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8年越しのみつばちマーチ

LUSHという化粧品店をご存知だろうか。スキンケアが好きな人には馴染み深い店だろう。美容に興味がなくても、妙に黒くて、甘い香りがする化粧品店と聞けばピンとくるかもしれない。

私はLUSHのスキンケア用品を愛用している。肌との相性が良いようで、基本的に何を使ってもトラブルが起きない。一番のお気に入りはアロマウォーターという化粧水。さっぱりとした使い心地と香りが大好きで、もう何本空けたかわからない。

LUSHの定番商品のひとつに「みつばちマーチ」という石鹸がある。私がLUSHを知るきっかけになった石鹸だ。

私は高校卒業まで山口県の宇部市という街で育った。県内では人口の多い街だが、そうは言っても田舎だ。2021年現在、未だLUSHの店舗はない。当たり前だが、私はLUSHを知らずに育った。

高校3年のいつごろだったか。大学受験の不安で鬱々としていた私にとって、インターネットは大切な逃げ場だった。いつものようにニコニコ動画を見ていたら、突然出会った。「クサカアキラ」という配信者に。

クサカアキラ氏は、ニコ生をメインに雑談やゲーム配信などをしている配信者だ。数ある伝説的な録画のひとつに「アキラッシュ☆」というものがある。LUSHでの購入品を紹介している動画だ。

クサカ氏のトークの面白さは実際に動画を見て感じて欲しいのだが…当時の私に、彼女はとても輝いて見えた。(今もちゃんと輝いている) 好きなことを好きなだけ喋って、歌って踊って、相方とわちゃわちゃして。私がやりたくても出来ないことを全部やっていた。彼女がニヤニヤと嬉しそうに紹介するみつばちマーチを試してみたいと、心から思った。




時が経ち、私は大学進学のため上京した。ひとり暮らしを始めるに当たり、祖父母から多くの生活用品を譲り受けた。その中に、大量の固形石鹸が含まれていたのである!

祖母の「物を大切にせよ」という教えに忠実過ぎた当時の私は、順番抜かしで新しい物を買うことに罪悪感を覚えた。物は手に入れた順に使わねばならぬと思ったのだ。貰った石鹸を全て消費するまで、みつばちマーチは買えなかった。

ひとり暮らしで、大ぶりの固形石鹸はそう簡単になくならない。

結局、ストックを使い切るまで8年かかった。

晴れて「自由に石鹸を購入する」選択肢を手に入れた私は、意気揚々とみつばちマーチを買いに行った。立川ルミネまでスキップした。



売り切れていた。

店員に話を聞けば、なにやらTiktokでバズって品薄になっているらしい。

こっちは8年片思いをしているんやぞ…悔しい…。しかし買い物の基本は早い者勝ちだ。仕切り直して翌日、念願のみつばちマーチを手に入れた。

焦がしキャラメルのような、濃厚な甘い香りの石鹸だった。クサカアキラ氏のうっとりした顔が思い浮かぶ。あの動画を見てLUSHに焦がれた私は17歳。今の私は25歳。思い返せば、色々あったな。少しだけ、大人になったな。

感慨深かった。



しかしこれが結構柔らかい石鹸なのだ。もしかすると、今までの石鹸より早く使い切ってしまうかもしれない。次の石鹸、どうすんの?みつばちマーチのことで頭がいっぱいで考え及ばなかったが、これからは自分で石鹸を選ばねばならぬ。

まったく、買い物というのは時間と金と労力のかかる行為だ。上京当時に貰った大量のストックのおかげで、他のことに頭を使えていたらしい。

面倒ではあるが、経済は買い物で回っている。私も誰かの買い物に生かされている。せめていつなんどきも、ウキウキと買い物ができる消費者でありたいものだ。



みつばちマーチが定番商品として8年続いてくれたことに感謝を。

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