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【佐藤亮子さんインタビュー④】プログラミング教育・大学入試制度改革…急速に変化する学びへの向き合い方とは?

豊かな教育実践で注目される「佐藤ママ」こと佐藤亮子さんが、これからの子どもたちに一番大切な力だという「読解力」。
佐藤さんには、「読解力」を育む育児、幼児教育とは……という視点で子どもたちへの働きかけや学習を振り返り、その実践方法を子育て中の保護者の方々へのエールとして盛り込んだ『我が家はこうして読解力をつけました』を執筆いただきました(2021年3月)。
 
さまざまな観点でインタビューを行う企画の4回目。今回は、「急速に変化する学びへの向き合い方」をお聞きしました。
(佐藤亮子さんインタビューマガジンはこちら)

―義務教育課程において、「1人1台端末」の新しい学びが始まっています。親として意識しておくことは、どんなことでしょうか?

佐藤:
大人が、特に親が気をつけなくてはいけないのは、コンピュータのメリット・デメリットを把握しておくということです。
メリットとしては、ご存知の通り、情報を素早く簡単に調べられ、さらに画像や動画も視聴でき、非常に分かりやすいという点です。実物を見るとまではいきませんが、写真などは理解しやすいので、子どもたちの意識に残りやすいです。
デメリットとしては、姿勢や目が悪くなるなど、使う時間を考えないと、心身ともに不調をきたすことがあるという点です。

また、学校や家庭でも場所を問わず、たくさんの情報が簡単に調べられますが、それが何なのかと思うだけでは、何の役にも立ちません。その情報を自分の中に取り込んで、どう使い、どう考えるのか、という一連の作業が非常に大切になってくるのです。

情報を得るのが容易になったとしても、「自分で考える方法が分からない」では、困ってしまいます。自分で考えることを意識しておく必要があるのです。
そうなると結局、今までと同じように基礎学力が重要となるわけです。

そもそもコンピュータといったIT機器を使うことのメリット自体、読み書き計算などといった基礎学力があってはじめて成り立つことです。新しい機械を使えばいいということではありません。基礎学力がない状態では、これから先の時代もコンピュータを効果的に使っていくことは難しいのです。

子どもがまだ小さいときには、読み書き計算の学習はもちろん、鉛筆と紙を使って、しっかり自分の手と頭で勉強すること。そして、写真や画像などは必要に応じてコンピュータを活用することが、今の時代において上手に付き合っていくポイントになります。

大人がメリットとデメリットをしっかり把握した上で、これまで通り読み書き計算を柱とし、子どもを育て上げていくということが基本ではないでしょうか。

―新しい学びが始まるなど、時代は急速に変化しています。もし佐藤さんがこれから子育てをするとしたら、どんなことをしていきたいですか?

佐藤:
私が今、子育てをするとしたら、当然ですが、まず同じように基礎学力を鍛えると思います。そのあと、膨大な情報を知識として自分に取り込み、それを思考力にさせるため、子どもともっと話すと思います。

これからは、1つの話題についてああだこうだと話しながら、子どもと私の知識を深めていく作業がより必要なのではないでしょうか。
「これはどう思うの?」と聞いたときに、「分からない」という返事はよくないと思うのです。これからは、多くの人の様々な意見を聞き、自分なりの意見をまとめること。さらにネットなどを利用して複数の情報元から知識を得た上で、総合的にまとめ、自分の頭の中で考えたことを他者に納得させられるよう、自分の口と言葉できちんと説明するということが一層求められると思います。
きっと「今の時代を生きる」ということを意識させる子育てをすると思います。

―「子どもともっと話す」という部分について、これから子育てされる方々にアドバイスをお願いします!

