成田空港周辺の国際物流拠点の整備に向け、大きな前進

成田空港周辺を国際物流拠点とするべく、農地等の土地利用規制の緩和などについて国家戦略特区の提案を政府に行っていることを紹介してきましたが、先日、国家戦略特区ワーキンググループのヒアリングが行われ、大きな前進を勝ち取ることができました。

農水省が成田空港周辺において地域未来法の弾力的活用に関する取扱い通知を発出し、成田空港の機能と一体的利用が必要な物流施設等を整備する場合については例外的に農地を含む土地を事業用地として選定することが可能となりました。
さらに事業の実施にあたり、これらの農地を転用する際の手続きは大規模なものでも、特例として国への協議が一切不要となり、県・市町のみで手続きが完了することとなります。
農水省が地域未来法の土地利用調整に関し、特定の区域における取り扱いについて明示的に通知を発出することは全国で初めてです。

成田空港は第3滑走路の整備など機能強化が進められています。現在の空港敷地が約2倍となる、まさに「第二の開港」とも言える大きな動きです。
これは首都圏はもとより、我が国の国際競争力強化等の観点から成田空港の年間発着枠を現在の30万回から50万回にするためであり、2028年度末の供用を目指しています。
これにより、将来、旅客数が約4,000万人から約7,500万人、貨物量が約200万トンから約300万トンに大幅に増加する見込みです。

この機能強化に合わせた民間物流施設等の一体的な整備が必要なのですが、空港周辺は原則転用不許可である農用地区域が広がっており、民間物流施設は空港から離れた地域に点在している状況です。
私も首長を長く務める中で、産業拠点整備などで農地転用に関わってきましたが、農林水産省との協議などにおいて厳格な審査と手続きが求められ、民間事業者は立地条件が良かったとしても、予見可能性が乏しいとして、なかなか開発計画が生まれない現実があります。

これは我が国にとって重要な農地を維持するためにやむを得ない側面があるわけですが、仁川空港を始め、各国を代表する空港の周辺にはフリートレード区域などが設けられ、空港と連動した国際物流拠点が国家戦略として整備されているケースが少なくありません。
日本最大の貿易港であり、日本の航空貨物の6割以上を占めている成田空港周辺に戦略的な物流拠点を整備することは成田空港や千葉県のみならず、日本の国際競争力強化にとって極めて重要と考えています。

そこで、千葉県は農地の土地利用規制の緩和を含めた国家戦略特区の提案を行い、私の就任後に何度か国家戦略特区のワーキンググループによるヒアリングが行われ、私自身も出席し、いかにこの規制緩和が我が国にとって重要かを訴えてきました。
また、国家戦略特区の提案には民間事業者による具体の計画が必要であることから、様々なルートを通して民間事業者と具体的な計画作りに取り組んできました。

私たちが目指してきたのは、成田空港周辺については農用地区域を含む土地であっても開発が可能であることを農水省が文書等によって明確に示し、事業者の予見可能性を高めることです。
農地利用の規制緩和は岩盤規制の中の岩盤規制と呼ばれるものであり、国家戦略特区であったとしてもハードルが高いと認識していましたが、職員が粘り強く内閣府・農水省と調整し、成果を出すことができました。職員の奮闘、そして内閣府・農水省、様々な関係者に感謝します。

今後は地域未来法に基づき、今年度中に県で成田空港周辺9市町を促進区域とする基本計画の作成と、農水省による弾力的活用に関する取扱通知の発出があり、令和5年度に重点促進区域を設定します。
通常の地域未来法では重点促進区域の設定には区域内において具体的な地域経済牽引事業の実施が予定されている必要がある、つまり事業者による具体的な計画があって初めて設定できるわけですが、今回の特例により、千葉県が土地利用の調整の方針を記載すればOKとなり、事業者による具体的な事業計画がない段階でも設定することが可能となります。
また、農振除外の1号要件(除外に係る土地を農用地等以外の用途に利用することが必要かつ適当であって、 農用地区域以外に代替する土地がないこと)相当の内容を適用除外する等の柔軟対応が可能となります。
ちょっと専門的で分からない方も多いかと思いますが、非常に大きな緩和となります。

国家戦略特区ではない形の決着となりましたが、求めてきた結論は同じであり、何の問題もありません。
むしろ、総理も出席する諮問会議を逐一経る必要がある国家戦略特区よりも、県で完結できる今回の事例の方が運用上は小回りが利き、より実のあるものとなっています。

国家戦略特区は地域特性というよりは、最終的に全国一律で規制緩和するためのもので、今回のような規制緩和を全国的に認めるのは現実的に難しいでしょうから、あくまで成田空港周辺の特殊性に鑑み、全国で初めての特別なエリアとして取り扱うこととなりました。

今回の結論によって、成田空港周辺の国際物流拠点整備が加速することとなります。
また、成田空港周辺は国際物流拠点に留まらず、様々な産業面での可能性を秘めています。今後も様々な民間事業者と成田空港周辺でなければ実現できないビジョンを創り上げ、将来的にはさらなる規制緩和や活用を進めていきたいと考えています。

詳細は内閣府の国家戦略特区サイトで確認できますのでご覧下さい。
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc_wg/r4/hearing.html

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