TSミュージックにキンプリショーを見に行った話

Twitterに書き出すと長くなるので、こちらにまとめます。

事の起こりは数日前。Twitterのタイムライン上で「キンプリ(King of Prism、知らない人はまずぐぐる)をテーマにしたストリップショーがあるらしい」という文言を目撃。千秋楽は6月10日、そして僕が仕事で上京するのも10日。

「そういや、今までストリップって行った事ないし、これはいっちょ社会勉強してみるか」などと考えながら深夜バスで上京した僕は、新宿に到着してその日の仕事の最終確認を終えると、TSミュージックに向かいました。

TSミュージックは歌舞伎町にある雑居ビルの2F。いい年した男でも入るのを若干ためらうスポットに足を踏み入れると、中はT字の舞台を中心に席が50程。そこには既に常連さんが6,7人おられました。

初めて行った常連だらけの場所で感じる特有の緊張感を受けつつ、1回目のショーが開演。

基本的に一人の舞姫さんのプログラムは3,4曲。そのあとポラロイド撮影を経て、オープンショーという構成です。曲はだいたい1テーマに沿っていて、チャイナ服を着た舞姫だったら中国っぽい曲で統一されているという感じ。

舞姫さんによってはポールダンスのテクニックを発揮する方もいれば、表現力で世界観を作り上げる方など色んなタイプの方がいましたが、前記のチャイナ服を着た舞姫さんが泰葉の「フライデーチャイナタウン」で色々露わになる光景はちょっとシュールさすら感じました。

ダンスが終わるとポラロイド撮影タイムに入りますが、現代ではデジカメ撮影をして劇場でプリントも行ってくれます。そこでのやりとりがファンとの交流の場になっているようで、1回目では「おはようございまーす」という挨拶も。入れ替え無しで残る方々とのエール交換といったところでしょうか。

そして、撮影が終わるとオープンショーへ。先ほどまでよりもオープンにして踊られるわけです、はい。ここでの衣装は本編と違って、比較的自由な服装。ファンの方が作られたと思しきオリジナルTシャツだったり、某黄色い五男のユニフォームだったりして、「ああ、だからポラ撮影の時に全力バタンキューが流れてたのか…」などと気づく事も。

1回目を見るにあたって、やはり劇場全体の動きに注目せざるを得ないというか、お客様に注目してしまうわけで。噂には聞いていたタンバリンを鳴らす方々もいらっしゃったり(バスドラムぐらい低音の響くタンバリンを持参されてた方も)、何本ものテープを投げ入れる方もいらっしゃいました。その方々は仕事を全うするあまり、ダンスはほぼ視界に入っていないっぽいのですが、自分の役割を全うして推しに貢献することこそファンの務めという精神が垣間見えました。勿論、局部をガン見する事に全力のお客さんもいます。そういう場所ですから。

で、香盤は進んでいくのですが、1回目の途中で僕はある重大な事実に気付くわけです。

それは、1回目はキンプリショーを演じるお二人(栗鳥巣さんと渚あおいさん)のソロが上演されるため、キンプリショーが開催されるのは2回目と4回目のみという事。

そもそも東京にはライブの仕事で来てるわけで、状況的には1回目しか見られないのです。これはどうしたものか…。

休憩中にTwitterで情報収集をしたところ、4回目のキンプリショーが行われるのは23時09分頃との情報が。ここで僕は思ったわけです。

「これなら間に合う」

ライブが行われる中野の劇場はだいたい16時入りで、撤収時間は22時。会場は中野なので、新宿に23時に戻ることは可能。そして、TSミュージックは一度入れば外出も自由。つまり、仕事に行って再びTSに戻ればワンチャンスが!

というわけで、ライブの仕事を終えた僕は23時前に何とかTSに戻ってきたのですが、そこで僕が見たのは劇場の入り口まで観客が溢れている光景でした。

昼には10数人だった会場が、23時の時点で100人近い観客で埋め尽くされ、しかも8割以上が女性。あの昼の味わい深い情景と全く異なる状況に戸惑いつつも、何とか隙間をぬって入場。これは撮影も絶望的か…と思っていたのですが、そこに同じく初めて来たであろうお客様と常連のおじさんの会話が聞こえてきました。おじさん曰く

「せっかくなんだから、前に行って撮影してきた方がいいよ。滅多にないんだから」

そりゃそうだ。ここまで来たんだから、楽しみ尽して帰るのが大人ってもんだ。そんな決意を胸にキンプリショーの始まりを待ちます。

そして、ショーの幕開け。既に場内は何十本ものペンライトが光り、暗転すら意味を成さない明るさ。そして、明転した瞬間に巻き起こるヒロ様コール!

すげえ、完全に応援上映そのものじゃないか!

