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【#一日一題 木曜更新】 さびしいね星人

山陽の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字程度で書き、週に1度木曜日に更新します。

ここのところ、ちょっとうんざりしている。私の状況が「さびしい」に違いないと、まわりの人からさんざん心配されている。母たるもの、子どもが進学や就職で家を出る時はさびしそうにしないといけないらしい。

毎晩ジムへ通っていると、顔なじみさんから「もうすぐ出ていっちゃうのに、夕飯一緒に食べなくていいの。さびしくなるんだから、夜は家にいたらいいのに」と心配される。単なる軽口だとわかっているものの、顔を合わせるたびに言われると辟易する。

実家の母と話していると、「さびしいでしょう」「いた人がいなくなるとさびしいものだから」「少し経ってからさびしくなるのよ」とたたみかけられる。あー、そういうもんかねとか、そうでもないんじゃないと返すと「絶対そうなんだから」と、なんだか母は嬉しそうに強く言う。

さびしいからさびしいでしょうさびしくなるよさびしいにちがいない。

ここまで先回りして言われると何だか不愉快で、この気持ちは何だろうと紐解いてみると、あれだ、あれ。「かわいそう」と言われる状況にとっても似ているのだと気が付いた。本人にそんな気がないときに言われる「かわいそう」ほど、気持ちがざわつくものはない。

実際にさびしいんだろうか。

子どもが家を出る状況がさびしいということに、実はあまりピンと来ていない。人数が少ないってことは家事は減るし、そうなると仕事もはかどりそうだし、書き物をする時間も取れそうだ。仕事が捗って稼いだ分が家を出た学生の子どもの生活費になるわけだけど、お金で解決できるならそれはそれで自分の生活力をほめたたえようではないか、なんて考えている。勤労の喜び。

でもそこで「別にさびしくない」と意地になって言い放つもの大人げない気がして、さびしいねえ星人には「そうねえ、もうすぐねえ」なんてさびしがっておく。空いた時間でお金も稼げるし遊ぶ時間も増えるのだぞ? とは、口が裂けても言わずに、えへらえへらと笑っておく。



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