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ドラマ「SHOGUN」とジャパンアズナンバーワンの思い出

配信ドラマ「SHOGUN」が全世界で大ヒットという記事を読んで思い出した。

バブル末期、アメリカの全寮制高校に短期留学した。

初めて乗った飛行機。夕暮れの上空から見下ろすと、海岸線に沿ってライトアップされた日本列島が浮かび上がっていて、それは美しかった。
自分の旅路を日本の全ての人が応援してくれているかのような、日本人であることが誇らしいような、そんな感覚を覚えた記憶がある。

隣の席のサラリーマンらしき日本人男性は、どうやら全く英語ができないようで「coffee」が通じず、フライト中ずっとジュースだけを頼んでいた。「日本人は英語が苦手」的なエピソードとして覚えていたけれど、後になって思えば、英語が全くできない社員をアメリカ出張に行かせるくらい、日本企業に経済的な余裕があったということだろう。


アメリカの高校の授業は、好きな科目を選べる選択制だった。
つたない英語力でも理解できるようにと、日本の高校で履修済の「世界史」を選択した。

その世界史の授業で毎日鑑賞させられたのが、三船敏郎出演のドラマ「SHOGUN」だった。封建制の題材としてのようだった。

「SHOGUN」鑑賞が終わり、ようやく世界大戦前後の単元に進んだと思ったら、次に繰り返し見せられたのは、真珠湾での日本軍の特攻シーンだった。

世界史なのに、どうして日本関連の映像ばかり取り上げるんだろう?

世界史の先生が日本に興味があるから? ではなさそうだった。
当時、世界史を選択している日本人は私一人だったけれど、先生から話かけられたことはなかった。むしろ日本人の生徒もいるのに、アメリカ人の義憤を煽るようなカミカゼのビデオを何度も見せるの、どうかしてない?

アメリカの高校生が日本に興味があるから? でも全くない。
当時のアメリカの高校生の関心時は、1に恋人、2にアメフト選手orチアリーダーに選ばれるかどうか、3にダイエット、みたいな感じ。
それ以外のことには全く関心がなく、たいていの学生は日本がどこにあるかも知らなそうだった。ピカチュウも世に登場してなかったし。


大人になってから気づいた。
世界史の先生が、妙に日本を題材に取り上げていたのは「敵を知れ」という意味だったのでは?
戦時中にルース・ベネディクトさんが「菊と刀」を書いたのと同じ意味で。

当時の日本はアメリカにとって仮想敵国だったんだ。
日本車の叩き壊しとか、日の丸が焼かれたとか、そういえばニュースでやってた。

田舎町ですら大半を占める日本車、訳もなくビルを買いあさる日本企業。
英語もろくすっぽできないのにどんどんやって来て、意思表示せず何考えているのか読めない日本人。
アメリカ人にとっては、ホラーだよね…

欧米諸国が、経済成長した中国を恐れ敵視していく過程とよく似ている。

それにしても、日本がアメリカを恐れさせるくらいの経済力を持っていたなんて、今となっては想像もつかないよなぁ。

当時よく言われていた「ジャパンアズナンバーワン」という言葉。
てっきり石原慎太郎さんの日本アゲ本かと思っていたけれど、検索してみたらエズラ・ヴォーゲルさんの著作で、日本を知りアメリカを鼓舞する意図で書かれた本だそう。「菊と刀」と同じというところか。
(ちなみにエズラ・ヴォーゲルさん、中国の経済発展についても予見してたような。)


「SHOGUN」が44年ぶりにリメイクされ、日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新した。何だか時代がシンクロしている?
また、あの頃の自信に満ちた日本を取り戻せるといいな。

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