右手と旅する男 第2話「眼」
【2話概要】
新たな怪異【神の涙】の謎を探る旅人
旧時代の衛星兵器の如き【神の涙】を操るのは、新進の党首となった男。その力で前有力者たちの殺害を繰り返していた
旅人は調査の途中敵の擁する屈強な男と接触。ナイフの不意打ちを仕掛けるも、破れ捕まる。「右腕」も鞄から引き摺り出されてしまった
【2,3話登場人物外観イメージ】
ナルセ
元科学者で白衣の似合う痩身の中年男性。【怪異】憑きだが、瞳は理知的な色を湛えている
リゼ
ドレス姿のか弱い風貌の少女。物語的に魔術的な力を持つことを示す白い髪。赤い瞳
ホムラ
太い首周りなど、鍛えられた筋肉質な肉体を持つ男。闘い以外は興味のなさそうなストイックさ。格好もコートの下はシャツ、ベルトで締めたパンツと飾り気無い
ストーリー
1.【偏執的な男】
画面に男の顔。本来は裕福な老人だが、今は猜疑心と不自由な生活で、すっかりしわくちゃの偏執的な顔立ちに
老人:話すことったってもう何もないわい
老人:こうしてワシは今日も穴籠もり生活だ。ああ、外に出たのはいつ以来だ。すっかり足も萎えた
老人:おい、代わりの酒を持って来い、お前らは主人の腹がくちくなったのを黙ってみてるボンクラか……くそ、みんなワシを見捨てて逃げおって
老人:それもこれもみんな奴のせいだ……
(宙を仰いで)
老人:太陽だ! 太陽がワシらを嘲っているんだ!(「嘲って」の部分傍点)
ここで引きになり、これまで話し続けた偏執的な男とそれを正面で立ったまま聞く旅人の構図が映し出される
住んでる場所の概観が続けて映される。場所は地下室らしき部屋で、家具の類も見当たらず、老人を世話する者たちの姿も見当たらない物寂しい情景。
会話が途切れ、旅人は「では」とその場を辞そうとする
老人:待て、どこへ行く
旅人:お話を聞かせて頂きありがとうございます。貴方は「シロ」だと分かりましたので、これ以上ここに用はありません
老人:置いていくな! お前もワシを見捨てるつもりか!
旅人:貴方の境遇を気の毒には思います。ですが私には何もしてあげられません(人の気の持ちようの話なんで)
老人:そんな、おい!
老人:助けて……
最後に一言呟く。その呟きの直後、男の「頭上」に影がさす。
不穏な気配を察して旅人が振り向くと同時に、盛大に天井が崩れる。巨大な『塊』が老人のいた場所ごと彼を押し潰した
驚愕する旅人
2.【投下】
執務室の様な調度品の揃った部屋
理知的な風貌の中年男性が、猫脚の高級椅子に座る。男が片腕を伸ばした先は、執務机がある
中年男(ナルセ):駄目ですよ。地下に潜って生き延びようと思っても。貴方にも裁きを受けてもらいます
ナルセ:【神の涙】は、この地上に存在する一切を例外なく逃しはしません
男が手を伸ばした机の上には地図。男の手首にはチェーンが掛けられ、「石」がぶら下がっている。石の先端が地図上で座標を指し示す
そして既に幾つも「バツ印」がつけられた顔写真。他に写真立てが置かれ、中年男と娘らしき少女の2人のシルエットが映し出されている。
石が示した地図上の箇所がアップになり、場面転換
地図上の場所は、まさに先程地下の老人を押し潰した地点の地上部分。街の郊外。地面に大きな(十数メートル)穴が空き、先の惨状を物語る
既に野次馬が集っている
野次馬A:見たか、今の……
野次馬B:ああ、間違いない……
先の墜落の瞬間を見ていた野次馬Bが、映像を振り返る
天から地上に墜落し、地面に巨大な穴を穿ったのは雨粒のような、しかし途方もなく巨大な「しずく形」の「塊」
野次馬B:涙だった
天上に登った太陽から、雫のような長い帯が垂れている。またいつちょちょ切れて、地上に落下してもおかしくない
「そうだ、今も太陽が泣いているんだ」(「泣いて」傍点)
3.【神の涙】
破壊の跡地で思惟を巡らす旅人
(以下経緯と今の状況を説明)
旅人:この州で事件が起きたのはもう2年前
(回想)街中を車に混じって馬車が闊歩する。乗っているのは大尽といった風情の老年の男。ふと馬車の上に影が差す。
不審に思った御者が頭上を見上げ、中の男も中が暗くなり不機嫌に声を荒らげた瞬間……
ぐしゃあぁぁ!!
(1シーン、馬車に【神の涙】が直撃した瞬間を止め絵で描く。往来のど真ん中で圧潰する馬車。驚きでひっくり返る御者。周囲の群衆など)
先と同様「しずく形」をした巨大な「塊」が、馬車の車両ごと老年の男を圧殺
役目を遂げた「塊」は、液体の如く弾け飛び、空気中に拡散して消滅する
旅人:この事件で当時政権与党の代議士が群衆の前で死亡
旅人:それからも政治家、役人、経済人といったこの国の要人が、衆人環視の只中圧殺されていった。
(挿入:演説中降り注いだ「塊」に圧殺される男、豪邸の庭に残された「染み」など)
いつしか事件の後「太陽が泣いている」と訴えるものが相次ぎ……
旅人:人々は畏れ、この「雫」を【神の涙(ティアーズ・オブ・ゴッド)】と称すようになった
旅人:とここまでが資料にあった内容
(1話回想:警部から鍵を受け取るシーン)
旅人:被害に遭った者たちが【怪異】に取り憑かれている線を考えてみたが、さっきのでそれは消えた
(回想:直前に太陽が「笑っている」と叫んだ老人)
旅人:やはりこちらか……
また新たな資料(新聞記事)を懐から取り出す
新聞記事:「黄色い太陽の党」躍進!
