赤羽行きとホットドッグ。

祖父母が埼京線沿いに住んでいる。小学校の中学年の頃、夏休みには電車で遊びに行っていた。
初めて遊びに行った時のこと。小田急線の快速急行で新宿まで行くと、ホームまで祖母が迎えに来てくれていた。一緒に埼京線のホームに上がると、高確率で待ち構えていたのは「赤羽行き」。
目的地は赤羽のさらに先、荒川を越えた向こう。この電車に乗っても赤羽で乗り換え…というか、新宿で1本後の電車を待っても変わらない。要するに、ハズレ。
その事実を時刻表の脇にあった路線図で知り、あーあ、次待つのかな、と思ったら
「これに乗って、赤羽で何か食べようか」
と祖母。時刻はお昼前、お腹も空いた頃だ。ハズレをうまく活用することに。
初めての埼京線、赤羽なんて単語すら初めて聞いたし、ドキドキ。
当時の埼京線は1両にドアが片側に6ヶ所もあるヤツ。電車のなのか?と思うような、ベンチじみた硬いイス。背もたれを見ると「混雑時には折り畳めます」と書いてあった。
これが東京の電車なのか、と子どもながら感心した。
そんな電車で15分くらい揺られると、赤羽に到着。駅員さんも車掌さんもしつこく
「この電車は当駅止まりです、車庫に入ります」
と放送する。半ば追い出されるように降り、コンコースに行くと、埼京線ホームの階段の脇にカフェがあった。メニューの立て看板には「ホットドッグ」の字。
他にも美味しそうな飲食店はいくらかあった気がするが、ホットドッグの文字は小学生の私の心を鷲掴み。
「このホットドッグが食べたい」と言って、その店に入った。
多分、あれが人生初ホットドッグ。パンに茹でたウィンナー挟んだだけなのにこんなに美味いのかよ、アメリカンドックよりこっちのが美味しいじゃん!
子どもは初めての物に興味が惹かれやすいが、あれは典型的な例だったと思う。
翌年また遊びに行った時、またしても埼京線の赤羽行きに出くわしたので「あのホットドッグが食べたい!」と駄々をこねその店を訪れたが、数日違いで閉店していた。それ以降赤羽行きにも遭遇しなくなった。
この数年、ホットドッグはコストコのイートインのをよく食べていて、ホットドッグと言われるとそのイメージが染みついたが、今でもたまに思い出す。
赤羽行きとホットドッグの思い出。

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