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うちの子の話。

原付をお迎えした。
ヤマハの「タウンメイト T50」という、下手すると30年ものの中古。走る・止まる・曲がるの最低限の整備とオイル交換を含めて合計4万円少々。色々調べてみると、この年式でちゃんと走ってこの価格というのはなかなか出てこないようで、言わば掘り出し物に近いらしい。

もしかするとご存知の方がいらっしゃると思うが、この子は運転に少々慣れを必要とする。ギアチェンジが存在するのだ。
普通の原付、いわゆるスクーターはスロットル(自動車でいうアクセル)を回すだけで走ってくれる。この子も一応同じ理屈で走りはするのだが、ある程度の速度を出すには、加速の途中でスロットルを戻し、左足側にあるペダルを踏んでギアを変えなければならない。スクーターが自動車でいうオートマ車なら、私のタウンメイトはマニュアル車だ。今や自動車はオートマが主流、原付もスクーターがだいぶ増えてきたこのご時世になぜわざわざ癖のある子を選んだのかと言えば、
「ギアチェンジをして走りたい」
ただそれだけだ。一応自動車の免許はマニュアルで取ったが、普段運転する車はオートマ。ギアチェンジなんて大層なものはなく、せいぜい急な坂を下る時に手動でギアを一つ落としてエンジンブレーキを効かせるくらい。ならば自分の原付くらいはマニュアルでもいいじゃないか。

よく晴れたある日、原付を取りに行った。帰りは練習がてら自分で乗って帰る計画。前の日に取得したナンバー、自賠責保険の証明書、この時期には欠かせないマフラー、手袋をカバンに詰め込んでいる。流石にヘルメットは入らないので手提げ袋に入れた。
店から家まで約30キロ。近くのスタンドで給油し、いざ出発。
…走り始めて10分、エンジンがちょっと煙を吹いた。
流石に只事ではない。安全な場所に寄せてエンジンを切り、歩道に退避。すぐに煙は落ち着いた。
何がいけないのかと思い色々確かめてみた。
原因は単純、ペダルの踏みが甘くて変速できていなかったのだ。きちんと踏んだつもりだけど、実際には遊びの部分しか踏めていなかった。ずーっと1速で引っ張ってしまっていたのだから、煙を吹くのも当然か。いきなり悪いことをしてしまったと反省。
改めてギアチェンジの練習をして再出発。今度は思いっきりペダルを踏む。「ガチャン」という音がする。フワッとする感覚の後グンと加速する。今度はちゃんとギアチェンジができている。

それから20分ほど走り、海沿いの公園で休憩。

絵になるな、と思った。

結局途中で2回ほど渋滞にハマって、帰ってくるのに2時間くらいかかった。
一応変速にも慣れたのでいい練習になったが、その後何度か止まる時にニュートラルにするのを忘れてエンストするのはご愛嬌。

一応、最低限の整備点検はお店でやってくれたのだが、細かい整備などは自分でやっていかなければならない。それも含めて末長く付き合っていく。何しろ自分にとって今のところ最大の買い物になったのだから。

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