見出し画像

【今日の1問】刑法(12)|間接正犯

今日は「令和4年予備試験 刑法〔設問1〕」のうち「ブドウの万引き」を解いてみるぞ!

(問題文)
https://www.moj.go.jp/content/001376761.pdf#page=2


(答案例)

第1 設問1について
1 窃盗未遂罪(243条・235条、43条本文)の成否
⑴ 本件ブドウは、店長Bが事実上支配して占有しているものであるから、「他人の財物」(235条)、すなわち、他人の占有する財物にあたる。
⑵ Xが、是非善悪の判断能力の十分でない長女Y(6歳)に本件ブドウを万引きさせようと考え、ちゅうちょするYに「いいから早く行きなさい。」と強い口調で指示した行為は、他人を道具として利用し自己の犯罪を実現するもの(間接正犯)といえる。そうすると、Xが上記の指示をした時点で、「窃取」(235条)の「実行に着手」(43条本文)したということになりそうである。
 しかし、「実行に着手」とは、構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為(実行行為)を開始することである。そして、間接正犯の場合、かかる危険は、利用者が被利用者を犯罪に誘致する行為を開始しただけでは認められず、被利用者が行為を開始した時点で初めて認められる。したがって、間接正犯の実行の着手時期は、被利用者が行為を開始した時点と考える(被利用者基準説)。
 本件についてみると、被利用者であるYは、果物コーナーの場所が分からず、そのまま何もとらずに店を出ている。それゆえ、「窃取」、すなわち、占有者である店長Bの意思に反して本件ブドウに対する同人の占有を排除し、本件ブドウを自己の占有に移す現実的危険性のある行為を開始したとはいえない。したがって、Xは、「窃取」の「実行に着手」したとはいえない。
⑶ よって、Xに窃盗未遂罪は成立しない。

2 ●罪の成否
・・・
3 以上のとおり、甲は、●罪の罪責を負う。


(出題趣旨)
https://www.moj.go.jp/content/001386520.pdf#page=14

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?