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よれよれの1日の終わりに、ドリアンかジャックフルーツかで迷ったあと。

10月のある日、私は袋小路にいた。

 店舗は開けていても閑古鳥で相方(あいかた)とギスギスしたし、新規事業のブレーンさんから数日間メール返信無し。うまくいかない事ばかりで気分がふさぎんでいた。
 そこへ、「中華物産店でマレーシアフェア開催中」情報を友人から聞き、19時半の仕事上がりに独りで行ってみることにした。このうまくいかない連鎖の要因のひとつにはマレーシア不足、そうに違いないのだ。

 その中国物産店の場所は地下鉄駅と駅の間、どちらの地下鉄駅からも10分は歩くのだから、ひと駅だけ乗るのももったいない、それならいっそ歩いて行こうと、20分間歩く覚悟で出発したところ、ぱらぱら雨が降ってきた。あいにく傘を持ち合わせてない私、傘を買おうにも、谷町筋は寺町のお寺ばかりの寂しい道でコンビニが見当たらない。いよいよ小雨が止みそうにない、と濡れそぼりつつ到着した。坂道だから目算より多く30分歩いた距離だった。

 店内は移転後新装開店した様子で、客は私1人のみ。中華スーパーにしては清潔で陳列も見やすく、問題ない。お目当てのマレーシアフェアの白珈琲は無名ブランドの上、6袋入600円、と少々お高い。2-3袋大人買いしようと思っていたのだが、1ブランドだけだったので低糖味1種のみにしておく。インスタント袋麺、調味料、スナック菓子、どれも既知ブランドではないのだが、せっかく来たんだからと、カゴに詰める。

 そして、冷凍コーナーで「猫山王」、マレーシアで最もおいしい品種と評されるドリアン発見!二房で1500円。一個まるごとなら日本流通価格は八千円〜一万円位の価値だ。二房しかも冷凍。うぅむ、迷う、買うべきか。相方も、私も2年間食べてないのだ、食べたいなぁ。
うぅむ…立ち止まって悩んでいると、そのすぐ隣にジャックフルーツ980円がセールで680円。よし、こっちだ。ジャックに決めた!
 たった独りの客に店員は二人。暇そうなレジ店員が“これいくらだっけ?安物買いめ!” と別の店員にたずね、全くやる気がなさそうな店員。君たちの会話は全部解ってるよ、と言ってやりたいところだが、絡むのも疲れるしやめておく。代金を払いマイバッグに詰め終わって、帰りにドアを開ける時も“有難うございました 谢谢 再来”もない。大陸人のための大陸人による大陸人の店。まったく無愛想だった。

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 当たり前だが、来る時よりも荷物が増えた。右と左に布バッグ1個づつ下げ、小雨は止んだものの濡れた靴のせいで、さらに足が重い。初めての駅へ向かい、路線乗換の階段で登り降りで、いよいよ足どり重く、よれよれになりながら自宅の最寄り駅につく。

白杖の男性に出会った。見たというべきか。
杖で黄色い突起を探し、階段を登ろうとしていた彼に、声をかけた。

「この先5メートル行ったらエレベーターありますよ。私も乗りますから。」

「どうもありがとう。」

 誘導とまでいかないが、歩調を合わせてエレベーターに乗り、改札階に上がった。「ドアの『開』ボタンを押しときますね」と伝えると、エレベーターを降りしなに彼は軽く会釈した。

 ほんのひととき、ひとを手助けできたことで気分が晴れた。この出逢いのために今日1日があったのか、と報われた気持ちに。

誰にでもある、うなだれるしかない日。
しかし、リセットやリフレッシュの機会はどこにでも転がっている。

神様、感謝します、今日一日をありがとう、と心でつぶやいた。

・マレーシア果物に興味がある人はこちらに詳しい。ジャックフルーツは世界一大きな果物なのだ。


 帰宅後。もちろん、ジャックフルーツは甘くジューシィで美味しく、相方との仲を取り持ってくれたのは言うまでもない。そして、例の大陸人定員だって、まさかの日本人買物客にびびってのシオ対応だったかもしれないな。

#ジャックフルーツ #波羅蜜 #人にやさしく
#うまくいかない日に  #終わりよければすべてよし

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