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怪獣大戦争 3

「八岐大蛇」

岩尾市に現れた怪獣と怪鳥が激突する少し前の真夜中のことだ。関東の上空に金色に光り輝く球体が現れた。さらにそれを守るように球体の前後左右上下には20機ほどの円盤が併せて飛んでいる。球体と円盤は何故か日本だけでなく海外のレーダーに探知されなかったようだ。

球体と円盤は、山梨県の方向から現れて、神奈川県愛甲郡清川村に宮ヶ瀬の宮ヶ瀬ダムの上空まで達した。すると球体はゆっくりと宮ヶ瀬ダムの湖水に下降して、湖水に吸い込まれるように沈んでいった。円盤の群は、そのままダム湖の上空で回転していたが、突然虹色の光線を湖水に向けて発射した。湖に沈んだ球体に向けた光線のようだ。“キーン”という耳鳴りのような鋭い音が湖水に反響する。

「ドンッ」という大きな轟音がすると、湖の水が炸裂して一瞬のうちに蒸発した。球体が水を吸収したのだ。ダム湖の水をすべて吸収してしまったのだ。湖底だったところには、かなり巨大に膨れ上がった球体が金色に光り輝いている。

それを確認した円盤の群れは、垂直に飛んで、あっという間にどこかに消え去ってしまった。

残された球体はさらに光り輝くと、全体にひびが入った。そして卵の殻が剥けるようにポロポロと表面が剥がれ落ちていく。ドドドドドッ…高層ビルが倒壊するような音がした。球体の中身が現れた。それは巨大な生物だった。

球体は巨大な鳥竜の卵だった。ドロドロとした液体をまとって現れた鳥竜は、小さな竜頭から長く伸びた八つの首を持ち上げた。八つの首はそれぞれに個別の意識があるようで、互いに違う生き物を見るようにそれぞれの様子を窺っていた。頭部はまさに竜そのものであった。

キキキキキキ…不気味な鳴き声。ひとつの首が好奇心からかひとつの首を噛んだ。「キャ」叫び声がした。ひとつがひとつの首を噛めば痛いということがわかったようだ。キキキキキキ…2本脚で立ち上がると、左右にたたまれている翼を広げた。翼も身体も巨大だった。片翼は50メートル以上もあるようだ。左右に転がっている卵の殻が翼で吹き飛んだ。身体は首から腹部にかけて徐々に膨れており、巨大な肉体を支えるように腹部からは短くて太い脚が生えている。

突然、ひとつの頭から金色の光線が発射されて、ダムの壁に当たった。轟音がしてダムが一瞬で吹き飛んだ。大きな破片が周辺に飛び、ひとつがダムの交流館にぶつかって破壊された。「キイ」他の首たちが驚いた。「自分たちにもできるか?」と考えたのか八つの首から光線が発射された。虹の大橋も飲食施設も何かもダムの周囲にあるものは完全に破壊されてしまった。

キキキキキキ…鳥竜は両翼を広げて羽ばたいた。強烈な台風のような強風が巻き起こって周辺の瓦礫や木々が吹き飛んだ。そして鳥竜は短い脚を屈伸させて飛び上がり、バサッっと2度羽ばたいて上空に舞い上がった。それから鳥竜は怪獣と怪鳥が戦っている東北に向って飛び去った。その途中に位置している東京を含む関東の街は鳥竜によって、すべて破壊されてしまうだろう。




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