カラーコピーとデジタル人民元
ホリエモンチャンネル「デジタル人民元」の回を見て思ったこと。
2000年頃、中国広東省の会社で働いていていたころの話。社内に白黒コピー機しかなかったので、同僚にカラーコピーができる店があるか聞いたところ、カラーコピー機は禁止されて市内にはないという。
なんでも、カラーコピー機を使用しての偽札製造が流行っているからとか。
偽札?って、映画に出てくるスパイが原版を奪い合って透かしの技術が云々っていうあれでしょ?コピーした紙幣なんてバレバレじゃん、と思ったけれど、実に頻繁に出くわすことになる。
気づかないで受け取ってしまう精工なもの、敢えて旧札の使い古し感を出すなど工夫を凝らしたもあれば、まさにカラーコピー、用紙がツルツルなど、似せる努力すら放棄したようなものまであった。
しまいには、何と「1元硬貨の偽コイン」が登場。よく見れば違うんだけど、コインはさすがにノーチェックだったので、指摘されるまで気づかなかった…
1元(当時約13円)の偽造コインって、コストいくらなんだろう⁇技術的には似せるのが簡単そうだけど、原価率高すぎで儲からないのでは?
とにかく頻繁に現れる偽札。
「銀行で交換してもらえる?公安(警察)に届けた方がいい?」と聞いてみたら、「交換どころか、むしろ偽造犯だと捕まるかもよ。何なら銀行で受け取るお金にだって偽札が混ざってる可能性もあるから、ちゃんとチェックしてね」とのこと。
じゃあ、受け取ってしまったら、どうしたらいいのか?
とにかく次の人にパスするしかない。
暗いとばれ難いから、夜タクシーに乗った時や、夜店などで使うとか。しかしそういう場所でこそ偽札の流通が多いので、相手も慎重だし、逆に受け取る可能性も高かった。誰もが慣れているので、受け取る側は相手の挙動をよく見てるし、出した側は指摘されても「ええっ偽札?」としらをきって、別のところでトライする。
偽札使うのって犯罪だったよね… と良心が痛む人は、「偽札コレクション」にして飲みネタにするくらいしかできない。(実際コレクターがたまにいて、どれが一番チャチいかを見せてくれたりする。)
デジタル人民元の話題で気づいたけれど、みんながパスし続けて循環してしまえば、偽札だって貨幣としての役割を果たしていたわけだ。
偽札が多すぎて、現物貨幣をそもそも誰も信用していなかった。お店も客も銀行も国も。
自由主義のエッジのようなイメージのデジタル通貨を、管理主義の中国が真っ先に導入する。何だか不思議に感じたけれど、貨幣の価値が目の前の紙切れにあるのではなく、その背後にある「信用」だとすると、中国人は誰でも本能的にそれを理解しているのかもしれない。
ただ、中国では民間企業によるスマホ決済が行きわたっていて、すでに現金の方が使えないという話。電子マネー機能としては同じだとすると、デジタル人民元の登場は、個人にとっては既存のスマホ決済の登場時と比べてインパクトがなさそうな気がする。
それから、暗号通貨とは違って、国発行の法定通貨ということで、もしかして履歴なども追跡されたりするんだろうか。
そして、カラーコピーで偽札作りに挑むように、デジタル人民元にも挑もうとする猛者が現れるんだろうか。
いろいろ妄想が広がってくる。
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