灘の算数対策が、筑駒や開成で機能しない理由

ここ数年の傾向として、算数の指導者が筑駒や開成を目指す受験生に対して「比較的高度なテクニック」を教え込むケースが多くなっています。

テクニック重視の指導法は、もともとは関西の最難関校対策として行われてきたもので、特に灘の算数対策としては有効です。

筑駒や開成の算数も十分に難易度は高いのですが、灘の算数に比べると、取り組みやすく感じる受験生が多いのではないでしょうか。

「大は小を兼ねる」ではありませんが、灘の算数対策(テクニック重視の指導法)を実践すれば、筑駒や開成の算数に余裕をもって攻略できるのではないか、と考えるのも自然なことではないかと思います。

ただ、実際にはその対策が機能していないケースも多く、リスクについても考慮する必要はあるかと思います。

前提として理解しておきたいのは、灘の受験生は筑駒や開成の受験生に比べて、算数に圧倒的に多くの時間(1.5倍程度)をかけられるということです。

灘は3科目入試(筑駒、開成は4科目入試)で、基本的には「首都圏の受験生が社会にかけている時間を、そのまま算数に投入する」形になります。
そのため、筑駒や開成の受験生が算数に100時間かけている間に、灘の受験生は150時間かけるという感じになります。

灘の算数対策は、正攻法の対策によって十分な基盤を作り、そこに「プラスα」として高度なテクニックを習得していくことで機能しています。
先程の例では、算数にかける150時間の内、正攻法の対策に100時間、テクニック重視の対策に50時間といったイメージになります。

ただ、筑駒や開成の受験生がテクニック重視の対策を行おうとすると、算数にかける100時間の内、正攻法の対策に50時間、テクニック重視の対策に50時間といったイメージになります。

ポテンシャルの非常に高い受験生であれば、正攻法の対策に50時間かけて(他の難関校受験生が100時間かけるのと)同じ成果を出すことで、テクニック重視の対策が機能する状態になります。

しかし、大多数の難関校受験生は、正攻法の対策が手薄になることで十分な基盤ができず、テクニック重視の対策が機能しない結果になります。

後者の受験生は、筑駒模試や開成模試の算数において、テクニックがハマって低正答率の問題を正解できることもありますが、それ以上に高正答率の問題を落としてしまうケースが多く、成績も安定しない傾向があります。

一方、正攻法の対策に集中する(テクニック重視の対策に時間をかけすぎない)ことで、低正答率の問題は正解できなくても、高正答率の問題を落とすケースは少なくなり、成績も安定する傾向があります。

テクニック重視の対策は、受験生本人や親御様にとって魅力的に映るかもしれませんが、リスク等を考慮した上で慎重に判断していく必要があるかと思います。


※新刊『開成合格率79%の東大卒家庭教師が公開する 難関校合格への99の戦術』が6月19日に発売されました。
https://www.amazon.co.jp/dp/475393568X/

内容紹介(目次)
https://note.com/kumano_takaya/n/n0fabcc15c344


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?