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土方と亀姫 挿話「翁島」

47年前…父が購入したモーターボートに乗って猪苗代湖にある翁島の周辺を旋回していたら、水深の浅いところに沈んでいる神社の鳥居や道祖神のようなものがたくさん見えた。

「翁島辺りには昔の村が沈んでっから、ボートのスクリュー引っかけだりして危ねぇがら行ぐなよ」と従兄が言った言葉で、好奇心が湧いて島まで来てみたのだった。実際に見てみると、それらは湖底に沈んだ村人たちの死臭のようなものが感じられてかなり不気味だった。

湖上に浮かぶ翁島そのものも、沢山の木々で覆われて内部が見えない小さな無人島で、妖怪が棲んでいそうな怪しい雰囲気に満ちていた。

翁島のこと…。

猪苗代湖の西側に翁島という島がある。島とは言っても周囲は約1.2キロ、面積は85平方メートルという小さな島である。

いつの時代かはわからないが、それまでは島はなく、周囲は陸地であった。

伝説では、湖畔の村にひとりのみすぼらしい旅の僧がやって来て、村人に「水を飲ませてほしい」と懇願したが、多くの村人は彼を卑しんで水を与えなかった。しかし、村の一人の老人だけは僧を哀れんで水を与えた。水を飲み終えた僧は「思いやりのあるあなたには幸運が訪れるでしょう」と言い残して村を去った。

すると、数日後に磐梯山が噴火して村は湖の底に沈んだが、僧に水を与えた老人の家だけが沈まなかった。それが老人(翁)の島、翁島と呼ばれた。ちなみに僧は弘法大師であったという話もある…。

参照:いろいろなもの

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