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なぜ変革を起こすためにリーダーシップを語る必要があるのか?

今日の京都は最高にいい天気です。

空が青すぎて、比叡山が空の青に引き込まれそうです

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昨夜は、JATO(Japan Athletic Trainers' Organization)主催の、オンラインラウンドテーブルイベントでした。

「ヘルスケアプロバイダーとしてのアスレティックトレーナーとマネージメント・リーダシップスキル」がテーマでした。

スピーカーは、WFATTでお会いした人も多いと思いますが、NATA会長、Northwestern大学のATサービスディレクター、Senior Associate Athletic DirectorのTory Lindley氏。


そして、Seattle Mariners名誉アスレティックトレーナーであり、長年マリナーズのヘッドトレーナーを務めたRick Griffine氏。リックとは主人が在団していた時からのお付き合いなので、考えてみればもう17年くらいの時間が経過しています。またこうして一緒にお仕事できることは何よりもうれしい。


さて、ここ最近はJATOのイベント屋として裏方をさせていただいていましたが、今回はいち会員としてこのイベントを楽しみにしていました。


同時に、「なぜ今、このテーマなのか、、、」と自分なりにも考えていました。

今、世界中のスポーツ現場では、Covid-19の活動自粛から少しずつ活動を開始しています。かなり早い段階から世界各国のプロスポーツ組織や団体は、Covid-19の対応についてのガイドラインを作成し発表しています。


他国の各団体の初動の速さ、それは日本ではなかなかみられないものでした。日本の組織の中でも、海外との接点がある組織(NSCAとか)はかなり早い段階で本国との連携もあり、ガイドラインが発表されたりしていましたが、プロ球団、プロ組織、またはナショナルレベルの組織においてのその意思決定、作成、発表は遅々として進んでいない、というか、的確なインプットを元に、適正なガイドラインの作成が、活動復帰スピードを先読みして行われていたか、、、というと、様々な状況を加味しても、少し動きは遅いと感じることが多かったです。


私自身、もうスポーツ現場にいないので、チームに対応する、チームとしての運営、マネージメントレベルと現場レベルの対応の温度差などを実感することはあまりないですが、もし自分が現場にいたら、、、と思うと、かなり手探りの中で安全の確保にストレスを感じているだろうな、、、と思います。


今回のテーマは、この非常事態時において、ATがどうその輪の中にはいり、より適切な判断をするために必要な情報の共有と、現場の声を反映させることができるか、、、を考えたときに、必要なテーマなのだと実際に昨夜の話を聞いて思っています。


緊急事態時、または新たな問題が起こったときに、その対応策やガイドラインを作成するときに、誰がアドバイスや議論に入っていたのか、、、というのも非常に大事なポイントになっていると思うのですが、その場にATが入っているのか、ATの意見が反映されているのか、、、というと、おそらく日本においてはまだまだそのレベルにはないといろいろな話を総合して感じることが多いです。


そこで我々がその意思決定の場にいないのは、「あたりまえ」という意識を持つのか、我々にも「できることがある」と思い行動を起こすのか、が道を大きく変えると感じているのですが、そもそもなぜ我々が行動を起こすのか、、、を個々が考える必要があると思っています。


我々がガイドライン作成や状況に応じて意見を求められていないとしても、我々ATは「すべての関わる人の安全と健康を担保する」ことを役割の一つとしています。つまり、そのために何ができるのかを考えて行動することが大切で、もしそれが担保されない状況があるならば、自分に何ができるのかを考えることが大切。


昨夜のイベントの前に、ToryがNATAの会員にむけて書かれたNewsletterが共有されました。


その文章が本当に秀逸で、彼のインテリジェンスと誠実さに益々尊敬の念を深めたのですが、その内容を抜粋し意訳すると、


「多くのATが、自分たちにはその権限とリーダーといえるような肩書も持っていないというけれど、すべてのATは常日頃からリーダー(先導役・まとめる役割)として歩みを進めている。

人は、信頼できる人をフォローし、そこに肩書や組織内における階層など関係ない。人は一貫した人、言行一致、援助に焦点を当て、真の思いやりを表す人をフォローする。これらはまさに成功しているATそのものの姿であり、それこそがリーダーと言えるだろう。」


