「映画 バクテン!!」良かったヨ

こんにちは!くまゑです。

掘り出せ!推しメディア、今回は「映画 バクテン!!」。現在公開中です。

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昨年テレビ放映されたアニメ「バクテン!!」の劇場版続編です。(「!」がひとつ増えました。)

エピソードとしては完全にテレビシリーズのつづきになる上、冒頭に振り返りなどもないので「既にシリーズを観た人向けの作品」になります。

「バクテン!!」は音の通り"バ(ッ)ク転"、マット運動の後方倒立回転跳びを意味していて、「高校部活による男子新体操」をテーマにしています。

近年、「ダンスを得意とする男子アイドルシリーズ」から派生・発展して、「アニメテーマにおいて比較的マイナーとされるスポーツ」と「爽やかなキャラクターデザイン(イケメン)の男子チーム」という組み合わせがフィーチャー、ブームとなっています。

特にここ数年は「プラスα」を強く打ち出した新世代の作品が続き、豊作です。

「スケボーバトル」の「SK∞ エスケーエイト」はハイテンパなギャグ演出とスピーディな試合の融合がバチッと決まっていてお勧めの一作です。

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ヒプノシスマイク」も、近年ブームの「ラップバトル」をアニメにもたらした革命児であり、このジャンルにおいて最も成功している作品のひとつです。

作中でうたわれるラップの製作には多数のトップ・プロたちが協力していることで、最も大切なラップバトルシーンの迫力を120%のものにしています。

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この「マイナースポーツ×イケメンチーム」のジャンル、ブームのために毎クールなにかしら該当する作品があるというのがここしばらくの現状で、そろそろ正直玉石混交感が強まっているのですが、今回の「バクテン!!」の「良さ」はブームだからではない普遍的なものに感じたので紹介することにしました。

簡単にメインキャラクターの紹介をします。

公式サイト:https://bakuten-pr.com/character/

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主人公、翔太朗。凄く「普通」の子です。さきほど書いたように「マイナースポーツ×イケメンチーム」は元々アイドルモノの派生として認知されてきた経緯があり、主人公も「最初から普通でない才覚と魅力に溢れる子」が多いのですが、翔太朗は「素直で真面目」が特徴で、特別才覚に溢れているわけでもありません。

これが"「バクテン!!」という作品の性質"に合った主人公で、振り返ってみると良く考えられているなと感心しました。

声優の土屋 神葉(シンバ)は数年前に「ボールルームへようこそ」にて主人公・富士田多々良を演じており、こちらもマイナースポーツに入門する素直で真面目な初心者ということでめちゃくちゃ共通点があります。※「ボールルームへようこそ」も良いアニメ化作品でした。

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翔太朗の唯一の同級生として描かれる美里(ミサト)は作中でも抜群の実力を有しており、けだるい感じ、人と距離を置く感じなどは「スラムダンク」の流川 楓の系譜ですね。「弱虫ペダル」の今泉 俊介的でもあります。

口数は少ないですが「競技」に対する思いを強く示すことが多く、話を展開させていきます。

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少し特徴的なのが「監督」の存在感の強さです。通常、メンター(指導者)としての役割を担うことに終始することの多い監督ですが、今回の志田監督はかなりドラマ部分に大きく関与しており、「バクテン」は「志田監督からはじまった物語」として語れる部分が多いです。

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その他、主人公の通う通称アオ高の上級生である三年生三人、二年生二人、そして「ライバル」である通称シロ高のメンバーたちが主要な登場人物です。多数の高校が登場する形ではなく、この2校にフォーカスすることで人物関係を丁寧に描き、ドラマをより繊細なものにしています。


「バクテン!」の良さはこのキャラクターたちの内観を丁寧に描いた人物像に加えて、「体操シーン」にあります。

くまゑが、明確に「このシーンでファンになった」と言っても過言でない第1話の体操シーンがYoutubeのノイタミナ(2005年から継続するフジテレビの深夜アニメ枠。"「アニメの常識を覆したい」「すべての人にアニメを見てもらいたい」という想い"として、斬新な作品が多い。)公式チャンネルにて公開されています。

バクテン!の体操シーンは、三つの衝撃的な要素があります。

1つ目は長尺であることです。3分もの長さを、演技シーンに充てています。通常、アニメにおいてこの手の芸術的な側面を持つ競技の演奏や演技のシーンはダイジェスト的に表現されることが殆どです。それは尺の都合以上に、「長く映すことでボロが出る」ことを防ぐ予防的な意味合いもあります。(良い部分だけを映したいという気持ちの表れでもあります。)

長尺であるということが自信の表れでもあり、そしてその自信に見事に応えた出来映えです。

上で挙げた「ヒプノシスマイク」もそうですが、これまで重要視されてこなかった「テーマの本物感」を武器にした作品です。

2つ目はCGレンダリングのクオリティが著しく高いことです。サムネイルを観ても分かるように、体操シーンは全編3D-CGで製作されています。(ドラマシーンは2Dです。)

