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クリスマスソングあれこれ1 中村とうよう編

昔、中村とうよう監修制作のレコード会社「スープレコード」から「ブラッククリスマス」なるコンピ盤が発売されたことがある。タイトルが示す通りアメリカの黒人ミュージシャンによるクリスマスソング集だ。

何故かジャケットにタカラのダッコちゃんがいる。

アメリカの黒人音楽には「クリスマス・スピリチュアル」なる黒人霊歌の流れがある。エジプト王に迫害されて逃れ、馬小屋で生まれてカイバ槽で産湯を使った苦難に満ちたイエスの誕生と育てるマリアの苦難への共感が歌詞として唄われる。自分たちの境遇をイエスキリストと重ねたのだろう。

中村とうようの「ブラッククリスマス」は、それを踏まえた上での、もっとカジュアルに黒人の生活の中のクリスマスを歌ったポピュラー集と言える。「クリスマスには彼女に会える、プレゼントは何にしようかな」とか「クリスマスだというのにあの人は行って行ってしもうた」などといったクリスマスの悲喜こもごもが歌われる。我々と大差ない。ではこの中から一曲。


スティールギターを弾きながらブルースを歌うという珍しいスタイルのホップ・ウィルソン。単体のアルバム持ってました。何故か凍りつくブルースなるキャッチが付いてましたが、本人はいたって優しい人でよく刑務所に慰問演奏に行くそうです。囚人たちにも人気の曲。

さて、中村とうよう監修の「ブラッククリスマス」は結構評判を呼び、その後雨後の筍のごとく数多出たクリスマスコンピの嚆矢という位置付けとなりましたが、その後再発やCD化されることもなく、幻のアルバムとなっています。

次は、「ブラッククリスマス」を追うようにアトランティック系アトコから出た「ソウルクリスマス」。大物たちの名前がずらっと並んでいて壮観です。

この中からは、映画「ラブ・アクチュアリー」でも使われたオーティス・レディングの「ホワイトクリスマス」を。

ビング・クロスビーの「ホワイトクリスマス」をオーティスが歌うという
意外性よりも、心に染み入る歌唱に魅了される。やはりオーティスは最高の歌手だ。

他社からたくさんのクリスマスコンピが出る状況に、スープレコードからオーディブックに発展移行した中村とうよう翁は満を持して「オールアバウト・クリスマス」なるコンピを制作する。

そのままクリスマスカードになるような可愛らしいジャケット

世界中のクリスマスソングから選りすぐったバラエティ豊かな内容で実に楽しいアルバムになってます。これは確か近年復刻されたのでまだ入手可能かもしれない。貴重音源多数でYouTubeにないものもあるが、何曲かご紹介。

白人の幸せな家庭を体現してるかのようなアンドリューシスターズの「メリークリスマスポルカ」

ノベルティ風味のユーモラスな演奏が魅力のファッツ・ウォーラーの「ジングルベル」。楽しいねえ。

日本でも大人気だったパティ・ペイジのご機嫌なブギウギナンバー。パーティが盛り上がりますね。

なんかDJみたくなってきたな。

そして中村とうようが極めつけと激賞するダイナ・ワシントンの「きよしこの夜」。教会の聖歌隊で歌を学んだダイナは、その類まれな才能でジャズやブルースを席巻し、やがてヒット曲を飛ばしてポップスターの座を獲得した。歌声に宿るゴスペルフィーリングはそのままに、軽々とジャンルを超越したダイナのこの曲は、雑多なジャンルを詰め込んだコンピ盤の掉尾を飾るにふさわしいと思える。

さて、続きはまた明日。
楽しいクリスマスを。


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