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第8回熊本地域医療勉強会 開催報告 2024/5/17

2024年5月17日(金)第8回熊本地域医療勉強会 を開催しました。
講師を務めていただいたのは、
三重県の志摩市民病院 江角 悠太 (えすみ ゆうた) 先生  です。

講演タイトルは、

「日本のへき地が世界を救う!~世界を変えたいニューリーダーに贈る~ 」

講演動画はこちらから↓↓   

 ※開始7分から約1分間、音声が途切れています。申し訳ございません。

江角先生のこれまでの歩み、志摩市民病院の再建の話はこちらにまとめてあります。「奇跡体験!アンビリバボー」再現VTRより
https://www.fujitv.co.jp/unb/contents/220825_3.html


「世界平和」を志す
高校では立派なヤンキー生活。
時間つぶしに見た映画「パッチ・アダムス」を見て、医者になりたいと思う。
18歳のときに「世界平和」という目標を立てる。

ただ、「医者」という手段が、「世界平和」という目標とつながっていなかった。

沖縄で研修医をしていたときに、東日本大震災が発生。仲間5人で支援に向かう。避難所には全国からDMATが駆け付け、災害医療が提供されている。一方で、避難したくてもさまざまな事情で避難ができない人々に、十分な医療が提供できていない現実を知り、これらの人々を見捨てるわけにはいかないと感じる。世の中には、99%の人々を幸せにする仕組みはあるが、残り1%の人々を幸せにする仕組みがない。「少数者への支援」「Minority Care」 を行うことが、世の中、全体の幸せにつながっていくのではないか。
 これから日本・世界で起こりうる人口大減少。既に人口が減り始めている地域・資源が限られるへき地で、医療をしっかりと提供していくことが、将来の日本そして世界平和につながっていくという考えに辿り着く。へき地の専門の医師として、働いていくことを決意する。

「つぶれかけた、市民病院の再建」
赴任して1年以内に、病棟閉鎖、看護師大量退職、医師全員退職。
しかし、意地と目標をもって逃げずに、病院再建に取り組んだ。

地方の公立・公的病院の特徴
→行政と病院の方向性の違い(医療従事者と事務方)
→医療従事者のモチベーション低下
→医療の質の低下 →やる気のある職員の離職
→患者数減少 →評判悪化
悪循環に陥っていた。

「総合診療」「地域ケア」「教育」に、とことんこだわり、立て直しを行ってきた。

「総合診療」 「絶対に断らない」「患者中心の医療」を徹底する
専門外だからといって、救急を断らないように。百歩譲っても、一度患者さんを診て紹介状を書いて、搬送先の病院に電話して、責任をもって次の病院につなげるように。地域の患者さんの命に責任をもつように、職員に口酸っぱく言い続けてきた。結果的に、患者さん・家族・地域から信頼を得るようになり、経営が安定してきた。

「患者中心の医療」と謳いながらも、医療者は、日常的に無意識のうちに理由をつけて「患者以外の自分たちの都合のための医療、家族のための医療」を提供してしまっている。優秀なスタッフほど、それに違和感を感じやりがいをなくし、離職につながっている現状がある。
「ほんとは、口からご飯を食べたい」
「ほんとは、家に帰りたい」 
患者さん本人のほんとの思いを聞き出せているか。家族やまわりに遠慮して、本音を言えていないのではないか。ほんとの思いを引き出し、それに寄り添い、サポートすることが、本当の「患者中心の医療」である。

現実にはこれらを実践するのは、なかなか難しい。大原則だけど、なかなかできていない病院が多い。しかしながら、うちの病院ではこれを旗印として掲げ、職員みんなで突き詰めようと言い続けている。

「地域ケア」
地域勉強会を開くことも大事ではあるが、もっと大事なことは、病院の外にでて、公民館や自宅など、住民が暮らしている場所に行って、住民の声を聞き対話すること。今年は年間50回を目標にしている。
地域のまちの祭りに参加して、一緒にお酒を飲んで、語り合うこと。住民が、俺らと同じ同士なんだと思ってもらい、一緒に肩を組んで、まちの未来を語ることが大切。住民を巻き込んで、一緒にまちづくり・病院づくりをやろうと言い続けること。