そして、1回目には神秘的な踊りを披露していた渚あおいさんが、ヒロ様になりきっている!後から現れる栗鳥巣さん演じるコウジとの寸劇に沸き起こる黄色い歓声!これが本物のプリズムショーか!!(違

本家の曲とともに披露されるヒロ様のキレッキレなダンスとコウジの独創的なパフォーマンス、そして本家同様のコール。この空間全てがショーとして完成されていて、ここは歌舞伎町の雑居ビルではなく横アリではないのかと錯覚しそうになります。

ですが、メインはあくまでBL。そこから怒涛の薄い本展開へ…。

何故か媚薬をソフトクリームに混ぜてコウジに食べさせるヒロ様、そしてコウジは暴走モードに突入し…もう100万回は見たようなベタベタのBLなのですが、それを生身の女性が男装で演じている。しかも、周りは黄色い歓声と無数のペンライト。性別とか常識とかそういう垣根が全てぶっ壊され、そこにあるのは膨大な萌えの熱量のみ。2.5次元のBLは確かに存在しましたよ。ちなみに、お尻からハチミツは出るものじゃなく、入れるものなんですね。勉強になった…。

一戦を終えて、結局ラブラブなんかい!という、これまた100万回見たようなオチでショーの本編は閉幕。暗転したその瞬間、栗鳥巣さんは号泣していました。

後から聞いた話だとプリズムショーが行われているという情報が広まったのが楽日の3,4日前。そこから驚異的な拡散でこの楽日を迎えたわけで、そのフィナーレがこんな最高の空間となったことに落涙するのも無理はないでしょう。奇跡を起こした当事者の涙にこちらもグッと来てしまいました。

そして、ヒロ様からの言いたいこと(からの「なーにー?」)を経て、撮影会へ。

先ほど、性別の垣根がどうとか言いましたが、前言撤回。僕は生涯これほど女性を羨ましいと思ったことがありませんでした。ヒロ様とコウジからファンの方々へのサービスの数々!!その場でちんこ千切り取ってやろうかと!!

そして、ファンの方々の圧倒的な妄想力!「その手があったか!」という構図で撮影する方、さっきまで振ってたペンライトを違うサーベルとして利用してもらう方、シンくんのお面を持参する方……ステージが高すぎる!自分が考えた至高のBLを撮影出来る機会なんて他にないとはいえ、自分の妄想力がいかにありふれたものかを痛感してしまいましたね…。

1時間半にわたる撮影会ののち、最後のオープンショーはもう一人のオバレによる「EZ DO DANCE」で熱狂のうちに閉幕。次回はカズキとアレクという予告なんでしょうか(多分違う)

というわけで、長々と書き綴りましたが何が言いたかったかというと、要はこんな舞台体験は二度と味わえないんだろうなって事です。初めての異空間、ハイポテンシャルなパフォーマンス、出演者と観客の一体感、男装の女性がBLを演じる背徳と恍惚、ストリップ劇場がアイドルショーの空間に変わるという魔法、何より栗鳥巣さんと渚あおいさんがショーに対して真摯に、そして元ネタに対し尊敬と愛をもって全力で取り組んでいたこと。その全てが揃ったこの時にしか味わえないプリズムの煌めきだったんだと、振り返って思います。

(追記)

ふと思ったのですが、今回のキンプリショーと春風亭吉好さんの「落語松」には通じるものがあるような気がします。

(註:この場合の「落語松」は春風亭吉好さんが作った、おそ松さんをテーマにした改作落語のこと)

栗鳥巣さんはキンプリ以前からBLショーを不定期で開催しており、吉好さんもヲタク落語家としての活動を精力的に行っていました。その地道な活動のひとつとして人気アニメをテーマに作品を作ったところ、SNSを通じて爆発的な拡散が行われ、多くのファンの支持を受けることとなった。ここで重要なのは、本人たちはあくまで”好き”の延長線上で作品を作っている点。当然、狙ってブームを起こせるような性質のものでもないし、にわかのメッキだとすぐにはがれる。それまでの経験と原作愛による作品がタイミングと重なった瞬間、大きな波が訪れるのではないでしょうか。

(追記終わり)

それと、今回ストリップを見に行く男性の心理も少し理解できました。舞姫さんは朝イチで客が10人だろうが全力でショーに挑んでいる。そんな女性を応援したくなるというのも分かる気がします。プリズムショーの公演を全日程見に来た男性ファンにあおいさんが感謝を述べる一場面も心温まるものでした。

冒頭で1回目の公演を見たと書きましたが、そこでも普段はなかなか見られないようなショーが見られましたし、何より平時のショーを見た上でプリズムショーと見比べられたという点では、1回目を見ておいて良かったと思います。普段のあおいさんのステージングは実に神秘的でしたし(BGMがangela『Shangri-La』で軽くテンション上がった)、栗さんは「おじいさんと¥交する少女」というテーマのパフォーマンスに振り切っていて見ごたえがありました(ポラ撮影のBGMが筋肉少女帯「じーさんはいい塩梅」ということは、おじいさんは腹上死したのか?)

ファンの人たちにとって劇場は聖域であり、無闇にお邪魔するのも失礼に当たるのかもしれませんが、また違う機会に足を運んでみようと思った次第です。

(了)














……今まで見た数を一日で塗り替えたな、うん。

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