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「YUN–ROCKIN'ON WORLD」(ユンボ安藤 自作自演インタビュー)ロックスターの章 前編

「YUN–ROCKIN'ON WORLD」
(ユンボ安藤 自作自演インタビュー)

この作品はあらゆる並行世界(パラレルワールド)において、各ジャンルで世界的成功を収めてきた希代の天才、奇跡のタイムスリーパー、ユンボ安藤氏のロングインタビューである。

今回お送りする並行世界は国際的なロックスターとして大成功を収めたユンボ安藤氏のインタビューという名の「新・世界史」の前編となります。

■インタビューはユンボ氏が休暇中に過ごすスコットランドの別荘、UKレオパレス21近くの「目利きの銀次」武蔵エジンバラ東口駅ビル2号店にて収録。

しかし予定時刻から2時間近く経ってもユンボ氏は一向に現れず、電話をかけてもユンボ氏のPHSはずっと圏外、ポケットベルはサービス終了、頼みの伝書鳩は羽を休める始末。

当然、所属事務所「家具とミュージック」にも問い合わせてみるものの、健康食品の定期購入を高圧的に勧める音声テープが無限ループで流れるばかり。
何か嫌な予感がしたインタビュアーがホームページ記載の所属事務所住所をGoogle Earthで確認した所、その地には中規模のケバブ屋さんが新規オープン。(おめでとうございます)

無情にも時間は流れ、いよいよ飲み放題コース制限時間終了が迫り、インタビュアーの不安と絶望がマックスに達した頃、2人の小ぶりな黒人用心棒を引き連れ、愛車である真紅のローラースルーゴーゴーでユンボ氏、いや「伝説」は現れた。

□ユンボ安藤(以下○)
ヤァヤァヤァ!イエーイ!
ワンワン!ニャーニャー!
クックドゥードゥードゥー!
ロケンロー!
ラブ&ピース!
餃子&ライス!
♪ハイっ喜んで!

□インタビュアー(以下●)
これはこれはご機嫌のようで、何よりでございます!
ユンボさん、本日はお忙しいところ本当にありがとうございます。

○まあまあまあ。ロックスターが忙しいのはいつものことだから。

●ちなみに今日はこの時間までどのようなお仕事を?

○いやね、今日は朝からずっと不二家ネクターの独特のあのとろみに感心していたんだよね。一心不乱に。

●はっ?

○あのとろみのしぶとさに常々、僕はシカゴ・ブルースを感じているんだ。

●それはお仕事ですか?

○いや、お金にはならないよ。ただこの奇行が行くとこまで行けば、ひょっとしたら国から支給が…。

●あっあそうですか…。
あの上着のロングコートを預かりましょうか?

○いや、下に着てないんで。

●…。

○着てもなければ、履いてもないんで。

●じゃまずは何かお飲み物を。

○君、君、聞いちゃダメよ。
ロックは聞いちゃダメなんだ。感じてくれたまえ。
キミは世紀のロックンローラーは一杯目にこの素敵なPUBで何を頼むと思うんだい?

●やはりテキーラとかバーボンとかですかね?

○正解はカルアミルクでした。

●そっそうですか…わかりました。
ただユンボさん、すみません、カルアミルクは飲み放題メニューには入っていなくて…。

○(首に下げていたヌンチャクを振り回し)
F××K!F××K!F××K!
F××Kドゥードゥードゥー!
ロケンロー!
ラブ&ピース!
トミー&マツ!
ピクピクピク。
♪逮捕しちゃうぞ!

●すみません、すみません!
大丈夫です。単品で頼みます。

○いいんだよ、いいんだよ。飲み放題メニューから選ぶから。

●すみません。

○君はさっきから何を震えているんだい?毛布はあるのかい?
いいかい?ロックンロールがルールを破っていい時代はもうとっくに終わったんだ。
ほら、ギターの神様、エリック・クラプトンも言っていただろ?

●何と?

○「わさび醤油もいけるね」

●いつ?

○いつとかじゃない。

●いつ?

○聞いちゃダメ。

●いつ?

○人違いかもしれない。

●だからいつ?

○私はそんな話はしていない!
とにかく私はルールを守らない奴と、遅刻が大っ嫌いなんだ!
ピルクル濃いめで。

●しかし今日は緊張しますね。なにせユンボさんは小さい頃からテレビで見ていた大スターですから。

○そうかい?緊張しないで楽にしていいんだよ。
昨日までの君にとっての僕はロックスターだったかもしれないが、こうして向き合った僕たちは友人同士なんだ。

●うわぁ感激です!

○ヘイ、ブラザー!

●ヘイ、ブラザー!

○早えよ!君からのブラザーは早えよ。わきまえなさい。

●すみませんでした。

○ところで僕出演のテレビ番組はどんなのを見ていたんだい?

●いっぱいありますが、印象深いのは野球賭博で逮捕された時とあの2回目で実刑の、それと鉄クズ泥棒の容疑が掛けられて、その容疑が一切晴れなかった時のニュース映像ですね。

○はいはいはい。

●あの往生際の悪さがなんとも…

○せえのっ!

○●ロッケンロー!

○今宵はいいインタビューになりそうだ。レッツREC!

●では早速ですが。

○席替えかい?