記事中の写真には、党の代表とされる男(ナルセ)、その「娘」とされる少女、護衛の屈強な男が映っている
場面遷移。パーティー会場。盛装した人々が集い社交している
ナルセも、挨拶を交わしている
モブ男性:いやぁこの度の選挙の勝利は誠に喜ばしい
ナルセ:(笑みを見せ)いえ、皆様のお力添えのお陰です
モブ男性:ははは。こりゃまた上手い
適当に相槌を打つ中年男の足元から、ひょっこり顔を覗かせる
モブ女性:あら、可愛らしいお嬢さん。どなた?
モブ男性:そう言えば聞いておりましたぞ。何でも田舎で養生していた娘さんがおられたとか
ナルセ:ええ、めでたく快復しまして。「リゼ」や。皆さんに挨拶なさい
リゼ:初めまして、皆さん
ドレスのスカートの裾を摘んでお辞儀。可愛らしく挨拶をする。周囲の参加者にも大変好評の様子
会場フェードアウト。視点は旅人に戻る
旅人:「黄色い太陽の党」。急進的な改革路線で知られる政党だ。この国のお偉方が【神の涙】で軒並み凋落していった頃、代わりに勢力を拡大した
時に暴動の扇動や他党への選挙妨害といった暴力的な手段も辞さないとの噂。編成した私的軍隊でね
そう解説しながらも、旅人の視線は写真の中の「少女」に向けられている
旅人:リゼ……。人の娘に成り代わって、何を企む
険しい顔つきになって考える旅人。そこにかつん、かつんと複数の足音
屈強な男(ホムラ)が部下を3人ほど引き連れて、階段を降りてきた
ホムラ:あーら、後始末にやって来たら。でかいネズミが一匹混じっているじゃないの
旅人とホムラ、無言で対峙する
??:ひぃぃぃ。大変なことになってしまいました
2人の対峙する様子をまた、軍服を纏った謎の女が瓦礫の影から見守っていた
4.【引き摺り出された「右手」】
政党の本部。「事務所」の様な場所に連れて来られた旅人
事務所とは言っても、その「筋」の人たちが縄張りとするような場所に近い、殺風景さ
以降数ページ、顎に手を当てたり椅子に足を載せたりリアクションを重ねながら言葉を並べる男と、無反応を貫いて男の言葉を聞き続ける旅人が、頁に横並びに連なる
ホムラ:いや、悪いな坊主。近頃俺らもうるさく言われているんでね
ホムラ:ちょっと確認さえ取れればすぐ解放してやるから我慢してくれや
ホムラ:最近うちらのことを嗅ぎ回っているネズミがわんさかいてな
ホムラ:まっ、その手の奴はうちのスキャンダルを嗅ぎ回ろうとケチ臭いことやってる奴等ばかりだが
ホムラ:ただ中にはちいとばかり無視できねぇ。ボスの持つあれ、アレを狙う奴らもいてだねぇ
(単純なカマかけだが引っかからず無反応)
ホムラ:アレって言うのはほらアレ。あー、言葉が出ねぇ
(部下:この鞄、どうやっても開きやしねえ)
ホムラ:まっ、いいや。んでだが、特別目をつけるように言われている奴がいてねぇ。そいつの名は……
旅人、まだ無反応
ホムラ:(ニヤリとなって)「右手と旅する男」!
ホムラがそう言った途端、旅人の瞳孔が見開かれる
机に置かれた鞄が「ガバっ」と勢いよく開かれる。そこから振るわれる右手。投擲される短剣
ホムラの顔面を襲う
ホムラ:ニィっ
当たる寸前に短剣をその食いしばった歯で受け止めたホムラ。短剣を咥えたまま邪悪な笑み
失敗したと得心し、慌てて鞄に引っ込もうとする右手。間髪入れずホムラの振り下ろした短剣が、手の平を貫いた
(この時旅人が自分の体をビクっと反応させる。自分の手なので)
ホムラはそのまま今度は短剣を壁に盛大に叩きつける
壁に突き立つ短剣。鞄から引き摺り出されて、壁上に標本の如く磔になる女の右腕
ホムラ:とんだびっくり玩具箱だが、よく見りゃ大したことありゃしない。幽霊の正体見たり枯れ尾花ってね
部下:はは……(乾いた笑い)
(「いや、不気味なのには変わりはない」といった感想が表情に隠せていない)
ホムラ:そいつも捕まえておきや
部下たちに机に押さえつけられる
机に頭を押さえつけられながらも、ホムラを睨めつけ続ける旅人の表情アップ
5.【王国介入】
??:集まったな
宵闇
ザザ、という足音とともに、政党本部の前に制服を纏った5人組集合。左手には魔力を強化する類のブレスレット
イケメンっぽい眼鏡が隊長
隊長:前元首の死以降、我国と【怪異】の兵器転用禁止の協定は途絶えているとみなされた。然らば強硬手段で構わん。【神の涙】を我らが管理下に置く
突入する一行で〆
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