見出し画像

サラダを受け取るのに本人確認は必要なのか?〜完璧じゃないDXのススメ

こんにちは。GNUSの代表の文分です。
今回はDXにおける完璧主義について考えてみたいと思います。日本とアメリカでDXプロジェクトに参加し、ビジネスパーソンとしても生活者としても両方の環境を経験しましたが、日本における「完璧主義」というのは日本のDXを遅らせている原因なのではないかと思うことがあります。

例えば、日本においては、業務をシステム化したりするときに、稀に起こる例外ケースに対しても、何がなんでもシステムで解決しようとしたり、ミスが起こる可能性を限りなくゼロにしようとする意識が高いような気がしました。

もちろんこれは品質管理という観点では素晴らしいことであるのですが、同時に完璧を目指すシステムは「時間」も「お金」もかかってしまいがちです。さらには、その分が消費者のコストに転化されていたりすることにもつながったりします。最悪の場合は、それによってDXのプロジェクトがストップしたりすることもありえます。

今回の記事では、私が実際にNYで生活しているときに利用していたサラダショップのオーダーアプリの事例から、「完璧を求めないDX」とはなんなのか考えてみたいと思います。

モバイルオーダーの普及

最近、日本のマクドナルドでも利用できるようになりましたが、ニューヨークでは多くの人気ファストフードショップではかなり前からモバイルオーダーが主流になっています。

スターバックスやSHAKESHACKなどの世界展開しているところだけでなく、ニューヨークローカルのお店でもモバイルオーダーアプリを提供し、店頭でピックアップする体験が一般化しています。聞いた話では、スターバックスのオーダーの3割がモバイル経由のオーダーということらしいので、モバイルオーダーは非常に重要なチャネルであるわけです。

SHAKE SHACKのモバイルオーダーアプリ
https://www.shakeshack.com/app/

サラダショップの待ち時間を解決するDX

私がニューヨークに住みはじめる少し前から、ニューヨーカーの間でランチタイムにサラダボウルを食べるという習慣が広まっていました。特にベジタリアンだけの習慣ではなく、色んな人がランチタイムにサラダボウルだけを食べるようになっていました。もちろんそれによって、サラダ専門店が増え、どの店にもランチタイムには長蛇の列ができるようになってしまいまして、サラダを食べるのに20-30分待つという状態でした。

そこで、特に人気があった"sweetgreen"というサラダ専門店は、2017年頃からモバイルアプリを提供し、アプリを通じて自分の好みのサラダをカスタムオーダーできて、お店でピックアップできるというサービスを開始しました。

これがほんとに便利でして、だいたい1時間前にアプリからオーダーすればお店にサラダが出来上がっていて、待ち時間ほぼゼロで受け取ることができるんです。もちろん、セットメニューだけでなく自分でカスタマイズしたサラダでも全く問題なしです。

アプリにロイヤリティプログラムも組み込まれているので、10回オーダーすると1回タダになったり、自分のカスタムオーダーメニューをアプリに記憶させたり、完全に彼らの術中にはまっていくのがわかりました。たしか、多い時は週に3回くらいはオーダーしていたような気がします。

サラダを受け取るのに本人確認は必要?

ただ一つだけ、びっくりする体験があったとすると、「商品のピックアップ」です。

アプリからオーダーして、予定した時間に店頭に行くと、注文されたサラダが棚に置かれているんですが、注文した人の名前のアルファベット順に並べられているんですね。Steveだったら『S』のところから持っていく。そんな感じです。

初めてピックアップする時は勝手がわからず、店員に「これ持っていっていいの?」って聞いちゃいました。

店員さんには、ちょっと嫌な顔をされて、「もちろん!あなたが注文したサラダでしょ?」もちろん店員さんは私が本当にオーダーした本人かどうかチェックしません。「勝手にピックアップ方式」なんです。

僕以外にも、あれ?って思う人がいると思います。

「誰かが間違って持っていったらどうするんだろう?」
「オーダーしてない人でも、勝手にサラダ持っていけるよね?」

ただ、アメリカのカルチャーを理解していくと、この仕組みが非常に合理的な判断に基づいていることがわかります。

サラダショップ側の回答はこんな感じだと思います。(確認したわけではないですが、きっとこうやって答えるんじゃないかなと)

サラダをピックアップするのいちいちチェックする仕組みを作っても誰もハッピーにならないでしょう。

もし本人チェックをするとしたら、その人件費はサラダの価格に反映されてきますよね?もしそのためのシステムを作ったとしても同じです。

そして、本人確認なんかしたら、オフィスで待っている友人のサラダを代わりに持って帰ってあげることができなくなりますよね。

そもそも、他人がカスタマイズしたサラダを、誰が持っていきたいんでしょうか?ピックアップの間違いはどれくらいの頻度で起こるのでしょうか?
万が一、ピックアップの間違えがあったら、すぐにそこで作ればいいのではないでしょうか?料金はアプリを通じて返金すればいいでしょう。

「そんなミスが起こることはわかってるけど、ミスをなくすために本人確認することは非合理である」という結論に達しているんです。一定の確率でミスが起こる前提で、そのミスに合理的な対応を考えるというやり方です。

実際、私も何度か注文したサラダができていなかったとか、間違ったものが作られていたという経験しましたが、その度に「ごめんね」と言われて、すぐに新しいサラダを作ってもらいクーポンで返金されていました。

ミスがあったという理由で利用を止めようと思ったことはありません、圧倒的に便利なしくみですから。

DXと完璧主義

「間違ってピックアップされることがあってはいけない」「そのミスはシステムで防がれるべきである」という完璧主義に慣れてしまっていた人にとっては、容易に受け入れにくい考え方かもしれません。

ただ、多くの成功している企業にある1つの共通点は「完璧を求めすぎない」ことなのではないかと考えると、私たちも「戦略的に完璧を求めない」ようになれたら、いろんなことが進むのではないかと思ったりもしています。

(ちなみに、全てのアメリカのフードピックアップアプリがこの仕組みを採用しているわけではありません。確か、SHAKE SHACKはピックアップ時に本人確認をしていた記憶があります。)

これからもGNUSでは各マガジンでいろんなメンバーの視点で、世の中の変化や新規事業のノウハウ、テックトレンドの分析や、フリーランス視点での働き方の変化などについて書いていく予定にしています。よければマガジンごと登録お願いします!







この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
8
GNUS Inc. 代表取締役 CEO / 株式会社 電通で社内新規事業の立ち上げ→DXコンサルタント→NYオフィスでDXコンサルタント→帰国。DX/新規事業/ワークスタイルイノベーションを中心としたビジネスのこととか組織のこととか。