2Dシーンと3Dシーンでキャラクターに違和感がないのは前提として、動きの細やかさに本当に衝撃を受けました。いわゆる「ぬるぬる動く」というのはもう現代においては当然として、本当に新体操を観ているような感覚に陥るほど、モーションが「リアル」でした。

そしてそのリアルさは団体競技だからこそ更に"映(ば)え"ていました。モーションキャプチャーをベースにしていますが、それぞれの体格と設定技術に合わせて「4人が本当にわずかに違う動き」をするのです。

練習のシーンで倒立(逆立ち)が苦手で練習しているキャラクターが本番でもほんのわずか肘を折ったり、ドラマを活かした3D-CGに「ここまで出来るのか」と「演技の本物感」に驚きました。

3つ目は「アニメだから出来る視点」の採用です。1つ目と2つ目で示したそれぞれの「本物感」は、「本物の競技」をリスペクトし寄せている部分だからこそ感動した部分ですが、3つ目は「あえて本物から離れることを選んだ」演出の部分です。

具体的にはカメラアングルの話なのですが、いわゆるカメラの位置を固定した「定点撮影」ではなく、カメラの位置が様々に移動します。近づいたり遠のいたり、特定の人物をフォーカスしたりはもちろん、演技している床から天井側を映したり、飛んでいる人と人の間から空間を表現します。そのシーンそのシーンで最も見せたい部分を最も見せたい角度から映すことに成功しています。(この「見せたい部分」は必ずしも最も良く出来ている部分ではなく、「ほんの少し失敗する部分」などを含みます。)

リアルでは「ありえない」角度から映す。「リアルに寄せる」という一点では、このカメラアングルは逆効果です。(実際に「リアルじゃないので定点でやってほしかった」という意見を観たこともあります。)

しかし「バクテン!」ではこの「最も見せたい部分」に視線を強制誘導させることで、新体操というマイナースポーツの長尺の演技を「どう見てよいのか分からない」という視聴者の不安を取り除きつつ、クオリティを維持した映像を用意し、なおかつ多くの視聴者に「あそこが見せ場なんだ」や「そこの練習、がんばったね」「やっぱり少し難しかったか」など、「見終わったあとの共通した感想」を持ってもらいやすくしています。この演出に踏み切ったの、本当に凄いな。

「本物」へのリスペクトが厚ければ厚いほど、「ありえない」との融合は素晴らしいものになりますが、一つ間違えれば「そこだけダメ」みたいな言われ方もされかねません。

これまでの感想でも時折ふれた表現ですが「今だからこそ出来る表現」「この媒体だからこそ出来る表現」という視点において、リアルを追求しつつリアルでは出来ないことを表現しきったバクテン!の3D-CG体操シーンは100点の出来だと感動しました。

ここまでテレビシリーズと劇場版に共通する作品の魅力をお伝えしましたが、ネタバレにならない程度に少し劇場版の話を掘り下げます。

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テレビシリーズでは「物語のはじまり」であった「3年生たち」と「物語の今」である「1年生たち」との橋渡し的な役割をつとめた2年生・亘(わたり)が、時の進んだ劇場版では新しい役割を得ます。

「亘に関しては、個人的なエピソードをもう少し見たかったな」というテレビシリーズの視聴後感想をみごとに解決する形になりました。

また、起きるイベント(アクシデント)もテレビシリーズから引き続き現実の延長で「起きそうなこと」が中心となっていて、荒唐無稽さがなくドラマが堅実にまとめられているのも作品の特徴です。

これは主人公・翔太朗の"素直で真面目が特徴で、特別才覚に溢れているわけでもない"という要素による部分も大きく、等身大の悩みや成長を丁寧に描いたジュブナイル作品です。

その上でやはり、「アニメだからできること」を織り込んでいて、「リアル×アニメ」の組み合わせに対して強い想いがあるのだなと再認識させられます。

テレビシリーズでは「最高の目標でありライバル」であったシロ高メンバーも、劇場版にて「友人」としての新しい側面が多く描かれました。これも楽しみにしていた人が多いと思います。良い意味で「ファンが求めていたもの」「バクテン!の新しい魅力」が表現された劇場版だったと思います。

全体を通して「思いもよらない衝撃」などが飛び交う作品ではありませんが、一人ひとりの地に足のついた、それでいて想いの詰まった言葉で紡がれるドラマを中心に、質実剛健とした完成度となりました。

「最近の良く出来たアニメを観たいけど、なにかあるかな」。そんな漠然とした問いを友人からされたとき、名前の挙げたいシリーズです。

また今作は実際、作中の舞台でもある東北・青森にある青森山田高校の新体操部が体操監修をつとめています。昭和42年に同好会結成、昭和57年創部、インターハイ団体優勝12回という強豪校であり、こちらの演技もいくつかがYoutubeで公開されています。「バクテン!」で描かれた「今」と「本物」の源流を、ぜひご覧ください。


※ちなみに現行放送ではバドミントンの「ラブオールプレー」の視聴を最近始めました。

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2022年1月期放送の「リーマンズクラブ」に続いて、バドミントンモノが継続している状況です。漫画でも「はねバド」「アオのハコ」などの人気のバドミントンモノが増えているので、ホットですね。

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