難しいこと。

日経サイエンス、2019年9月号、58~68頁、「デング熱ワクチンの昏迷」。
抗体依存性感染増強、ADEが提唱されているが、その明確な機序が解明されてない。
しかし、デング熱未感染の児がワクチンを接種した場合、その後のデング熱罹患によって重篤化し死亡する例が確認されているという。ワクチンによってできる抗体が、再感染時にデング熱ウイルスの増加を防げないらしい。
この主張は2016年にアントニオ・ダンスらが主張し始めたが、「ちっぽけな医学部のただの教員」でしかない「私たちを信じるか、WHOを信じるか」という、無視されるのは至極当然の始まりだった。
その後、原文の舞台となっているフィリピンでは、感染予防のための接種を、再発防止のための接種に方向転換した。
「重症化しやすいタイプのデング熱ウイルスが原因」「重症化に関与するのが抗体ではなく、T細胞だから」など、主張が入り乱れている(65頁中列)。
現在開発中のデング熱ワクチンが複数あると言うが、どのワクチンにもADEの危険性が拭えないらしい。
印象的だったのは「そのようなワクチンを使うか、それとも完全なワクチンが登場するまでさらに50年間待つか?」という問いかけだった。

目の前で危機にさらされているヒトがいれば、医療者ではなくても、その時点で正しいと言われている医学常識に従わざるを得ないのは、当然のことだ。

しかし、「医学の常識」は、真実とイコールではない場合もある。

そこが、常に医療者を迷わせ続ける。

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