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健康を動きでサポートする私が常に考えていること。

毎日、激しい雨が続き各地被害が出ているようですが、皆様が少しでも安全な状況でありますように。

もし誰かに、「くにこさんが活動をするうえで大事にしていることは何ですか?」と聞かれたら、「誰かの学びを最大化するために、自分ができることを積み上げていく努力を続けること。」と答えると思います。


A-Yogaを始めてからずっと、「動作教育を通した人間形成のお手伝い」というスローガンをもって、ここまで来ました。それは誰よりも秀でた動きができるアスリートたちや、体に疾病、障害、不安を抱えている方たちを見る中で、「動き」の大事さを身にしみて感じていたし、「動き」「動作」が人を支え、その人の未来への可能性を引き出してくれるという理由なき確信があったから。


現実社会を見回すと、「運動」「動作」=「私の人生には大して必要のないこと」という風にとらえている人が多いと感じることもいまだにあります。

(注:運動と動作は同じステージで語るにはちょっと無理がありますが、ここでは体の動き、体を動かすこと全般を意味すると思ってください)


「運動」=「がんばってやるもの」、「動作」=無意識すぎて自分の人生とは接点がないと思っている」という観点を少しでも変えていきたいという想いもありました。


ここでひとつのハードルが、教える人の器量。

トップのアスリートが優秀な指導者になれるとは限らないのと同じで、テストの点数が高いから、人に教えるのが上手とは限りません。


かつ、教える・教育というものをどのように考えているのか、も、とても大切だと感じています。


私にとって教育とは、「道筋を作るお手伝いをすることではないかと思っています。」


そのためには、

「相手を知ること」(その人が何を知っているのか、何を知らないのか、その人が何を考えているのか)

「その人が何を知りたいのか」を知ることが必要になるし、

その道筋は人によって少しずつ異なる。

だから様々な方法や戦略を考える必要があるし、同時に主となる科学や研究が示してきた道を共通して提示することはできる。


それが教育をとおして「道筋を作るお手伝い」ではないかと考えている。



ここ数日、先月にオーストラリアの疼痛学を軸とした活動をするNOIグループが開催したMaster Sessionの日本語への翻訳前の英語の文字おこしした原稿のチェックをしています。

*NOIのExplain Painの講座は、リアルとオンラインでこれまでに3回日本でも開催させていただきました(次回は、秋ごろ予定)。


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ただ動画を視聴するだけでなく、一字一句間違いがないかを確認するので、講師の言葉の選択、言葉のつなぎ方、全体の流れの中での言葉の意味をより丁寧に感じることができます。全部で19時間分くらいあるので、なかなかお尻が痛いですけど、、、。


NOIグループの特徴として、必ず「学び方を学ぶ」という観点の話が入ってきます。今回ももれなく学びの話は入っていて、その中で、メイン講師であるLorimer Moseley博士が、


「教育が戦略ではなく、やっていることの目的になっていませんか」

“Has your education become the goal of what you doing?”, rather than the strategy.”


つまり、教育するというその行為が目的となり、教育そのものをその状況を変えるための戦略として使っていない人が多いのではないか、、、と Dr. Moseleyは問いかけています。



「学ぶことが目的となり、教育が戦略であると、まず最初に理解し、または考えなければならないことは「実際に彼らに学んでもらいたいことは何なのか?」」

”When learning becomes the goal and education is the strategy, and the first thing we need to understand or to think about is “what is it, that you actually want them to learn?”


Dr. Moseleyは、Learning Objective=学習目標が何かを25年もの間、常に何度も多くの研究者とともに考えてきたとも語っています。


「(戦略を身につけて)、我々がより良い教育者、つまりは教育をすることが目的であるということから離れた存在になることが、あなたの患者さんがより効率的に学びを身につけることにつながります。教育が私たちの目的であるという考えそのものは、目的に到達するための戦略ではありません。教育と学びの間には大きな違いがあるということを、ヘルスケアのプロとして理解することが非常に重要であると最近気が付いたのです。」

” your patience to more effectively embed learning, which means to be a better educator but to move away from this idea of education being the goal of what we do. It's- it's not the strategy to reach a goal. It's quite a big difference between education and learning, and reasonably recently, I think this is really struck me as- as a really important thing, as a health professional to understand.