彼らの会話の中で、Rickが言っていたのは「リーダーとは、生まれ持った資質ではなく、役割とともに身に着けていくもの、その役割になっていくのだ」と。


そしてそのリーダーとして大切なのは、共に歩んでくれる人がいること。そのためには、誠実に信頼される人間であること。


再びToryの文章より、なぜATがこの状況下で最適な人材なのかという問いに対して、

「緊急事態において、私たちの臨床スキル、トレーニング、経験、感情的知性発達、そして導く能力を自然と身につけてきたATは、このカオスの真っただ中において方向性や落ち着きをもたらすだろう。

我々は、計画をし、新しいポリシーを作り上げ、不測の事態を想定し、他者の強みを最大化し、ATがもつネットワークを最大限に生かし、我々のヘルスケアに関連した専門家とのネットワークを使い、そして我々はそれを実現させるのです。」


我々ATは現場(スポーツやクリニックや工場や、、、)の人間であり、現場にかかわるすべての人の安全と健康を満たす役割を担っている。同時に、ヘルスケアプロバイダーとして、ポリシーメーカー(Policy Maker/Management)が最良な判断をするために、必要となる情報について意見を求められたら、提案できるだけの情報とネットワークを持っている。それは日本で働く多くのATの人たちが持っているスキルセットであると思っている。彼らの持つ情報と、現場感を利用しない理由はないと常に思う。


再びTory

「ATは緊急事態におけるマネージメントを実現する、なぜなら我々は何がもっとも大事かという優先順位を理解している。緊急事態において、すべてが大事とはならない。同時にその状況下で我々はすべての決定に必要な情報を持っているとは限らない。その挑戦的な決断ですら素早くする必要があり、それはスポーツのフィールドやコートにおけるトラウマ(外傷性)傷害の評価で同じような状況で我々はそれを経験している。そして組織立ったリーダーは、その計画を遂行するためにグループに力を与える能力を持ち備えている。」


優先順位、チームとしての意識、そして緊急時における適正な判断をするという普段からの意識。


これらはATが叩き込まれてきていることであり、他のチームメンバーと共にその現場にとって最良の状況を作り出すことができると心から思う。

他者を敬い、他者を思いやる。その心がATの土台となっている、そうToryは語っている。


「プロフェッショナルはそのふるまい・行動によって敬意を手にする。リーダーシップは遺伝的なものでも、性質でも肩書でもない、行動そのものなのである。」

「あなた自身はあなたの身近な人にとっての最も重要なリーダーであるのだから、あなたが持つ唯一の選択は、あなた自身が最良のリーダーとなるのかならないのかだけである。」


我々は世界全部のリーダーになる必要はない。目の前にいる、自分の周りにいる人にとってのリーダーとして生きることを決めればいいのだと思う。


終わってからRickに、その一歩が踏み出せない人は、最初のアクションはなに?と聞いたら、「相手に意見を求めることから始めればいい。」と、返ってきた。


人は、自分の存在を知ってもらいたいとき、自分が知っていることを相手に伝えたいとき、たいてい自分の意見を相手に伝えることを選択する。でも相手との信頼のドアを開くのは、自分の意見を述べることではなく、「相手の意見を聞く」ことにある、そう言っているのだと理解した。


たとえ自分がその状況に関して意見があったとしても、まずは

「Covid-19の今後の対応についてXXが考えられると聞いたのですが、あなたはどう思いますか?」と。

もし相手がそのことについて何か思うことがあればきっと答えてくれるだろうし、そのうえで相手が「あなたはどう思うの?」と聞き返してくれるかもしれない。


全てはすべての人が幸せにスポーツそして健康活動を継続するために。

全ての人がそれに寄与する責任がある。


そんなことを再度学ばせてもらった時間だった。

同時通訳も入り、1時間という短い時間でもっと聞きたいこともあったと思うけど、あそこで大事だったのは、「なにをどうする」という具体的な方法ではなく、「私だったらどうする」を彼らが投げかけてくれたのだと思う。

「何をどうするか」はすでに様々な形で情報が提示されている。自分でできるのはその情報をネットワークを最大限に使って、理解し精査すること。これからも予期せぬ事態が起こる。だから彼らの今のやり方を知ったところで、自分に当てはまるとは限らないのだから、、、。


大事なのは、「自分がなぜそれを、そしてどういう意識で行うのかを決めなさい」という彼らの暗黙のメッセージだったのだと思う。

Toryの全文はJATOのサイトでアップされるみたいなので、ぜひ立ち寄ってみてください!

Thank you, Tory, Rick and JATO!

#JATO_ATC

#ヘルスケアプロバイダー

#リーダーシップとは信頼である

#大事なのは方法ではない在り方である










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