2014年10月の記事一覧
第31話「波刈神社 その5」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘
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◇朱鷺村神流◇
十二畳の畳部屋に布団を並べて敷き、私とユキちゃんは眠っていた。枕元に置いた携帯電話が鳴り、私は手に取り確認した。佐々波珊瑚。佐々波先生だ。ドジでぼうっとしているが、常識はある人だ。この時間にかけてきたということは、よほどの緊急の用件だろう。
「はい、朱鷺村です」
第30話「波刈神社 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘
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◇佐々波珊瑚◇
白墨で描いた線が、何者かによって消された。
学校から海へと下った商店街。その近くにあるアパートの一室で、私はそのことに気付いた。
消えた線は、どこだろう?
四畳半の畳部屋で、こたつ机に向かいながら考える。机の上には、学校の資料と湯呑みが載っている。来週の授業
第29話「波刈神社 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘
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◇森木貴士◇
竜神海峡に突き出た波刈山。その海側の崖に、張り付くようにして建つ波刈神社。針丸姉妹の妹を、崖から突き落として殺した俺は、憎悪で顔を歪めた姉から逃れるために、拝殿へと逃げ込んだ。俺は、拝殿の奥にある戸を開いて潜り込む。そして、狭い場所を通るために、壁に手を触れた。
「つ
第28話「波刈神社 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘
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◇大道寺万丈◇
珍しく深夜に、シキから電話がかかってきた。内容は、危機を知らせるものだった。PCルームで電話を切った俺は、タブレット端末でブラウザを表示して、シキのメールアドレスとパスワードでログインする。画面を操作して、端末の現在位置を呼び出す。シキのスマートフォンがある場所が、G
第27話「波刈神社 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘
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◇森木貴士◇
竜神海峡を、くの字に曲げるようにして、突き出た波刈山。その山の、海に落ち込む崖の途中にある波刈神社。その神社の境内に、針丸姉妹から逃げていた俺は迷い込み、鎧武者の怪物と遭遇した。
背後で、木の葉がすれる音が聞こえた。目の前の疑問より、後ろから迫る危機の方が大切だ。俺は
第26話「針地獄 その5」-『竜と、部活と、霊の騎士』第4章 襲撃
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◇森木貴士◇
山の入り口にある石造の大鳥居をくぐり、車道を斜めに突っ切った。俺の右手には、針丸姉妹から奪った特殊警棒がある。しかし、これでチャンバラをするわけにはいかない。俺は、小学生時代の事故のせいで、握力が致命的に弱い。打ち合えば、一撃で弾かれて、武器を取り落とすだろう。使えると
第25話「針地獄 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第4章 襲撃
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◇森木貴士◇
夜になった。一階の小料理屋も終わり、俺は手伝いから解放された。
風呂に入ったあと、自分の部屋に戻り、ノートパソコンを起動する。夕方に途中まで作った、女騎士の3Dモデルを確認する。デザインの完成度は、六十パーセントといったところか。ディテールは作り込んでいないし、ポーズ
第24話「針地獄 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第4章 襲撃
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◇針丸姉妹◇
これが、あいつらの通っている高校か。坂の下の裏道にバイクを隠したあと、妹と別れ、私は校門の向かいの歩道に立った。最初は私が見張り、次は妹に代わる。三十分交代で、その役割を交代する。同時に二人で監視しないのは、こちらが二人一組だと、すでに相手に知られているからだ。
私
第23話「針地獄 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第4章 襲撃
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◇森木貴士◇
竜神部の部室に、俺とDBとアキラは入った。壁に並べてある木製の椅子を取り、部屋の中央の木の机の前に座る。
佐々波先生は、「お茶を入れてあげる」と言って、電気ポットを沸かし始めた。スイッチを入れた佐々波先生は、姿勢を正してポットの前に座り、真剣な顔で観察する。その佐々波
第22話「針地獄 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第4章 襲撃
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◇森木貴士◇
目覚ましが鳴った。布団の中から手を伸ばして、音を止める。目を開き、息を吸った。部屋の空気は冷えている。春のこの季節、朝の空気の温度はまだ低い。俺は、のろのろと布団から這い出て、着替えを始めた。首からお守り袋を提げる。母にもらったその袋には、昨日渡された霊珠と、母と姉の写
第21話「蠢動 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第4章 襲撃
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◇針丸姉妹◇
山の斜面のアパート。その二階の一室。隣には、妹の二葉がいる。私は、スマートフォンの特殊な音声通話アプリを使って、弥生様に電話をかけた。毎日の定期報告。夕方にかける約束になっている連絡。弥生様が出てくる瞬間を心待ちにして、私は神経を耳に集中した。
「何かあったようですね
第20話「蠢動 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第4章 襲撃
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◇針丸姉妹◇
八布里島は、本土に面した港の周辺が、最も栄えている。港の近くには、アーケードで覆われた商店街がある。そこからゆるやかに平地が続き、市街地になっている。その大小の家屋が並ぶ土地を進んでいくと、馬の蹄鉄状に山が大地を囲み始める。その山の斜面に至ったところで、地面の様相は大き
第19話「幕間 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第3章 戦間
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◇大道寺万丈◇
シキたちと別れたあと、とぼとぼと道を歩き、家に向かった。公園を過ぎ、住宅街を抜け、長い壁の続くところに、たどり着く。無駄に広い敷地だよな。先祖が、たまたま地位が高かったということで、受け継いだ土地だ。今の大道寺の家には、こんな広い面積は必要ない。
歩いているうちに、
第18話「幕間 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第3章 戦間
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◇朱鷺村神流◇
後輩たちが部室を出たあと、佐々波先生と打ち合わせをして、学校を出た。私は、ユキちゃんとともに道を歩き、朱鷺村の屋敷を目指す。空は紫色に染まり、夜の訪れを、そこまで招いていた。学校の坂を下り、町を抜け、周囲を田畑に囲まれた谷を通り始めた頃には、夜に追い付かれた。
等間