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引っ越しブルー(荷造り編)

 さて、この記事が投稿されている九月三十日。私は現在の自宅を引き払う総仕上げに励んでいることだろう。というか、励んでいてもらわなくては困る。何故ならこれを書いている九月二十六日現在、リビングと水回りの荷造りが芳しくないのだ。

 幸い、自室の荷造りは八月の内に済ませてある。これは意外とイージーモードであった。何せ全ての物の取捨選択権は私にあり、何を捨てるも捨てないも私の権限一つで済んだからだ。

 しかしリビングや水回りといった夫婦の共有スペースはそうもいかない。引っ越し先へ持って行く物と処分する物を全て協議の上で決めなければならぬ。ゴミの日の都合もあるし、何より夫の社業が休みの日にしかことが進まないのだ。

 我が夫は非常に穏やかで優しい性格の良い男だが、欠点があるとすれば極度に優柔不断なところと呑気が過ぎるところだ。そんな彼に引っ越しにおける物の取捨選択を委ねていると悠久の時を要する。挙句の果てに「今は決められないから一旦持って行ってから要らなかったら捨てる」などと言い出すので、頭を掻き毟りたくなってしまう。新居の収納スペースは無限ではないのだ。一年使っていない物は一生使わないと思って処分して欲しい。

 そんな次第で、時と新居の収納スペースは無限であると思っているらしい夫との荷造りは遅々として進まない。いっそ彼の思う通りに物を持って行って後悔のひとつでもすれば学習になるかとも思ったが、その後悔に付き合ってやれるほど私は出来た妻ではない。頼むから物を減らさせてくれ。

 いや、ここまでは彼のことをボロクソ書いたが、彼の言い分も分からなくはないのだ。使うかどうか分からない物を持って行って、きちんとまた使うことができれば経済的だ。それはよく分かる。
 しかし、新居は新築マンション。私はなるべくゴミを持ち込まず新しい家財道具で新しい生活を始めたい。百均で買えるようなラックや物入れなど特にだ。このあたりがどうも夫婦間で折り合いがついていないのかも知れない。前回の引っ越しではそこまで揉めた記憶がないので、もしかするとこの「新築マンションへの引っ越し」というファクターが私の方を狂わせている蓋然性は大いにある。が、この感覚はそこまで非常識なものなのか? と承服しかねる自分もいる。

 何が正解なのか分からない。否。正解は専業主婦である私がもっと早くに率先して引っ越しの舵取りをし、夫の尻をぺしぺし叩いて家全体の断捨離を促すことだったのだろう。いやこれ正解か? 専業主婦がどうのと言い出すと話がややこしくなるな。私に時間があったのは事実だが、鬱で寝込んでいた日も結構あるし……。

 つまるところ私は、未だに荷造りと家の引き渡しに目処がついていないことが不安で仕方ないのだ。引っ越しまで残すところあと五日。最後の最後までこの引っ越しブルーが続くとなると頭が痛い。

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