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緑色の島風〜沖縄ライフありんくりん〜 vol.10|『沖縄食文化の ”宝箱” 〜「ちむどんどん」の料理の世界 』(2022年11月号)

オキナワをもうちょっと知りたくなるマガジン「ハイサイ!ウチナータイム!」に寄稿している原稿を転載しています。最新版はコチラからご覧ください。

NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」、実に沢山の料理が登場し、知名度が急上昇したものも色々とありました。
「フーチャンプルーの涙」の回の放送後は、都内のアンテナショップから沖縄車麩が消えました。ゆし豆腐も人気が出たようです。
今回のコラムでは、多彩な沖縄食文化がフルパッケージで描かれていた「ちむどんどん」の料理の世界を、振り返ってみましょう。

まずは伝統的な琉球料理について。
琉球料理は「宮廷料理」と「庶民料理」の2つを源流とし、いまに受け継がれています。
15世紀から19世紀にかけて450年続いた琉球王朝時代に、中国からの使者や薩摩の役人をもてなす料理として確立されたのが宮廷料理です。
おもてなしの料理ですから贅と手間を尽くしたもので、ドラマでは結婚式の前菜料理として振る舞われていました。
その中の一つ「ミヌダル」の作り方をご紹介すると、炒り黒胡麻を油が滲み出て黒光りするまで念入りに擦りつぶす、豚ロース肉の脂を丁寧に取り除く、調味した胡麻ダレを肉に纏わせ定着させてから蒸し上げる、という工程になります。

一方で庶民料理は、入手できる限られた素材を工夫で美味しくする、知恵がつまった料理。
沖縄にはない外来の素材も取り入れながら、中国に学んだ医食同源の理念にかなう「食養生」(体質・体調に応じて栄養を考えた食事をとったり節制したりすること)の考えが息づいていることも大きな特徴です。
ゴーヤーチャンプルーやイカスミ汁(ドラマにはイカスミジューシーが登場)などが分類されます。

また忘れてはならない料理が「行事料理」。自然を敬い豊年豊漁を祈願する、祖先を敬うといった年中行事に欠かせないものです。
親族や地域の人たちが集まり、作った行事料理を皆で囲むのが定番で、ドラマでは「御三味(うさんみ)」という重詰め料理が、長女・良子と夫側の家族をつなぐ役割を果たしていました。

時が流れアメリカ統治下時代に根付いたのが現代沖縄料理で、ポーク玉子やタコライスが、ドラマの年代が進むごとに登場したことも印象的でした。
最終回には沖縄の島野菜とイタリア料理を融合させた創作料理が出てきましたが、それは決して突飛なことではなく、琉球王朝時代から外来のものを取り入れしなやかに定着させてきた沖縄においては、ごく自然なことのように感じます。
伝統料理の考え方や沖縄ならではの素材を大切にしながら、沖縄の食文化がこれから先、どう発展していくのだろうと、楽しみになる終幕でした。

参考: ウェブサイト「沖縄の伝統的な食文化」(沖縄県文化観光スポーツ部文化振興課運営), 『沖縄島料理 食と暮らしの記録と記憶』(監修・写真 岡本尚文, 文 たまきまさみ/株式会社トゥーバージンズ発行)

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