エンジン。（25/366）
伊坂幸太郎さんの小説が好きです。昔、同じ電車で通勤していた先輩プログラマーから「面白いから」と勧められて『オーデュポンの祈り』の文庫本を貸してもらったのがきっかけ。
伊坂さんの『フィッシュストーリー』という短編集の中に「動物園のエンジン」という話がありまして、そこに出てくる男が「動物園のエンジン」なわけです。
夜の動物園、シンリンオオカミの檻の前には永沢が寝ている。
永沢は動物園の「エンジン」であり、彼の存在によって周囲の明るさや音、動物達の活気までもが違って感じられるのだ。
昔から会社の近くに住むのが好きで、仕事の準備のために少し早めに出社することが多く、出張に出ていないときはだいたい会社に一番に到着して鍵を開けるんです。とくに私が鍵を開けることを仕事として担っている訳でもなく、いつもいつのまにか自然とそうなっていて。鍵が開いてなかったら「熊本さん、何時に会社に来ますか？」と連絡が来るぐらい。
そして、会社に一番に到着することがちょっと好きなんです。鍵を開けて、誰もいないオフィスに入り、自分のデスクに向かって歩いていると、この「動物園のエンジン」を思い出し、こう思います。
今日も一日が始まる。
私はみんなのエンジンになっているだろうか。