過去問演習に時間を多く費やすことが「リスク」になるケースもある
「志望校の過去問をいつから開始すればいいのか」「どの程度やり込めばいいのか」で悩んでいる受験生や親御様も多いのではないでしょうか。
一般的には6年生後半に開始するケースが多く、また直前期に近づくほど、過去問演習中心の対策を進める受験生が多くなります。
過去問演習に時間を多く費やすことは、有効な対策となるケースも多いのですが、受験生の状況によっては「リスク」となるケースもあります。
特に注意すべきなのは、受験生の素の実力(問題を解く力、解法力)が、志望校の合格に必要な水準を下回っている場合です。
次のデータは、私が家庭教師で実施している「定番問題演習」という課題の成績と、聖光学院中学の合否結果について、まとめたものです。
<定番問題演習の成績(1000点満点)>
聖光学院合格者:平均788点(中央値803点)
聖光学院不合格者:平均683点(中央値682点)
750点以上の受験者:合格率75%
749点以下の受験者:合格率14%
「定番問題演習」は名前の通り、難関校でよく出題される定番の応用問題について、どの程度の確率で正解できるかを測定する課題です。
注目すべきなのは「749点以下の受験者」の方が「750点以上の受験者」よりも、聖光学院の過去問演習に費やしていた時間が多く、出題傾向に合わせた対策にも力を入れる傾向が強かったことです。
母集団が小さい(約20人)ため一般化することは難しいかもしれませんが、少なくともこのデータからは、過去問の演習量や特化した対策よりも、素の実力が合否に与える影響の方が大きいと考えられます。
また、過去問演習に偏った対策を行い、算数全般のメンテナンスが手薄になることで、以前は解けていた問題が(解法を忘れて)解けなくなり、気づかない内に実力が目減りしてしまうケースも多く見られます。
ここでは聖光学院についてデータをまとめましたが、他の学校についても(基準となる得点が変わるだけで)同様の傾向が見られます。
「結局(素の)実力がなければ、対策しても無理なのか」と思われるかもしれませんが、受験の神様と言われる和田秀樹先生も「試験直前の1週間で2ヶ月に相当する勉強ができる」と指南されています。
実際、私が見てきた受験生も、入試直前の数週間で「素の実力」を大きく伸ばし、厳しいと思われていた志望校に合格したケースが多々あります。
厳しい状況の受験生ほど、過去問演習を徹底することで突破口を見出したくなるものですが、個人的には「素の実力」を最後まで高めていくことに集中する方が(過去問演習に偏った対策を行う場合に比べて)合格可能性は上がると感じています。
※オンライン授業(家庭教師)では、11月より新5年生(現4年生)の受付を開始しております。
現時点(11月8日)では2月上旬~下旬の初回授業について受付を終了し、引き続き3月以降の初回授業について受付をしております。
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