ギターが弾けるってこんなに楽しいとは。

2021年の4月から凡そ半年間、NHK文化センター青山の「45歳からの理屈で学ぶギター教室」を月1回オンラインで受講していた。仕事でリアルタイム聴講出来ない時も何回かあり、そのようなときは夜中にアーカイブを視聴する、といった具合。知っている曲ばかりで、馴染みやすいものだったと思う。

ギターは中高生の頃に手にしたことがあったが、結局上手く弾けずにいつの間にか弾かないままになっていた。実家にあったのは白いプラスチック弦のガットギターとヤマハのスチール弦のフォークギターだったと思う。当時は手が痛くなったり、子供の頃から習っていたピアノのほうが巧く簡単に弾けるからというのも、今考えると大きな理由だったのだろう。そのまま、ギターとは無縁のままで35年以上の時間が過ぎた。

ギター教室をオンラインで受講するのには、本来は手元にギターがあってしかるべきだ。だが、私はすぐにギターを買う気にはなれなかった。マンションで騒音問題は大丈夫だろうかとか、そもそも弾けるかなあとか、お金出してもまたぶん投げるじゃないかとか、ギターを買って部屋に置いておくことで家人が不機嫌になるのではないかとか。月イチでジェルネイルしてる爪も切らなきゃいけないしなあとか。

ともあれ、実家にいたときから30年ほどずっと持っているヤマハのキーボード、ポータサウンドを御供にしてオンライン受講しながら、ギターを買うタイミングを細々とうかがっていた。

このオンライン講座には、卒業審査というイベントがあった。自分で弾いている音源を講師の先生に送付、あるいは最終回の時間でオンラインで披露するという形で。課題曲は「Let It Be」and/or「なごり雪」。どちらもよく知っている曲である。

審査には参加しないつもりだった。ギターの練習をしていたわけでもないし、やはりこれは毎回きちんと練習している人のためのものだろうと思ったから。

ところが9月のある日、カイロプラクティックの帰りに駅前のモールの楽器店で出会ったギターをそのままお持ち帰りしてしまった。

お持ち帰りしてすぐ、とりあえずピックで弾いてみた。おおー、ギターの音だ!高校生のときになんとなく弾いていたギターよりいい音がするじゃないか!

そして講座の資料のPDFを開いて、コードを押さえて弾いてみた。弾けるじゃないか。おお。自分でやっていて意外にも感動した。もちろんゼロからのスタートじゃなくて中高生の頃に馴染んでいたから弾けるのかもしれないが。

とりあえず講座の資料に沿って練習を進め、提示されている各曲を弾いてみる。押さえるところがキチンと把握できて、どの音が出るかがわかれば案外弾けるということがわかった。資料に記載されている曲はどれも簡単なコード。昔の曲はそういったところが優しい。

ギターに接することができる時間は、家人が居ない時間帯のみ。リモートワークの仕事前15分と運が良ければ昼休み15分くらいだ。たまに仕事の間に気分転換で5,6分ジャカジャカ弾いたりすることもあった。そんな調子で審査の〆切日が迫り、ジェルネイルを短く付け替えて、「一週間前にギターを買いました、記念受験です」とiPhoneのビデオを回してDropBoxで指定のアドレスに動画を送ったのは審査〆切の2日前。そこから先、締切日までは家人が在宅しているのでギターはほとんど弾けないので見切り発車的なものだった。

審査の動画を送付する前後から、知っている曲をいろいろ弾き出した。原田真二「キャンディ」、財津和夫「サボテンの花」、サザンオールスターズ「涙のキッス」、山下達郎「Bigwave」…なんとなくゆっくりとだが、弾けると楽しい曲ばかり。

ギターが弾けるとこんなに楽しいとは知らなかった。この楽しみを55歳で知ったのは遅すぎたのかもしれないが、ちょうど良い頃合いかもしれない。さあ、知ってる曲をこれからも毎日ジャカジャカしてみよう。

ギターがある程度弾けるようになったら、次は一度習おうとして挫折したサックスができるといいな、そんなことを考えている。


#理屈ギター45  

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