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高級ブティックを引き継いだ話

パルコから南にのびる「並木通り」にある高級ブティックが廃業すると聞いた。オーナーのマダムにお話を伺うと
「もう歳だし、そろそろ潮時かしらと思ってね。テナントの引き合いもあるし、ちょうどいいかなと思って」

次はどんなお店が入るんですか?と伺うと、コンビニエンスストアだという。
え!このお店ぜんぶ壊しちゃうんですか!?
もったいない!!!

「そうなの、もったいないのよねぇ」
わたしが小さい頃からある素敵なお店。なくなっちゃうなんて・・・
ため息をつきながら店内を見渡していると

「ねえ、あなた、このお店やってくれないかしら?
 今ある商品もぜんぶ一緒に、どうかしら?」

ええええ!!!

お家賃は月16万円でいいわ、と。
並木通りに面した1階でそんな賃料なわけがない。
マダムはこのビルのオーナーだからか・・・このお店をつぶしちゃうのが残念なんだな

ええ・・・

とは言ったものの、店内のお洋服は絶対自分には用がないような「ドレス」ばかりだ。どんなパーティーに着ていけばいいのか。

とぼんやりしてるとお客さんがいらした。

黒いレースの、体にぴったりしたシルエットのドレスを試着された。
とても素敵だった。
このお店がなくなると聞いてずいぶん嘆かれ、お買い上げになって帰られた(提示された賃料より高かった・・・)

店内からみた、ガラスのドア越しの並木通りの景色は素敵だった。
足早に通り過ぎる人々、でも店内は別世界みたいに静かだ。
高い天井、クラシカルな照明
店の奥には坪庭があって、時々光が差し込む。
試着室の前の椅子は背もたれの高い3人がけのソファで、ブルーグレーのベルベット生地、植物が彫られた木のレリーフが取り巻いている。よく手があたった木のひじ掛けは飴色に光っている。

ここでお茶が飲めたら。
床のカーペットだけ木に張り替えたら、十分じゃないか。
壁は少しクリーム色の漆喰で塗ったらもっと素敵かな。

雲間よりずいぶん広い。一人では無理だな。
やっていけるだろうか。
でも、雲間ではできなかったことがやれるかもな。


と考えて、マダムに相談しようとして、目が覚めた。

マダムはブティックとしてやってもらいたいんであって、お茶屋にするとか言ったら賃料上がるんじゃねえの?などと夢にツッコミながら起きた。

「雲間ではできなかったことがやれる」
ってなんだったんだろう?
今の雲間で十分だと思うけど、まだなにか、どうにかしたいと思っているのだろうか。そんな金はないけど。

昨日、「店からはみだして拡張していく」っていうZOOM講演会を聞いたからか?(「『オープンスペース』は街の主役になれるか?」
報告者:井口 勝文 氏(建築家、INOPLΛS都市建築デザイン研究所))

だとしたら、クラシカルで重たいハードは必要なくて、街場の空き地でいいじゃんかね。などと寝起きの頭で考えている。

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