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12. 突然始まる回復の予兆。聞こえすぎる恐怖。スリリングな大音量との戦い (外リンパ瘻 発症11日目)

毎朝6時に看護師さんが検温に来る。看護師さんに声をかけられて目が覚めた。

「窓、少し開けましょうか」
「体温何度でした?」
看護師さんの声が電波の悪いラジオから聞こえるように「ジジッジジッ」と振動となって右耳に響く。

今日で難聴発症から11日目。
この朝、初めて右耳が音を感知した。
音というより振動をキャッチした。

看護師さんがベッド周りのカーテンを勢いよく開けると「ジジッジッ」とカーテンレールの音が機械的な振動音として右耳に響く。

携帯のプラスチックケースを爪でコツコツと弾いてみると、原音の「コツコツ」とはかけ離れた音だが、右耳に振動が響いているのがわかる。

トイレに行って換気扇の下に立ってみた。
換気扇がゴーゴーと音を立てているが、この音は右耳に全く聞こえない。

今日から大部屋に初めて患者さんが一人入ってきた。とても感じの良い人で気さくに話しかけてくれた。耳の聞こえが悪いことを伝えると、すこし大きめの声でゆっくり話してくれた。

夕方、右耳はよりはっきり聞こえるようになってきた。ただ、やたら大きく聞こえる。右耳に入ってくる音量が調整できない。壊れたスピーカーのように所々音が割れたり、メガホンで耳元で叫ばれているかのような、とてつもない音量がブツブツと細切れに混ざる。

耳を塞がないとまともに会話ができない。
耳を塞ぐと今度は自分の声がストレスになる。

廊下で誰かが何かをガシャンと落とした。おそらく金属が入った容器を落としたのだろう。そんなに大きな音ではないはずなのに、わたしに飛び上がるほどびっくりした。震えるほどの超大音量が脳天に響く。例えるなら、メガホンか拡声器の大音量が突如耳元で鳴った時のような暴力的とも言えるスリリングな音量に近い。

右耳は治ってるいるのか、悪化しているのか。
もしこの状態がつづいたらどうしよう。
不安の大波が押し寄せる。

音がつらい。

聞こえるたびに震えるほど強い刺激が耳から脳へ駆け抜ける。

投薬内容
内服薬:カルナクリン錠、メチコバール、ムコスタ、キプレス、ネキシウムカプセル、アデホスコーワ、マグミット、アレロック

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