このように1日目の冒頭で話をしていました。

私の訳もわかりづらいので、話が見えない人もいるかもしれませんが、、、。


ここでDr. Moseleyが伝えているのは、ある患者さん・クライエントさんが目の前にいて、その人に「現代の科学が証明している痛みについてや体について」の知識や情報を伝えるのではなく、その人自身がその人の望む状況にたどり着くために、その人の学びをより良くするために、どの戦略を使うのかを教育する人間として考えることが大事である、、、ということなのだと私は理解しています。


そして科学や研究が教えてくれているのは、様々な戦略を実験した結果、どのパターンにおいて効果の高いものがどれであるか、、、を示してくれている。


私たちは、そういった背景や情報を理解しながら、目の前にいる人にとって、学びが最大化するための環境つくりを心がけることが大切なのだと再認識しました。


その人にとって最大の学びとは何か?

この場においての学習目標は何か?

それを明確にして相手との時間を過ごすことが大事であること。


A-Yogaで常にみんなと共有していること。

「その時間を通して、クライエントさんにどんな学びを提供したいのか。」


目的の共通認識(痛みを軽減したいのか、前屈ができるようになりたいのか、股関節の動きを楽にしたいのか、生理痛を軽減したいのか、、)をして、そのうえでその目的を達成するために、どのような戦略をとることができるのかを考えるのが、指導する人間の役割である、、、と。


そして学びを定着させる、学びを最大化するには、反復はとても大事。でもただ同じことを繰り返せばいいのではない、、、。


反復に関しては、運動制御、知覚と行為という観点から動作をひも解いた、ニコライ・ベルンシュタインの著書である「デクステリティ 巧みさとその発達」(金子書房)の最後に、訳者である工藤和俊先生があとがきで書かれている文章にこう書かれている。


「ベルンシュタインはまた、運動学習における反復練習の意味を見抜いていた。すなわち、繰り返しは、機械のように同じ動きを再現するために行うのではない。繰り返しの目的は、課題解決のプロセスを反復することにより、よりよい解決策を編み出す能力を獲得することに他ならない。学習の目的は、過ぎ去りし過去の再現ではなく、来るべき未来への準備だ。このことは同時に、多様な解決のプロセスを含まない反復練習は、適切な運動の学習につながらないことを意味している。」


「世界は時々刻々と変動している。変化に満ちた環境の中では、ある瞬間に「最適」であった動作でも、次の瞬間にはその場にそぐわない不適切な動作になり得る。したがって、ある一定の運動パターンを記憶し、固定するという運動問題の解決方法は、多様な環境の下ではむしろ不利益をもたらすことになる。予期せぬ新奇な状況に置かれたときに必要となるのは、記憶しておいた動作をそっくりそのまま再現する能力ではなく、その状況に適した新たな動作をその場で作り出す能力だ。」


なんとも美しい文章!

(工藤先生、素敵です~)


全てはそのもの(運動プログラム、トレーニングプログラムなど)をどういう観点で使うか、その選択からスタートするのだと思いますが、動作・動きを本当の意味で、人の人生の中での重要なものとして学びを提供するならば、同じことを同じように繰り返すことに疑問を持つことも大事だし、その動きを未来に向けて使うということはどういうことができるのか、、、を深く深く考えることが大切なのではないかな、、、と思う。


動きの反復で、痛みが増す、ケガをするというのは、ベルンシュタインが語っているこの考えに反することをやった結果である、、、と考えてみてはどうだろうか。


「その動きの指導が、その人の人生を豊かにするのかどうか。」

その戦略を立てられる人がこれからの時代さらに求められていくのだと思う。


太陽礼拝と月礼拝からひも解く動作の秘密。的な講習を、10月初旬に仙台で開催される、LINKREASE Festaでさせていただきます。講義と実技、いろいろな角度から、ヨガやトレーニング、一般の方の運動に取り入れ始めているスタンダードなシークエンスを、私なりにひも解いていきたいと思います。


すべての人の健康に携わる皆様とご一緒できたらうれしいです!

ネットワーク作りましょう!!!


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