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【今日の1問】民事訴訟法(09)|管轄

今日は「令和元年司法試験 民事訴訟法〔設問1〕」を解いてみるぞ!

(問題文)
https://www.moj.go.jp/content/001293668.pdf#page=10


(答案例)

第1 設問1

1 課題⑴

⑴ 本件訴訟の法定管轄はB地裁(4条1項、4項)及びA地裁(5条1号、民法484条後段)である。そして、本件定め(合意管轄、11条1項)では、特にB地裁だけが選ばれている。そのため、Yは、本件定めがA地方裁判所を本件契約に関する紛争の管轄裁判所から排除することを内容とすると解釈している(専属的合意)。
⑵ しかし、B地裁は、原告Xの居住するA市から約600km離れ、片道約4時間も掛かる。常にこのような遠隔地で訴訟を利用しなければならないとすると、経済的・時間的理由で訴え提起の断念を余儀なくされ、原告Xの裁判を受ける権利(憲法32条)が事実上奪われかねない。
 また、本件契約の契約書は、Yが用意したものであり、その趣旨は、B地裁に法定管轄がない事件(Yが原告となる債務不存在確認訴訟など)について、YがB地裁で訴えを提起できるようにする趣旨にとどまるものと理解できる(付加的合意)。
 したがって、本件定めの内容は、A地裁を管轄裁判所から排除する趣旨ではないと解すべきである。
⑶ よって、本件定めの内容についてYの解釈とは別の解釈を採るべきである。

2 課題⑵

⑴ 本件定めの内容についてのYの解釈を前提とすると、A地裁には管轄権がなく、管轄裁判所であるB地裁に移送されることになる(16条1項)。そうすると、本件訴訟はA地裁で審理されるべきでないということになりそうである。
⑵ しかし、本件訴訟がB地裁で審理されるとなると、遠隔地に居住するXや訴訟関係者に対する出頭の負担が大き過ぎ、また裁判所による検証物(本件車両)へのアクセスも極めて悪い。これでは審理の円滑な進行を妨げ、「訴訟の著しい遅滞」を招き、「当事者間の衡平」を損なう結果を招く(17条参照)。
 また、合意管轄を生じたB地裁は、遅滞を避ける等のために必要があれば、本件訴訟をA地裁に移送することが可能である(17条、20条1項括弧書)。そうすると、17条は移送を制限する規定ではないが、16条1項に基づく移送を経て、17条の移送をするのは非効率であるから、より適切な裁判所での審理を可能とする17条の趣旨を類推適用して端的に移送を制限すべきである。
⑶ よって、本件定めの内容についてのYの解釈を前提とするとしても、本件訴訟はA地方裁判所で審理されるべきである。


(出題趣旨)
https://www.moj.go.jp/content/001305186.pdf#page=12

(採点実感)
https://www.moj.go.jp/content/001308862.pdf#page=18


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