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鳴かないとわからないホトトギスの仲間たち

 信長・秀吉・家康の3英傑の性格を表すホトトギスを詠んだ句があります。

信長…鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス
秀吉…鳴かぬなら 鳴かせてみよう ホトトギス
家康…鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス

 ホトトギスが、あまり鳴かないことから後世の人が3英傑の性格を表すために詠んだと言われています。私は、違う理由もあるのではないかと思っています。それについて書いてみたいと思います。
 実際のホトトギスは、秋の渡りの時期には殆ど鳴きませんが、春・夏には特徴的な鳴き声を響かせてくれます。

 ホトトギスは、カッコウ科の野鳥です。日本で見ることができるカッコウ科には、ホトトギス以外にカッコウ、ツツドリがいます。カッコウ科は、杜鵑類と呼ばれ、杜鵑とはホトトギスなので、カッコウ科の代表は、ホトトギスだと考えます。

 ホトトギス、カッコウ、ツツドリは、5月頃に夏鳥として、日本に帰ってきて、秋に旅立ちます。
 ホトトギスが体長約28cm、カッコウが約35cm、ツツドリが約33cmで、ホトトギスが少し小さいのですが、単独でいると外見では見分けるのは困難です。
 3種とも頭・背は灰色。翼と尾頭・背より濃い色。胸・腹は白色で黒い横縞があり、似たような姿です。ホトトギスやツツドリが青みがあったり、カッコウが全体的に灰色であったりするのですが、太陽光の関係で色がわからなかったり、木の上でお腹を見せた姿でとまるので、瞬時に見分けることは不可能です。

木に止まったツツドリ(2016/10/2)

 見分ける方法は、鳴き声です。3種とも特徴的な鳴き声をします。
 ホトトギスは、「キョッキョッ キョキョキョキョ」と鳴きながら飛んできて、木にとまって、「テッペンカケタカ テッペンカケタカ」と響きわたる鳴き声を聞かせてくれます。カッコウは、名前が示す通り「カッコウ カッコウ」と鳴き、ツツドリは、「ポポ ポポ ポポ」と鳴きます。筒を叩いたような鳴き声なので、ツツドリと呼ばれるようになったようです。
 鳴き声は、異なるので鳴いてくれれば、わかります。

 カッコウ、ツツドリが、鳴き声から名前をつけられたように、ホトトギスも鳴き声から命名されています。「キョッキョッ キョキョキョキョ」の鳴き声を、昔の人は、「ホットホトギ」と聞いて、最後に鳥を表す「ス」をつけて、ホトトギスと名付けたられたようです。
 ホトトギスは、日本の古い文献に登場し、様々な漢字で表現されています。万葉集には、「霍公鳥」と表記され、百首以上、詠まれいます。また、平安時代には、ホトトギスのことを「郭公鳥」とも表現されていたようです。
 ホトトギスは、杜鵑、杜宇、蜀魂、不如帰、時鳥、子規、田鵑など数多くの表記があります。
 杜宇、蜀魂、不如帰の由来は、古代中国の蜀の皇帝・杜宇が、家来の妻と不貞を働き退位させられ、復位を望んだものの願い叶わず死んでしまって、ホトトギスに姿を変え、不如帰(かえりたい)と鳴いたという故事から付けられたようです。
 一方、「時鳥」は実用的な命名です。毎年、初夏に現れ、鳴き始める時期が、ちょうど田植えを始める時期と一致するので、時をつげる鳥(時鳥)と名付けられたということです。

 このようにホトトギスは、古くから人間と関わりが深く、郭公鳥と表現されているところから想像すると昔の人は、ホトトギス・カッコウ・ツツドリの違いがわかっていなくて、すべてホトトギスと思っていたのではないかと。カッコウと鳴く、ホトトギスがいるという感じだったのではないかと思います。

 私が勝手に想像する三英傑の話は、こんな感じだったのではと。
 ホトトギスは、昔から人に馴染みがある野鳥なので、お殿様の機嫌をとるために献上されてきた。ホトトギスを捕まえてこいと命じられた村人は、捕まえてお殿様に献上したが、突然、献上されたホトトギスが、似ても似つかない鳴き声で鳴き出し、殿様は怒って、献上した者を罰した。もしかしたら、本当に織田信長に殺されてしまったのかも。
 よってホトトギスの献上を命じられた者は、本当にホトトギスなのかを確認するために、頼むから鳴いてくれという思いで、鳴くの待った。その話に尾ひれが付いて、三英傑の話になったのではないかと。勝手に想像しています。

 カッコウ科の外見は似ていると話をしましたが、別の共通点として、「托卵」があります。漢字の通り、卵を託す。既に卵を産んで、これから抱卵を行う別の種類の野鳥の巣から卵を一つ落とし、代わりに自分の卵を一つ産んで、抱卵・子育てしてもらうということです。
 雛鳥も、托卵された種の野鳥より、少し早く孵化するようで、孵化すると周りの孵化直前の卵を巣から落とし、自分だけが食べ物を貰えるようにします。
 もし、人間だったら「殺人」「育児放棄」などの犯罪者です。托卵される野鳥からしたらとんでもない話です。
 ちなみに、ホトトギスはウグイス、カッコウはオオヨシキリ、ツツドリはセンダイムシクイなどに托卵します。

 カッコウ科の托卵という行動がわかると、うなずけることがあります。
 3月末ぐらいになると日本で繁殖する夏鳥が続々とやってきます。ツツドリに托卵されるセンダイムシクイも4月の始めには、囀り始めます。オオルリ、キビタキなどの主要な夏鳥が現れた後、最後に現れるのが、ホトトギスたちです。
 これは、早く来ても托卵相手が卵を産み終わるまで待たないといけないし、もしかしたら、営巣前に姿を見せてしまったら逃げてしまうから、ちょうど卵を産み終わる直前に現れるということで、遅れて現れるのではないかと思います。
 また、抱卵・育雛中は、自分たちの場所を悟られないようにしなければならないので、あまり鳴き声を発しません。ところが、ホトトギスたちは、他の野鳥が抱卵・育雛中の期間でも、大きな声で鳴いています。これも子育てしないからだと思います。

 考えてみると、ホトトギスたちは、春から夏に繁殖地に現れて、子育ては他の鳥に任せて、食事をとり、盛んに鳴いて、秋には旅立つという貴族のような生活をしています。もしかすると、越冬地の生活が過酷なのて、繁殖地では楽にしたいということで、托卵を生み出したのかもしれないと勝手に想像しています。

 ホトトギスたちは、私にとっては身近な野鳥です。最近、カッコウの鳴き声を聞く機会は少なくなってきていますが、朝、窓を開けるとカッコウの鳴き声が聞こえてきて、お目覚めです。昼間は、ツツドリの声が、夕方にはホトトギスの鳴き声という感じです。
 ホトトギスたちは姿を観察するというよりかは、鳴き声を聞く野鳥です。姿はなかなか見られません。高い木の上にいたり、鳴き声が響きわたるので、近くにいるかなと思っても、谷を挟んだ遠くの山の木にとまって鳴いていたりします。
 実際に姿を確認できるのは、秋の渡りの時期に、都市公園に現れるときです。この時期は、鳴かないので、判別は難しいのですが、なんとなく判断しています。

ホトトギス(2013/9/22)
ツツドリ(2022/10/8)
カッコウ(2023/10/21)

 こんな感じで、ホトトギスたちを観察しています。

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