役者。

私は演劇の界隈に片足のつま先をつっこんでいる。中途半端だが。つっこんだからどうということはない。知り合いが増えたし、友達も出来たし、やりたい事を見つけられたので演劇をしていてよかったとは思う。

役者をしていた。自分では出来てるつもりでも後から録画を見てみるともう目も当てられないレベルだが。ただ、やっていて「楽しい」と感じていた。無論お客様ありきなので自分が楽しいだけではいけないのだが。

きっかけは高校の部活だ。小説を読んでミーハーのような形で入学と同時に演劇部に入った。中学から私と同じ進路を取った人間は誰もいなかった。大袈裟に言えば一人狼のようなもの。おまけに元来の人見知りが災いして周りとうまく関係を築けなかった。おまけに高校演劇の人口比は圧倒的に女子が多い。男子が居ないわけではない。ただ少数派である。下手をすると女子校に配達に来た宅配便のおっちゃんのような感じ。

男性の先輩はいたが恐れ多くてとても話しかけられない。同期にも男子はいない。さてどうしようと思っていたときに、ある同期の女子が積極的に話しかけてくれた。

自分で言うのもなんだが、私は変人である。その自覚があったので「こんな奴に絡んでくるなんて物好きだな」と思っていた。向こうは向こうで「コイツ放っておくと余計おかしくなるぞ」と思っていたらしい。ただ実際のところ、彼女のおかげで同期、先輩、後輩と打ち解けることができた。その点では彼女にとても感謝している。

彼女とは卒業からしばらく経った今でもとても仲はいい。親友、戦友、仲間…言葉では言い表せない。別に恋愛関係にあるわけじゃないが。

彼女は演劇の専門学校に進んだ。真剣に女優を目指している。

彼女の学校で公演があった。たまたま予定が空いていたので観に行った。

私の中での彼女のイメージは高校のままで固まっていた。

当時のイメージは「実力はあるけど、自分の演技に酔いやすく暴走しがち」であった。ぺんぺん草レベルの奴がどうこう言えたものではないが。

結論から言えば「良かった。」

二児の母の役だったが、とてもよくハマっていた。自分の事に精一杯で娘のことまで気を配れていない。それに対して反省する様がとてもよかった。人は変わるもんだと思い、ちょっと感慨深くなった。彼女が全く暴れなかったわけではなく、多分少しは暴走したと思う。それでも、以前のような変なクセはだいぶ消えていた。本人なりにかなり研究したのだと思う。相当悩んでいたから。

お疲れ様。よかったよ。

二回公演のうちの片方しか見られなかったのは残念だ。そこは申し訳ない。

演技をしている彼女を観て、再び役者をやりたくなった。

今のところ私は演劇に絡んで目立った活動はしていない。物書きみたいなことをしているだけ。一度お誘いを受けて、お芝居に出させていただいたことがある。そのときにトラブルが色々あり、それ以降はやりたくないと思っていた。

ただ、書く側のみに徹していては頭が凝り固まってしまうと思う。かといって十分な演技力は決して無いし、何より待っているだけではなにも起こらない。自分からアクションを起こさなくてはいけない。演劇とはそういう世界だと思う。

今ある環境を大いに活かすか、あるいは未知の環境に挑むか。物書きもしたい。どちらを取るべきなのだろうか。

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