの、代々木上原にあるsioの鳥羽シェフでした。ぼくらは同じ歳だったので彼のつくる料理と会話はとても心地のよい空間でした。当時から今と変わらず「パッション」としか言ってなかったので最近の活躍は本当に嬉しい。
そして、時しらずを立ち上げて、その後WISMを手掛けたりと、ぼくがファッション業界に入るきっかけをくれた市之瀬さん。実はKUONが本格的に海外進出をはじめたSS19からKUONチームとしてサポートをしてもらっています。
ぼくは、やっぱり「そういう店をつくりたい」
そして次世代につなげていきたい。です。
掲示板、ブログからYouTubeやインスタとツールは変わったけれどファッションを好きな人に変わりはないとぼくは思っています。
4月からKUONチームとして、ムービーなどを一緒につくってくれている遠藤くん、古江くんという二人組がいます。彼らは「僕らが纏うモノ」という名義で消費者目線を大事にしながら、いま改めて、洋服やファッションが好きだという若い世代の掘り起こしをしています。彼らには当時のぼくやその友達たちがやっていたことと似ていると思っていて、少しだけ店頭にも立ってもらいます。
市之瀬さんも店頭に立つということですでに制御が効かなくなっています。
ライフスタイル提案はするけれど、買った服を実際に着ていく場所がないというか。大それた場所は重要ではないと思っていて、ファッションが好きな人が集まれる場所やきっかけになるお店にしたいと思います。
要するに、ぼくが買い物をしたくなるお店を自分でつくったのだろう。
極論、服は買わなくてもいいと思っています。
まずは話にでもきてくれよ。と。
そんな想いもあり、お店の場所は原宿でもちょっとローカルな雰囲気のある神宮前2丁目エリアにしました。
このエリアはユナイテッドアローズやロンハーマンなども近くにありますが、いわゆる原宿の中心地から少し離れていて、古くからの飲食店やカフェが多くてすごく過ごしやすいエリアです。
表通りには昨年UNIONもできたけど、ぼくらのお店はそこから一本入って、さらに狭い私道を入った築50年の二軒長屋の奥側。たぶん皆さんも地図で見て、最初はここでいいの?と戸惑うと思います。
ちなみに、手前の玄関は一般の方の住居になっていますのでくれぐれも入らないようにお願いいたします!
ところで、ここまでずっと、ぼく、ぼくら、という表現を使ってきましたが、お店を決めた時にぼくの頭に流れたのが、小沢健二さんの「ぼくらが旅に出る理由」でした。あの軽やかでポジティブな名曲から今回のnoteのタイトルもいただきました。
6. ぼくらが店を出す理由
最後に。コロナ禍で世界は大きく変わりましたが、ぼくらは「変わったことを考えるより」、「変わらなかったことを考える」ことにしました。
今年の2月のFW20展示会(ちょうど発売がはじまったシーズンです)に、5年目ということで顧客様を5名ご招待しました。普段はバイヤーやプレス向けの展示会なので、顧客様のご招待ははじめてのことです。
ぼくらは普段お客様に直接接する機会がほとんどないので、半年以上先の商品を本当に楽しそうに試着されている姿や、気になっていた生地や染色などについて熱心にデザイナーに質問している姿がとても印象的で心に残りました。
時代が変わっても、ファッションが人をワクワクさせて、それを楽しみにしている人がいることは変わりません。
「信念をもって、真摯に、自分たちのやりたいことをやろう」
「真夏に嬉々としてコートを試着してもらえるブランドになるには」
その答えとしてぼくたちには「場所」が必要で、それが「お店」でした。
誰も答えを持っていない、先の見えない時代だからこそ、ぼくたちもまだまだ成長できる可能性があると考えています。
どんなお店になっていくのか、ぼくたちにも想像できないことだらけですが、皆さまにも一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。
最後までお読みくださりありがとうございます。
KUON 藤原
7. 店舗情報
オープン日時
9月26日(土)12:00〜
KUON Flagship Store
住所:〒150-0001東京都渋谷区神宮前2-15-10
電話:03-6804-2483(9月26日より開通)
お問い合わせ:store@kuon.tokyo
営業時間:
平日13:00-19:00/ 土日祝 12:00-19:00
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