佐藤:
勉強科目というのは全てリアルな社会と結び付いています。しかし「社会とどのように結び付いているのか」ということを子どもがきちんと理解していないと、今勉強していることが社会の役に立たないという思考におちいってしまいます。今、机の上で勉強していることは必ず大人になって、そして社会に出て、役に立つんだよ、ということを子どもに積極的に話してほしいです。

また、お母さんやお父さん、先生といった大人は、子どもに正しい答えを言ってほしいと望む傾向にあると思います。例えば、子どもが「こうだよね」と言っても、ちょっと間違えたりすると、「それは違うよ」とつい口を挟んだりしてしまいます。

そのようなコミュニケーションは、実は読解力が育たないのです。子どもが「こうだよね」と言ったとき、ちょっと違うかなと大人が思っても、面白がって“聞き上手”になってみてください。子どもはどんどんしゃべります。

しゃべる子どもというのは、体の中に言葉がたくさん入っている証拠です。つまり、たくさん言葉を入れると、よくしゃべる子になります。
大人が聞き上手になったら、またさらにしゃべる機会が増えます。子どもがしゃべるためには頭の中で考えをまとめないといけないので、日常生活で少しずつ、楽しくしゃべる習慣がつきます。

こうして18歳頃に大学入試などを迎えるとき、面接などでいかせるコミュニケーション能力や技術力といった力に結び付くのです。幼少期のこういった経験が積み重なって、子どもはどんどん成長していきますので、小さなときから意識して子育てをしてほしいと思います。

―大学入試制度についても教えてください。

佐藤:
大学入試が「センター試験」から「大学入学共通テスト」に変わりました。すべての科目において日本語が非常に多いということが特徴です。

要するに情報量が非常に増えたわけです。たくさん読まなくてはいけません。限られた時間の中でたくさんの情報を読み、さらに理解すること。そして、必要なものだけをピックアップし、質問(設問)に利用するということがポイントなります。

例えば、国語の試験問題でも、これまでの「小説を読んで、答えを書く」という形式ではない問題も出題されています。資料1、資料2、資料3というように、新聞記事や広告など、さまざまな形態の記事を読ませ、すべてを集約した上で、答えを導き出させる形式です。

今までのように1つの形態の小説だけを読んで、答えを出すという流れだけではないのです。いろいろな形態の文章に触れ、読み慣れていないと、本番ではなかなか解けないわけです。

また、私立大学や国立大学の二次試験では、深い読み込みが必要な問題が出ます。そうなると、文章と文章の間を読まなくてはいけません。人間はどうやって考えるのか、などといった思考や感情を理解しなくてはいけません。
情報を処理するだけで質問に答えられる問題もありますが、今まで通り、じっくり読んで「主人公はどうやって考えたのか」という読み取り方も大切です。

公文式の国語では、子どもに様々な形態の文章を読ませます。テストのためではなく、普段から教材を通して、楽しみながら、そういった文章に触れています。ですので、何かのタイミングで違う形態の文章に出合ったとしても、子どもたちはびっくりしたり臆したりすることなく、むしろ楽しめるのではないでしょうか。

地道に学習していけば、「様々な文章を読み解くこと」「主人公の考えを読み解くこと」、この両方が自然に身につきます。日頃から少しずつきちんと身につけていくということが、最短の勉強法ではないかと思っています。
新しい文章に出合うと楽しめる」、このスタイルこそ、公文式の良いところです。何年かかけて、こつこつと身につけていただきたいです。

(本企画は佐藤ママスペシャルインタビュー動画をもとに再編集し、記事化したものです。)

佐藤亮子さん

大分県生まれ。大分県内の私立高校で英語教師として2年間教壇に立った後、結婚。その後は専業主婦として3男1女の子育てをし、お子さんたちが揃って東京大学理科三類に進学したことで、メディアを通じ「佐藤ママ」として注目を集める。その子育てにまつわる著作物の刊行や、中学受験を中心に子どもの勉強に悩むご両親を対象にした講演会に多数登壇している。くもん出版から『我が家はこうして読解力をつけました』を出版した。

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