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カーコラム「ISUZU PF60型ジェミニZZ Rの思い出 Part.5」

 ジェミニZZ Rセダンの車両重量は995kg(ドライ)である。G180WE型エンジンの最高出力が130PS(グロス値)だからパワーウエイトレシオは約7.65kg/PSである。

 当時の出力表示はグロスなので、現在のネット表示に換算すれば恐らくは105~115PS程度といったところだが、それでも当時のライバルであったトヨタ系ツインカムエンジン1.6ℓの2TG-EUや、2ℓの18RG-EUエンジンと比較すればかなりスポーティーなパワーユニットだった。

 G180WE型エンジンの鋭いレスポンスとトルクフルなエンジン特性は、一般の走り屋のみならずモータースポーツ界からも熱烈な歓迎をもって迎えられた。

 当時の国内自動車業界はどこのメーカーも53年排気ガス規制をクリアするために青息吐息の状況だった。排ガス規制をクリアすることが困難な一部のスポーツユニットは徐々にラインアップから消え行きつつあった。

 運良く生き残これたスポーツエンジンも、バルタイやカムプロフィールの変更、コンピューターによる抑制、高抵抗の触媒やエキマニの装着といった一連のディチューン化を余儀なくされ、牙を抜かれた獣「名ばかりの・・・・」へと去勢されていった。

 コンパクトなボディにパワフルなエンジンを搭載するジェミニZZに最も関心を示したのは全日本ラリー選手権を戦うトップコンテンダー達だった。

 日本のラリーコースはストレートが短く高低差が激しい山岳コースで戦われる。そのため、ラリー車のエンジンには低・中速域での実用トルクと、どの回転域からでもリニアにパワーがついてくるレスポンスの良さが要求された。

 ZZに搭載されたG180WE型エンジンは、その両面を兼ね備えた当時最も理想に近いパワーユニットだったのである。

 ラリーへの先鞭をつけてのは、神奈川の強豪ラリーチーム・アッスルからエントリーした金子繁夫/相馬和夫のベテランコンビ。初陣は1980年の全日本ラリー選選手権のシーズン中盤戦となった鳥海山ラリーである。

 ジェミニZZ Rはデビュー戦となったこのラリーにおいて、なんとロングの上りセクションにおいて当時ラリー車としては完熟期を迎えていたTE71軍団にキロ0.5秒から1秒もの大差をつける異次元の走りを見せつけライバルを圧倒! ほぼ全SSで一番時計を叩き出し衝撃的なデビューウィンを飾った。

 このデビューウィンを皮切りにZZの快進撃が始まる。シリーズ中盤以降、ジェミニZZを駆ってほぼすべてのイベントを制した金子・相馬組ジェミニZZ Rは、デビューイヤーにして全日本ラリー選手権チャンピオンのタイトルを手中に収めた。

 これが後の世にいう 「ZZ ショック」 である。


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