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ワールドカップの後日談



FIFA W杯、それは4年に1度行われるサッカーの祭典である。


国の威信のため。サッカー界最大級の栄光を勝ち取るため。またはビッグクラブに自分を売り出すため。
千差万別の思いを馳せてひとつのボールを蹴り会う競技は、世界中の人々に勇気と感動を与えた。




日本サポーターの熱い応援



そんな中でも一際目立ったのが、プレイヤーでも監督でもなく、観客席に立つサポーターの姿であった。



特に日本人サポーターによる「試合後のごみ拾い」が一躍注目され、現地メディアが取り沙汰するにまで至った。



捨てられた缶を回収するゴミ拾いサポーターの皆さん


今回はそんな「ゴミ拾いサポーター」の一人である熊野おじさん(56)に、現地からインタビューを通して心境を語ってもらう。



画像:岡山でイノシシの交尾博覧会を営む熊野おじさん


Q.日本はグループ通過後、はやくもクロアチアに惜敗を喫してしまいベスト16で敗退となってしまいましたが、今の心境を率直にお聞かせ願えますでしょうか?

インタビューを受けて緊張のご様子

A.そりゃ決まってるでしょ!笑
いちいち聞くことじゃないっすよ

Q.と、言いますと?

A.だーかーらー!笑
そんなん決まってんじゃんって話っすよ!笑
もう、もう、ウシー(姫野)爆笑



Q.なるほど。やはり他のサポーターの皆様と一緒で、悔しい、といった心持ちでしょうか?


A.おん。そだにょ笑 




急にでじこの口調になり、「令和のデ・ジ・キャラット Project Complete Blu-ray&CD BOX」の販促を始めた熊野おじさん。
やはりサポーターにとって、日本ベスト16敗退についての感想を聞くのは愚問だったようだ。


私は早速本題へと入り、なぜ「ごみ拾いサポーター」としての活動を始めたのかを伺うことにした。



Q.日本人サポーターによるゴミ拾いが話題になっていますが、どうしてごみ拾いをしようと思い至ったのでしょうか?

A.そりゃお前…………………………………………











Q.それはつまり、熱戦を繰り広げた日本代表への愛情表現、という事でしょうか?

A.まーそうなるわな。Loveだべ



そう言いつつ、おもむろに生地と棍棒を取り出して蕎麦を作り始めた熊野さん

ちねり米を作るとのこと



Q.なるほど。日本代表に対する愛情表現の一環であると。ではなぜ対戦国サイドのゴミまで回収されるのですか?


A.これするとコークオンのスタンプが貯まるんで



まさかのマッチポンプでした




Q.そうなんですね。実益が伴っているとは驚きました。となると今回の清掃で得たポイントは、約何円に相当しますでしょうか?


A.鬼滅の刃の興行収入ぐらい



Q.すご。

A.ビビるよな笑 まじで笑


イチローのネットミームみたいになった熊野おじさん


約500億……。
庶民が持つとしたらあまりにも大きいし、国家予算だとしたらあまりにも少な過ぎる微妙な額。

そんな巨額を一夜にして稼ぐなんて……。



私は衝撃のあまりインタビューマイクを床へと落としてしまった。衝撃音がハウリングとなり室内にノイズが響き渡る。しかし私の脳内はそんな不協和音をものともせず、新たな決意に燃えていたのだった。


マイクを向けてカンペを読みながら頷くだけの仕事なんて、若くて可愛い子なら誰だって出来る。そんな仕事に将来性もやりがいも感じられず転職を考えていた私にとって、彼のような生き方は眩しく見えた。


人に感謝されて収入を得る、なんて良い仕事なのだろう、と。

私も彼のように「ゴミ拾いサポーター」として食っていきたい。決意を新たにした私は手にしたマイクを道頓堀のきったねぇ川へと投げ入れ、その場を後にした。



4年後の北米W杯では、きっと私がインタビューを受けることでしょう。
それまで、皆さんとは暫くお別れです。










「転職って、青春だ。」




























 

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