●いや二人なんで、その必要は…。
まずは2年4ヶ月の長きに渡るワールドツアーお疲れ様でした。

○あっ、その前にちょっとすまん。
(黒人の用心棒を呼びつけるユンボ氏)
「おい、ローラースルーゴーゴーが駐車禁止切られないようにしっかり見張っとけ!」
黒人用心棒「ソンナノシッタコッチャネエヨ!オトトイキヤガレ!コノクソニセサムライ!」

(顔を背けるインタビュアー)
(ユンボ氏のローラースルーゴーゴーで「目利きの銀次」武蔵エジンバラ東口駅ビル2号店を後にする用心棒)
(バツが悪そうにインタビュアーに話しかけるユンボ氏)

○えぇどこまで話しましたっけ?
南フランスの修道会で吟遊詩人に腹話術を教えてあげたら大変感謝された挙句、「娘をもらってくれないか?」って持ちかけられたあの夏の話でしたっけ?

●いえ違います、まだ何も。
とにかくユンボさん、2年4ヶ月の長きに渡るワールドツアーお疲れ様でした。

○いやぁ大変だったよ。
なんせ今回のツアーはパラグアイの西アスンシオンと中央アスンシオンを行ったり来たりするだけのワールドツアーだったからね。

●に、2ヶ所?

○何度も何度もね。

●…。

○在来線でね。

●…。

○まいったよ。Suicaは使えないしさあ。
で、鉄道職員と大乱闘ですよ。
職員全員に囲まれちゃってさ。あん時は流石に終わったと思ったね。
まあでも最後は空手のポーズで「オレはユン・ピョウの遠い親戚だ!」って叫んだらアイツら逃げ出したけどな。
しかし『チャンピオン鷹』は傑作だね。

●ちょっと地理的な感覚がわからないのですが、西アスンシオンと中央アスンシオンというのは距離的にはやはり結構離れているのですか?

○亀戸と錦糸町くらいかな。

●…。

○そんなにねえか。

●…。

○まあ、酔っ払ってても歩ける距離だね。
スープもボルシチも緑のたぬきも冷めない距離とでも言いますか…ええ。

●たった2ヶ所でワールドツアーと…。言い張る?

○ 君ね、ツアーは数じゃないんだよ、数じゃ。パッションなんだよ!
2ヶ所って言っても、ステージ上の8分間はいつでも完全燃焼だよ!

●8分?たった。

○2度のMC入れてね。

●全然、歌ってねえ。

○なんせ今回は14年ぶりのNEWアルバム『そこのけそこのけヤマト急便とはいからさんが通る』を引っ提げてのワールドツアーだったしね。気合い満タンだよ。

●アルバムの売れ行きの方は?

○おかげさまで。

●それは何よりで。

○今回は初回特典にYOASOBIのCDを付けたんだよね。

●いいのかよ!

○今回スポンサーについてくれた健康食品メーカーさんも全面バックアップしてくれたしね。

●(小声で)あそこだ。

○どうした?

●いえ。前作のアルバムから大分年月が経ってのNEWアルバムでしたが。

○そうだね、前作のアルバム『ボーキサイトって何だろう?』が世界的に評価されたんで、新作へのプレッシャーがね、どうしても。
流石の僕もそのジャイアントなプレッシャーに押しつぶされそうになってね。

●では曲作りでスタジオにずっと篭りっきりで?

○いや、女に逃げてたね。手っ取り早くさ。ナオンは最高のプレッシャーエスケープですよ。

●いやユンボさん、今の時代、女性に対してそのような言い方は良ろしくないかと…。プレッシャーエスケープっ。聞いたことないし。

○そうかい?じゃあカジュアルツール?

●ちっとも改善してないですね。

○まあとにかく見境無いとはあのことだね。
バンドメンバーからも「えっ!あんなのも行くの?」なんてさ。
あんなのも行くんだよね〜わたしゃ。
でもその経験をちゃんと曲にもしたしさ。そりゃミュージシャンだからね。 
ほら、アルバム7曲目のバラード『アカウントを削除しなければ…』あれね。

●何があったんだ。

○ほら、時代が変わってもロッカーの合言葉はいつでも「セックス・ドラッグ・カコナール」だから。

●ロックが抜けちゃってるじゃないですか!一番大事な。薬品2つも入ってるし。
「セックス・ドラッグ・ロックンロール」でしょ。
あっ女性関係と言えば大変聞きにくいんですが…。前妻との裁判が続いていて…。実際、離婚の原因というのは?

○ホントはあまり話したく無いんだけど、今日は話しますよ。
ロックスターにプライベートもマイナンバーも無いからね。

●2つ目は絶対あるでしょ。数字知らなくてもあるから。

○離婚の原因はDVですよ。DV。

●わ〜暴力は良くないですよ、ユンボさん。暴力は絶対ダメですよ!

○ホントだよね。何もあんなに僕を殴ることないのにね。

●ヤラれてたのか。
まあまあ、すみませんその話は置いときましょう。
ハッピーな話題として今年は新しい奥様との間にお子様も誕生して今は幸せなんじゃないですか?
奥様は古くからのお知り合いだそうで。

○そうなんだ。ギターのジョニーも、ベースのブザリアンシビリも、ドラムの長谷川ともみんなすごい仲良くてね。
でもホント子供はかわいいよね。

●パパ似ですか?ママ似ですか?

○ブザリアンシビリ似かな。

●えっ……。

(後編に続く)

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