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ある先生からの相談

一つお伝えしておくと、指導歴が長ければ必ずしもよい指導ができるかというと、そうでもありません。ただ、この事例は私が親しくさせていただいているまだ指導者歴の短い先生からいただいたものです。

ご相談の内容

昨年の春頃、年少さんになった男の子。国語の学習をスタート。

体験の時から、とにかく暴れまわり、暴言もあり、大泣きもし、勉強どころではありません。保護者の方は教育熱心です。お家では何とかできているのに、教室では何故か暴れてしまう、全く進度も進まず、7Aのまま、ただプリントを渡すだけでいいのか、他の生徒さんの保護者さまからもクレームも来てしまって、もう受け入れられないとお断りしたほうがよいのでしょうか。

『私はどうにか出来ないものかと考えていますが、他の生徒さんの学習ももちろん大切なので悩んでいます。』

『東郷先生は、このような幼児さんにどのように対応されてきたのか、もし何かお聞きできることがあれば教えていただきたいと思っています。』

このご相談の連絡をいただいたあと、この先生と1時間以上電話で話をしました。

細かく状況をお聞きし、学習の進め方への修正点や、意識すべきポイント等をお伝えしました。

でも、最終的に、何度も強くお伝えしたことは、

『先生自身が、この生徒、保護者さまから逃げないこと』

できることなら、毎回は無理でも可能な限り自分で対処すべきです。何がこの子をそうさせているのか、自分の肌で感じるべき。
何か糸口があるはず、こういう子に出会えるということは、何か指導者としての学びの種があるということ、それを見つけ出すためにも、決して逃げてはいけない、と。

泣いて入室してくる子はたくさんいます。暴れる子はそれほどいませんが、大人が勝手に決めた枠組みに子どもを勝手にはめ込んで、大人しく勉強ができないので、お断りしますというのは違うような気がするのです。

ありのままの、その子を認めてあげる、自分が出せるようにしてあげる、笑顔になれるようにしてあげる、でもそうでないなら、原因は何だ!?と考える姿勢って、公文の先生の超重要スキルなんです。

自分への肯定感が無いと、自分を真っすぐ出そうとせず、間違った方向に主張し始める、まさに非行の根本はここに有りますよね。
みな自己主張をしたいんです。でも、正しく出せないと、別のところで出そうとする。
何か、暴れる彼には理由があるはず。それは何かを知ってほしい。

これでいいんだという成功体験が少なすぎる、まだ生まれて数年しか経っていない幼児さんでも、自分で小さな成功体験を積み上げてきた子なのか、何らかの事情でそれが出来なかった子なのかで、その子の出すものが全く変わってきます。子どもの目の光を見たら分かるようになる。自信があるのか、無いのか。無ければ、どうやってこれからそれを与えていくかを考えて行く。必要だったら保護者を巻き込んで。

・・・その後、この子は、1年の格闘の末、少しずつ成長し、今は座って学習でき、国語5A(ひらがな読み)を出来るようになり、今回算数も入会することになったそうです。本当に素晴らしいことです。
今でも、要求が通らなかったり、機嫌が悪かったりすると大声を出して泣いて無理に希望を通そうとすることもまだあるそうですが、毎回だったのが2回に1回、3回に1回になったり、会話のやりとりが成立するようになったりと変わって来ているとのことでした。

『本当に悩み続けましたが、東郷先生から、「絶対投げ出してはいけない」とお電話で言っていただいた言葉を胸に進んでこれました。』

登れることで、自信がつく、これは生徒さんも、保護者さまも、教室の先生も同じですね。
諦めては決して見れない、この男の子の姿、そしてこれから先のもっともっと成長した姿も。
どんな子も成長します、諦めるのは、周りの大人、今見せているのはずっと続く姿ではないんです。

子どもの態度が何か良くない方向に出しているとしたら、それは子どもからのメッセージ、相手を自分の都合で変えようとしない、まずは自分が変わること、それを子どもは全力で伝えようとしてくれている、段々大人に近づくと、隠れていくけど、子どもはそれを隠せません。とっても分かりやすいんです。

『子どもから学べ!!』なんです。

公文の先生の仕事はただ勉強を見ているだけでも、プリントを渡すだけでもないのです、日々の指導には、こういう深い考えが前提にある。でも、悩みは尽きないもの、自分だけで解決できることばかりではないのです。ぜひ、お子さまのことで悩んだら、公文の先生に相談してほしいなと思います。その相談がまた公文の先生のスキルアップにつながり、また次に悩んでいる保護者さまの助けになります。

東郷


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