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無数の死体の上に、光る巨大な海月が浮かんでいる。
海月の傍には、縛りつけられた女性。そして、血を流し倒れる男たち。
磯のにおいがする。否、人間の血液が海水のような臭いがするのだ。
ここは、"事件"を起こした女を"教育"する、秘密の部屋。
ひどい暴行を受けたようで、女の全裸の肢体には無数の痣と、幾度となく繰り返された陵辱の痕跡。
顔は何度も殴られ原形を留めていないのであろうか、頭陀袋が被されている。
その上には美しかった頃の顔写真が貼られている。
今をときめく、人気アイドル。
彼女の背中から後頭部にかけてがパックリと割れており、中身はカラッポの空洞になっている。
──ぉぉ、ぉぉ、
海月からは、呻くような声が漏れる。
よく見るとそれは海月ではなく──巨大な脳に脳髄と腸がぶら下がった、異形。
無数の腸を倒れる男たちの頭部へ伸ばし、脳を吸い出す。男たちが目と鼻から血を流しガクガクと痙攣し続ける度に、海月の脳は大きくなる。
「君を助けに来たんだが」
血溜まりの中に、何者かが入ってくる。
「すまない、手遅れだった」
それは、寄居虫のようなシルエットの少女であった。
生気の薄い顔。小柄な身体と同じぐらいの箱を背負っている。
手には、長さ2mの細長い柄の先端にティッシュ箱程度の大きさの鎚のついた、ハンマー。
「ふっ!」
少女はハンマーを振りかぶり───真下へ振り下ろす!
反動で少女の身体が浮き上がり、鎚から火花が噴き上がる。ハンマーはジェット加速し、少女を中心に猛然と8回転!
遠心力のまま、ハンマーを海月へと叩きつける!
肉がひしゃげる重い音。海月からは真っ赤な血飛沫が舞い、金切り声が上がる。
一撃の反動で少女は天井に着地。再び跳躍。ハンマーからの噴炎で今度は逆回転する。
血風火花が舞い散る中、回転に合わせ明滅する室内は、まるでコマ送りの白黒アニメのようだ。
少女の渾身の殴打が、海月を地面に叩きつける!
【つづく】
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