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取り留めのない国産ギターとメタルの話

ちょりっす、猪熊です。
画像は我が家のP-Projectくん、フェルナンデスの現行品よりこっちの中古相場の方が低いの、解せないわね。

コンビニでココ3年くらい毎日同じ物を同じ組み合わせで買い続けることで、結果としてじわじわ上がる価格と内容物の減り具合で物価高を非常に感じてしまっています。
そろそろ苦しいよね。

というわけで、今回は取り止めもなく80年代〜90年代の国産ギターとメタルアーティストの話をしてみたいと思います。

1.FERNANDESとスラッシュメタル

どういう組み合わせやねん!ってツッコミも入りそうですが、実は米国のThrash Metalアーティストの機材で時折みられるのがFernandesです。
ココ10年でギターを始めたヤングたちには安物のイメージや、アクセサリーアイテムのブランドだと認知されていそうですが、元を辿れば斎藤楽器の名で1969年創業、1972年にフェルナンデスへ社名変更、80年代のメタルブーム、バンドブーム、90年代のヴィジュアル系ブームまで、国内では幅を利かせたブランドです。
優秀なアイデアマンや実力者も多く、ZO-3の発案者で様々なアーティストに関わった故松崎氏のZodiac Worksを始め、現在はSaijoとして再独立する形で自身のブランドを構える西条氏のP-Projectブランド、他にも変名ブランドのNeurotec Guitar等プロユース向け、他にもBladeなど関係者が独立して運営していたブランドも多数ありました。

代理店としても著名で、DOD/DigitechやHIWATT、EMG、Floyde Rose…全盛期はDR弦なども取り扱っており、様々なブランドを国内に紹介しました。


そんなFernandesですが、Fernandes USAとして数年前まではUSAの独自ラインナップ品が存在しており国外でも流通していたようです。
また、それらをデビュー時から愛用するアーティストも少なくありませんでした。
例えばST-160は ANTHRAX/S.O.DのScott Ianが最初期のAnthraxの頃に使用しています。
1980年ごろのFernandesのカタログに見られる豹柄にゴールドパーツ、更に初期のフロイドローズ(以下FRT)が取り付けられた2Hのストラトシェイプという時代を象徴すると言って良いのか、ドギツイ逸品です。
最近で言えば世を偲ぶ仮の姿で聖職を全うされ、定年手前で早期退職されたダミアン浜田殿下が活動を再開した際、オーバーホールした本機を携えてメデイアに露出されてらっしゃいます。

Scott Ian氏は本機を1stアルバムのFist of Metal前後で使用、最初期のバンドの写真でも確認できるものがあります。

一度盗難による紛失をしたものの近年自分の所持していた個体を発見し、現在は使える状態にキープしているようで、下記の動画にて現行のクロームカラーでファインチューナーが遠いタイプのFRTを搭載し、ステッカーカスタムされた様子が確認できます。

Rig Down Scott ian

余談ですが、氏は当初Jacksonと契約したかったそうですが「リードギターじゃないからダメだ!」と断られ、ESPと契約…後にJacksonと契約された際も日本で企画されたCharvelブランドのSurfcasterを使用していました。
その共和商会内のJackson企画部署が後にCaparisonになるのはまた別の機会に。


他にも2003年にメタリカが待望のメタルらしいアルバムとしてリリースしかなりの賛否両論を生んだMetallicaのSt.AngerのMVにて登場加入したてのRobert trujilloもFernandesを携えています。

ラージサイズボディで5弦タイプのFRB(通称:Gravity)でPickUpレイアウトはJ/J、最も使用されているのはシルバーのモデル、続いてモスグリーンに白い星の描かれたもの、そしてシルバーに青のファイヤーパターンです。
青のグリッターカラーのベースも存在するようです。

それまでのキャリアで最も著名なSuicidal Tendenciesではトバイアス製のベースを使用し90年代末以降はFernandesへシフトしています。

以前筆者が今は亡き大阪フェルナンデスの社長とお話しさせていただいた際「彼は契約ではない、広告やカタログなどには載っているが、あれは向こうのスタッフか何かの知人だからみたいだよ」とおっしゃっていました。

少ない情報を頼りに調べると、その背景には元々トバイアスに勤めていたScott Uchida(スコット内田)なる人物が関わっていたようで、その後にアーティストリレーションリーダーとしてFernandesに所属していた様です。
Uchida氏はベーステクニシャンとしてRobと接しており、現在もSNSを見る限りでは様々なメタルバンドと親しくしているのが確認できます。
RobはUchida氏のカスタムメイドのプリアンプとEMGを搭載したトバイアスと、モディファイされた機材を含むエフェクトシステムを愛用していた事などが証言されており、その延長線でトバイアスの後に関わっていたFernandesを使用したというのが正解でしょう。

