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漫文駅伝『三浦マイルドの田舎暮らし』 第11回 三浦マイルド


第11回「素敵な先輩達」

どうも三浦マイルドです。

この8月はツーマンライブを精力的にやらせていただきました。

先ずは8月11日に、沼津よしもとラクーン劇場で、チャンス大城さんとの対決ライブがありました。

モノボケ対決や、エピソードトーク対決だけでなく、どちらが記憶力が良いかの暗記対決や、全力あっち向いてホイなどもあり、終盤は、私も大城さんも、大学生が論文を書く為の、実験モルモットの様になっておりました。

ライブの裏テーマが「人間の尊厳とは?」だった様な気がします。

この対決ライブの前には、「沼津週末寄席、太鼓判ライブ」という寄席がありました。

吉本内で、ネタに定評のある中堅芸人5組が、一公演で、2本ずつネタを披露をする催しとなっており、料金も1000円と破格です。

チャンスさんは、ネタが2本必要な事を知らされておらず、劇場到着後に、軽いパニックになっておりました。

私はチャンスさんの隣の楽屋におり、チャンスさんの「どうしよ?ネタ、至急まとめなアカン。ヤバいわ!」という声が聞こえてきました。

その約1分後、チャンスさんはフォークギターを弾き始め、八代亜紀さんの「舟唄」を一曲丸々歌いきりました。

私はこの日、チャンスさんのネタを全て見させていただきましたが、八代亜紀さんの、「や」の字も出てきませんでした。

チャンスさんは相変わらず、ツッコミどころ満載の、エピソードトーク製造機でした。

私が吉本の学校に行っていた頃、講師の方に
「ホンマに面白い奴は、歩いてるだけで、もう面白い」と仰ってましたが、チャンスさんはその域だと思います。

8月12日には、R-1王者中山功太さんとツーマンライブを私の地元広島で催しました。

ゲストの武井志門くんと二人で、遠路はるばる来ていただきました。

功太さんには、東京でも大変お世話になりました。

毎年夏には、功太さんと、その近しい後輩達とで旅行するのが恒例行事となっております。
10名前後の大人数で行く、とても楽しい旅です。

昨年は千葉県にある、後輩芸人の三戸キャップくんの親御さんが所有する別荘に宿泊しました。

そこで何と功太さんは寝小便を漏らしたのです。

ちょっと漏らしたどころではありません。
1.5ℓ位のペットボトルを床にぶちまけた様な水浸しになっておりました。

朝から大掃除です。

普段は温厚な三戸キャップくんの阿修羅の様な形相を今でも忘れる事が出来ません。

掃除がひと段落し、海に出発する直前に、私は用を足しにトイレに入りました。
そこで、こともあろうに、大便が便器にこびりついてるのを発見しました。

「これはまた三戸くんが嫌がるやつやなあ」と私は思いました。

そこで、大便がついた便器を綺麗にすれば良かったのですが、他人が汚したものを掃除する事に抵抗を感じ、私はそれを放置し、三戸くんに知らせる事もしませんでした。

楽しい海水浴に、これ以上、水を差したくなかったからです。

午前、午後と海を満喫し、私は仕事の都合で東京に向かう電車に乗りました。

功太さんや、他の後輩たちは、もう一泊する為に、宿泊先に戻りました。

電車に乗って約1時間後、武井くんがLINEを送ってきました。

「マイルドさんは朝、うんこをしましたか?」と。

私は「便器にクソがこびりついてた件かな?あれは俺じゃないよ」と送ると、
武井くんは「え?何も言ってないですよ。」
と返信してきました。

「便器にうんこがついてた事を何故、マイルドさんは知っているのですか?」
と、問い詰めてくるのです。

まるで私が誘導尋問に引っかかった犯人の様な扱いです。

こうして、今現在まで、三戸キャップくんの別宅で、大便を便器にこびりつけたのは私だという事になっています。

彼らは、私が犯人である事を立証できていないのにもかかわらずです。

それなのに、「やってないなら、やっていない事の証拠を出せ」と悪魔の証明を求めてくるのです。

功太さんからも「便器の掃除しなかった事はもう責めないから、俺たちの間柄で嘘だけはつかないでくれ」と言われました。

いや、前日に寝小便した人に、そんな事を言われたくないよ!

昨年の海での事件の真相は歴史の闇に葬り去られそうです。

私は犯人が名乗り出る事を今も待ち続けています。

そんな功太さんとの出会いは約20年前です。

芸歴の差は1年ですが、当時、功太さんは「baseよしもと」という若手劇場のレギュラーメンバーで、私はオーディション組でした。

ある時、ゴングショー形式のオーディションライブのMCを功太さんが務める時があり、私のネタを舞台袖で見ながら、凄く笑ってくださったのを覚えています。

オーディションライブのネタのクオリティーは、正直言って低く、MCという立場でも、ネタを見る人はあまりいませんでした。

楽屋で煙草を吸ったり、畳の上で寝転がったりしていて、合格の鐘が鳴った時だけ、舞台に出て、合格者と絡む。

それもネタを見ていないから、「誰と同期?」
「どんなバイトしてんの?」とか、表面的な質問ばかりでした。

そんな中、功太さんは、全出演者のネタをしっかり見る、数少ないMCの1人でした。

こういう所作から、沢山の事を学ばせていただいたと思っています。

お察しの通り、悪い事だけ書いてたら、本人の目に触れた時に、ばつが悪いので、良い事も少し書くという帳尻合わせです。

何事もバランスが大切ですからね。

功太さんとの広島ツーマンライブも盛況で、また来年も企画したいです。

次の日は、私の地元、江田島市にも来ていただきました。

便器に大便がこびりつく様な事件もなく、功太さんも島の民宿で小便を漏らす事もなく、平穏無事に過ごせました。

また、広島のお笑いを盛り上げる為に、力を借りたいと思います。

〈続く〉

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