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安藤昌益に憧れて

「この人は神なのではないか?」と感じた人がいます。江戸時代の東北に生きたお医者さんで、安藤昌益という人です。彼の著作「自然真営道」は、哲学的であり宗教的であり、共産主義的な思想でもあります。この著作の中で語られているのは「万人直耕社会」です。要は無政府主義で、誰にも縛られず誰にも搾り取られず、できる限りの平等社会を理想とした構想です。

人は人の上に立って楽をしたがるもので、頼みもしないのに勝手に指導者になり楽をする者に先導され、強制的に働かされた挙句に働かない指導者たちに税金を収める。そしていつの間にか上下関係が生まれている…それが悪の根源であると言い、全ての者は農民となって、自分で食べるものは自分で作る、誰もが同じように働いて汗を流して生きるべきだ…ということです。

源了圜さんの著書「徳川思想小史」(中公新書)には昌益の考え方を簡潔にまとめられています。以下に抜粋しましょう。

①自然は初めも終わりもない。自然は自己原因である。

②天地は初めもなく終わりもなく、また上も下もなく尊卑の別もなく、先後の順位もなく、たださながらの自然である。

③天地も人も物も、宇宙間のいっさいのものは微塵に至るまで、相対的存在であり、相補的であり、そしてそれ故に相互作用的である。万物の相対的、相補的性格を「互性」と呼び、この「互性」ゆえに生ずる万物間(天と地、男と女、等々)におこる相互作用を「活真」と呼ぶ。この相互作用によって自然は進退を繰り返す。

④宇宙間のいっさいのものは、天と地、日と月、男と女、雌と雄、善と悪、生と死…等のように常に二つに別れて現象するが、これらは自然の一つの真なる営み(真営)の進退であり、これらの多種多様の仕方で、二つの対なるものの間に起こる進退が自然の一真営なのである。

幕末の志士たちは確証のない日本史を学び尊皇攘夷思想を育み失敗しましたが、彼らが安藤昌益の自然真営道を読んでいれば、また違った維新を迎えることができ、歴史は大きく変わったであろうと思うのです。

自然真営道の実物は、東京大学学術資産等アーカイブポータルにありますので、興味があれば、ご参照ください。


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