Bass Talk内該当スレッド

他にもUchida氏が関わっていたのか、Suicidal Tendenciesの再結成以降のライブではギター2人がFernandesを使用していました
しかし、2020年ごろを境にシェクターへ移行しています。
時を同じくしてFernandes USAは機能を停止しており、ディーラーであったGearstreetはサスティナーと在庫のステンレス製ピックのみを販売しています。

また、関係があるかはわかりませんが、90年代後半の僅かな間ですが、SepalturaのAndreas KisserもFernandesのAFR-150S(日本で言うところのFR-120みたいなやつ)を使用していました。

Aria Pro2とヘヴィメタルとメタリカ

Ariaと言えば現在はパッとしない一方で、PEなどのマツモク設計時代のアイテムが人気を博しており、ジャパンヴィンテージ市場でとんでもない存在感を放っています。
荒井貿易自体は独自のブランドを持つ一方で社名通り、代理店としても機能しており最近の主なトピックとしてはサヴァレスの弦がじわじわ人気を高めてきています。

元を辿ればAria Pro2の海外での成功はYMOの際に渡辺克己が起点と紹介されることもありますが、スルーネックを用いたSBシリーズが当時のアレンビックやB.C.Richを中心としたスルーネックとナチュラルフィニッシュ、多彩なコントロールができるアクティブサーキット等、豪華絢爛な装飾とフェンダーやギブソンに無い個性でスタジオ系ミュージシャンを中心に人気を獲得していた初期のハイエンドベースカルチャーに共鳴したのも一つのきっかけであったと考えられます。

一部世代ではXXシリーズと呼ばれるVシェイプをイングヴェイやマイケル・シェンカーが日本公演で携えていたり、アースシェイカーのブレイクで80年代を代表したメタルブームの一時代を象徴するアイテムとも言えるでしょう。
当時は外タレの来日興行を主導したウドー音楽事務所が中心となって来日アーティストの接待コースとして楽器工場を訪れたり、提供したり、ローカルミュージシャンとの交流をアテンドしたりと様々なアプローチを試みる中での工夫でした。

さて本題に入るとメタリカファンには有名な話ですが、メタリカの伝説的なベーシスト故クリフ・バートンは2ndアルバム「Ride the Lightning」で一定の成功を収めると、それまでの改造リッケンバッカーに加えてアレンビックのベースを使用し始めました。
しかし残念ながら僅かな期間で盗難の被害を受け、同時期よりブラックカラーのAriaのSB-1000を使用し始めました。
黒いスルーネックのボディ/ネックにゴールドパーツをマウントしたベースは未だにAriaの広告に使われ、不定期にリイシューモデルが販売されています。

SBは欧米市場を中心にハイエンドベースブームに乗った様でデュランデュランのジョン・テイラーをはじめ、ニール・マーレイ…ジャック・ブルースにマーカス・ミラーまで、瞬間風速の高さを感じさせますね。

一方で意外にもメタリカのギターチームもマツモク製ギターを使用しており、カーク・ハメットもクリフと同時期にAria製の黒のRSを使用していたことが確認されています。
画質の良い資料が少ないので特定は難しいですがブラックパーツにSSHレイアウトでロック式トレモロの様で、ジェイムズが白いエクスプローラーを使用しはじめた頃のツーショットのアーティスト写真がいくつか確認できます。

エレクトラ“OGV”

ジェイムズもまたマツモク製ギターを今なお使っています。
米セントルイスミュージックのエレクトラブランドで流通していた白いボルトオン構造のフライングVのレプリカがそれに当たります。
未だにレコーディングやライブで白いフライングVを使用している場面が見られますが、それがOGVと呼ばれるその個体です。

同様のモデルのブランド違いの品がAriaブランド等からも発売されていたようで、それらは現在コレクター達の間で高値で取引されているようです。

もっぱらジェイムズ本人はHit the LightsをMetallica名義でコンピレーションアルバムに提供する事になり、それにあたってちゃんとしたギターを用意しようと自分の好きなマイケル・シェンカーみたいだと手にしたギブソンのロッドカバーの付いた所謂ニセモノで、それに気付かず使っていたそうです。

そのほかの話

言い出せばキリがないのですが、70年代はGrecoと同じ内容のギターが国外ではIbanez名義で流通しており、Van halenやPaul Stanleyが使用していたり、最初期メタリカのロン・マクガウニーもワッシュバーン製のベースが日本ではフレッシャーから発売されていた様子からマツモク製であったと推測されるなど、実は日本製/日本ブランドの楽器はかなり浸透していたと考えられます。

いくらなんでもここ最近のヤフオクを中心とした中古市場のお値段は高すぎますけれど…

タイトルの通り取り留めのない話なので取り留めもなく終わります。


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