「教育」
研修医、医学部生、看護学生、リハビリ学生、医療事務学生、中高生 全国から、年間300名の研修受け入れを行っている。
そして、すべての学生・実習生に「担当患者を幸せにする」というミッションを課して、研修中に自ら考え取り組んでもらう。
学生はじっくり患者さんと向き合い、患者さんの思い・ニーズを聞き出し、幸せにしたいと一生懸命に取り組む。

「ほんとは、家でさいごを迎えたい」
「さいごに、むかし食べていた、妻の手作りのカレーを食べたい」

これらの願いを聞き出し、学生が医療スタッフを巻き込みがら一緒に叶えていく。病院の医療スタッフでは手の届かないところを、学生がカバーしている。学習者ではなく、医療従事者として受け入れ、職員・住民が地域の将来の医師・医療スタッフを育てる文化 をつくっている。

「Community Hospital」
全国の7000病院の7割を占める、200床未満の病院は、Community Hospital として、外来・入院・救急だけでなく、在宅や地域ケアを通じて、地域住民を幸せにすことが求められている。Community Hospital には、総合診療マインドをもった医師がいないと成り立たない。医師だけでなく、そのマインドをもったすべての職種を育てていく必要がある。このマインドは、大学病院や高度急性期病院では教えることができない。

人口減少社会に対する日本のへき地での取り組みは、時代の最先端である。へき地の病院は、日本の全ての地域、今後世界が直面する「課題を解決する、最先端を学ぶ学校」として、取り組んでいく必要がある。

「地方創生」
少子高齢化人口大減少時代においては、首都圏一極集中を是正し、少子高齢化人口減少を止めるため、地方創生が急務である。
東京では今後高齢者が1.5倍になり、現在の医療従事者で対応できなくなる。結果的に、人生の最後の時間を、縁もゆかりもない場所で過ごす可能性がある。私たちは、そんな日本にしたかったわけではない。

地方が力をつけ、住みやすい場所にして、東京から地方に人を戻す。それが、これからの日本を守ることにつながる。地方の若者が東京に憧れをもって出ていったあとで、地方に戻ってくる理由や魅力が地域・地元にあるかどうか。
地域・地元で幸せに暮らすためには、「医療」「教育」「産業」 の三要素が必要である。教育、産業はオンライン化が進み、田舎でも成り立つようなかたちができつつあるが、医療は大丈夫か? この視点をもって、医療をしている人はいるか? 目の前の患者さんを救うことはもちろん重要だが、もっと俯瞰して、地方創生には医療が必要であることを意識して動きだそう!

「世界が日本の地域包括ケアを学び始めている」
これまで日本のへき地では、ひと・もの・かね が限られるなかで、住民が幸せになるための方法を考え、田舎でも、成り立つ産業や、大事なものが生み出されている。

世界全体の人口は、2100年にはピークを迎え、それ以降、人口が減少していく。日本全体、そして世界が、人口が減少していく地域でも成り立っていく方法を学ぶ時期に差し掛かってきている。これから日本・世界の人類がやらないといけない、「平和・健康・幸せ」をつかさどる重要なフィールドは、「日本のへき地」にある! 今、世界が日本のへき地を注目している!

🍻かんぱ~い🍻

今回の Take Home Message  !!

① 病院再建の3つのポイント

 「総合診療」「地域ケア」「教育」 をとことんやる! 

② へき地の病院は、「時代の最先端の課題解決学校」として、私たちは誇りをもって、医療を提供しよう!

③ 世界平和のこたえは、へき地にあり!

〈参加者アンケートより〉

・熱いメッセージが若い方に届いたと思います。未来に繋がっていく希望のあるお話しでした。

・へき地医療を叶える事がいかに大切か?
人類が幸せに、世界平和のために何ができるか、考える気付きを手に入れる事が出来ました。

・争いや戦争、日本の人口減、自給率減 対策をいまやらなくてはならない、危機感を感じました。自分のビジョンを持って生きれるようになりたいと思いました。

・これからは地域医療と共に地域そのものの存続について考えていかなければいけないと感じました。

今回、県外からの参加者も多く約50名が参加。高校生、医学生も参加いただきました! 若いの世代の方々に、胸熱くなる想いが届いたのではないでしょうか!?

勉強会後は、江角先生を囲んで懇親会。さらに密度の濃い意見交換が、夜遅くまで続きました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
次回の開催もお楽しみに!!

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