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【アーカイブ】日本公開45周年・世界最高水準の『死亡遊戯』をスクリーンで…

2010年10月27日、「東京国際映画祭」へ10数年ぶりに行った時のことを記します。以前は渋谷東急が中心だったんですが、その時は六本木ヒルズ内のTOHOシネマズがメイン会場となっていました。
この日向かったのは、ブルース・リー(李小龍)生誕70年記念の特集上映。メインは『死亡遊戯』東宝東和バージョン。これは文字通り日本で1978年に東宝東和配給により全国公開された時のプリントをそのまま蔵出ししてきたものです。

『死亡遊戯』日本公開時ポスター画像

現在DVDなどで見られる『死亡遊戯』は、"怪鳥音"をリーの弟子だったクリス・ケントが吹き替えており、正直違和感ありまくりだった訳ですが、東宝東和版は、過去の公開作品(主に『ドラゴン怒りの鉄拳』)からリー本人のそれを抜き出してフィルムにアテ込んでいったのです。当時このバージョンはソフト化されておらず、「水曜ロードショー」や「月曜ロードショー」でオンエアされた際の2ヶ国語版でしかお茶の間には披露されていませんでした。しかし2012年にパラマウント ホーム エンタテインメント ジャパンから「死亡遊戯 エクストリーム・エディション」と銘打たれたブルーレイディスクが発売され、遂に陽の目を見たのです。

『死亡遊戯』エクストリーム・エディション

また、東宝東和版のもうひとつの見せ場は、クライマックスのレッドペッパータワーでの第二の闘い、つまり韓国人武道家チ・ハンサイ(池漢載)との場面。ビデオ版やDVD他のバージョンではカットされていたり、音声が抜けて口パク状態がほとんどなのに対し、東宝東和版では広東語の台詞が吹き込まれ、英語の字幕が付けられています。ただ、前述の通り池漢載は韓国人なので、オリジナルの台詞はハングルだったはずなのですが、当時の東和スタッフは、さすがにそこまで気が回らなかったのでしょう。
結局、池漢載との闘いの全容については、『G.O.D 死亡的遊戯』や『ウォリアーズ・ジャーニー』まで待つことになる訳ですが、それにしてもこの闘いは"ヌンチャク"や"巨人"といった映画的ギミックにあふれたイノサント戦やジャバール戦に比べて、異様に実戦度の高い緊迫感あふれる場面に仕上がっているのは特筆すべき点だと思います。

映画終了後は、宇田川幸洋氏と江戸木純氏のキネ旬『ベスト・キッド』対談コンビによるトークイベント。ここでは江戸木氏が持参した1974年発行のケイブンシャの「死亡遊戯」特集本に収録されている宇田川氏がノベライズした小説版「死亡遊戯」が話題に上りました。

ヤング・アイドル・ナウ別冊号「ブルース・リー遺作 死亡遊戯」表紙 (ケイブンシャ刊、1974年)

この本は『死亡遊戯』が日本公開される4年も前に出版されており、当時のファンたちが熱狂したのもうなずける今見ても画期的な1冊です。ほかにも先日惜しまれつつこの世を去った日野康一氏との競作ともなった「ブルース・リーの伝説」の執筆時のエピソードも披露され、まだまだブルース・リーにまつわる隠れた話は尽きないのだなぁと感慨を新たにしました。

この時の東宝東和版『死亡遊戯』の蔵出し上映が、本当に意義あるものだったかどうかというのは、ファンそれぞれ様々な意見があるとは思います。しかし、いずれにしろめったにない出来事でしたし、今後『燃えよドラゴン』のディレクターズ・カット版同様、この東宝東和版が全国の劇場でリバイバルされ多くのファンの眼にふれることを望まずにはいられませんでした。

※本稿は、2010年10月に寄稿した旧外部ブログの内容に加筆・修正を加えたものです。

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