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「妄想邪馬台国」9

「ホツマツタエ?」
「ええ、それはダメだよ。話がかえってややこしくなるじゃん」
「稗田くんの知識を増やしたいのさ」
「異能くんの自己満足じゃん。私が邪馬台国だと主張しているのは出雲なんだからね」治子がまたふくれた。
「一応知っておいてもらおうよ。ホツマツタエとは真実を伝えるという意味さ。これは縄文時代に作られたヲシテという神代文字で書かれているんだ」
「ふーん」
「これによるとね、高天原は東北にあったことになってて、アマテラスは男だったというんだね」
「あらら、そりゃ治子ちゃんが怒るはずだ。九州からも奈良や出雲からも遠くなっちゃった」
「まあ、そういう説もあるということさ。ホツマツタエの内容を元に古事記や日本書紀が書かれたと主張する人もいるんだよ」
「古事記や日本書紀は、聖徳太子による天皇記や帝記を下敷きにしたんじゃなく、縄文時代の記録であるホツマツタエを元にしたってことか?」
「そうだ。これによると、日本列島には「壺」と呼ばれる三つの聖地(琵琶湖瀛の壺、富士山逢の壺、仙台の方の壺)があってね、方の壺がある仙台地方は一番古く、7代の天神によって開闢された日高見国であり、“高天原”と呼ばれたんだ。古代の東北地方は日本の先進地だったんだね。要点は、高天原は、日高見国…つまり東北だった、天照大神は男神で13人の后がいた、日高見国からの“天孫降臨”は、ニギハヤヒノミコトとニニギノミコトの2度あって、ニギハヤヒノミコトは仙台から鹿島を経て難波に上陸、飛鳥宮に君臨した、ニニギノミコトは、その後、筑波に新治宮を造り、富士山麓に遷都した…というんだ。面白いだろ?高天原が東北にあったとかアマテラスが男で13人の奧さんがいただなんてさ。それに邪馬台国って邪馬国って書く場合もあるんだよ」と言って、異能は、治子のノートの空いたところに「壺」という字を書いた。
「壺?」
「やめてよ。ホツマツタエは本物かどうかわからないし、そんなこと言うなら天津教の竹内文書(たけうちもんじょ)もあるしね…」
「竹内文書? ほう…驚いた。治子ちゃんはよく勉強してるね。ホツマツタエや竹内文書なんか誰も知らないよ」
「そんなことないよ。古代史が好きなら、そこは避けて通れないのよ」
「へえ」異能が感心して頷いた。彼は頷いてばかりいる。それにしても治子の知識は凄い。異能と同じくらいに本を読んでいるんだろうなと感心した。
「竹内文書って?」
「それに関しては、別な機会にやろうよ」
「ほら、稗田くんが混乱したじゃない」
「治子ちゃんが竹内文書って言ったんじゃないか?」異能がふくれっ面をした。
「でもね、ホツマツタエが偽書ではなく、本当に縄文時代の記録書だったとすると、のちに蝦夷(えみし)と呼ばれる朝廷に弓引く民族だったわけだ。あとから半島から渡ってきた今の天皇の先祖が、先住民(縄文人)の蝦夷を駆逐して、ホツマツタエを自分たちの家系記録として捏造したとするって話もなくはない」
「そうね…そう考えると、私の出雲イコール邪馬台国説っていうのも揺らいできちゃう」

邪馬台国出雲説を整理した意味がなくなってきた。

つづく

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