手を伸ばして届く範囲。(3/366)
デザイン事務所で働いていたとき、先輩デザイナーにこう言われたことがあります。
クマちゃんは「四畳半デザイナー」やね。
「四畳半デザイナー」と評した理由を聞いて、当時の私は「たしかに!そうっすね!」とものすごく納得したのをいまでも記憶しています。
デザインを作り上げるには少なくともアイデアは必要だと私は思っていて、そのアイデアが何もないところ、ゼロから生まれることはなく、いますでにあるものの新しい結びつき、化学反応の中から生まれるものだと思っています。そのアイデアを感覚的に組み上げるか、論理的に組み上げるかは、さておき。
で、私が自分の身の回りにあるもの、自分が手を伸ばして届く範囲のものから、アイデアの原石、自分なりの着眼点や切り口を見つけ出すことが多かったことから先輩は私を「四畳半デザイナー」と評されたのでした。この先輩の観察眼にも脱帽です。
冷静に自分の回りを見渡すと、たしかに私のデスクのうえは情報収集のための本や雑誌で埋め尽くされ、デスクの左右にある収納棚だけでなく、机の下はもちろん、事務所に備え付けてあった床から天井まである大きな棚にも自分のものを置き始めている始末。そして、そこに置いているものといえば、仕事に必要なもの、関係あるものばかりではなく、仕事に関係ないもの、ただ自分が好きなもの、例えば海洋堂さんのAKIRAのフィギュアや、動物園の売店で売っている動物のフィギュアとかも飾っていました。事務所だけでなく、当時住んでいた部屋もパソコンの前の定位置を中心にありとあらゆるものが積み上がり・・・整理整頓ができない人と思われそうなので、このあたりにしておきます。
アイデアの原石を探す方法は人それぞれに合った方法がある思います。海外に旅にでかけるひともいれば、ゆっくりお風呂に入るひともいるでしょうし、お酒を飲んで酔っぱらうひともいるでしょう。私の探し方は、まずアイデアの火種(になるだろうなと思ったもの)を自分の回り、常に視界に入るところ、手を伸ばせば届くところに置いておくこと。そうすることで、自分の頭の中で化学反応が起こりやすくしているのだと思います。
いまも昔と大して変わっていませんが、昔よりは少し広がって「六畳デザイナー」ぐらいにはなっているかもしれません。